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お買い物

 いつもの城砦都市の昼下がり、いつもの俺のPTメン女達、

そして、いつもじゃないフェイの歌が聞けた。


 冒険者ギルドでのテンプレなトラブルを片付けた俺達は、

サクラの冒険者登録を済ませて、次は買い物と大通りへ出たのだった。


 冒険者ギルドに面した大通りから少し歩き、ちょいと脇にそれて入って行くと商店街のような小路が有る。

 冒険者関連の店ばかりが立ち並ぶ道通りだ。

 集中しているので便利は便利なのだが、普通じゃない一種独特の雰囲気が有る。


 その通りの馴染みの雑貨屋に大勢で押しかけている俺達だ。

 雑貨屋の店員さん、少女ゴブリン相手にアーク・スケルトンのアリスさんが、

怒涛の値引き合戦を繰り広げている。

 相手、涙目だぞ・・・

 金が絡むと性格が変わって、容赦なしなのがアリスさんなのだった。

 普段はPTリーダーらしく冷静で面倒見のいい人?なんだがー

 他人のフリしたいほどの、怒涛の一方的な値引き交渉が繰り広げられている。

「ア、アリスさん。それくらいでぇー・・・」

 俺ごときの一声は、ひと睨みで沈黙させられてしまった。

 しまったのだった、とてとて怖かった。

 少女ゴブリンの店員さんが生気の無い眼で、買い物を済ませた俺達を送り出した。


 アリスさんが、ほくほくしながら次の店、防具屋と言って歩いている。

 あんた、鬼ぢゃ。スケルトンだけれど。


 防具屋でもアリスさんの同じ攻防が繰り広げられる。

 しかし、この店ではトロールの兄ちゃんが巨体をドンと一歩も引かずに、がむばっている。

 店の奥から引っ張り出した、薄っすらホコリを被ったソフト・レザー製の一式を前にー

「売れそうに無いんでしょ」

「これがダメなら、注文制作でごわす」

「在庫がさばけた方が、いいんじゃないの」

「お客さんの言い値は、酷すぎるでごわす」

 どちらも一歩も引かない。

「そんな高いモンじゃないから~」

 俺が思わず言ったらー

「「だーあってなさいっ! でごわす!」」

 アリスさん&トロール兄ちゃんにハモって怒鳴られた。

 はい、はい、はい。

 買い物の駆け引き合戦を邪魔する者は、ドラゴンに踏み潰されてしまえでつね・・・

 外野の女達は、その攻防を見事に無視して、

きゃいきゃいと展示品のウィンド・ショッピング?を楽しんでいる。

 俺、絶対、買い物に向かない・・・


 ソフト・レザーの一式&靴込み。

 サクラくらいの体躯の種族も居るらしい。

 めったに冒険者にはならないがまったく居ない訳でもなく、

職人が趣味で作った中々の一品との事だ。

 しなやかな質感、部位によって硬さを選んだ革、さらには要所へ二重強化の箇所。

 焦げ茶色の革製、軽さと動きやすさに防御力を実現させて作られている。

 サイズこそ小さいが、手の込んだ作りで買い得なのは間違いない。

 特徴的なのが、指先なしのグローブな事か。

 で、結果。

 アリスさんも、トロール兄ちゃんもニッコリ笑って商談成立となったのだがー

 サクラがいつの間にかガッチリと抱え込んだ、ウサギのぬいぐるみも一緒に購入になった。

 なんで防具屋に、こんなモノが・・・


 ウサギぬいぐるみを抱えたサクラ。

 そのサクラを抱きかかえている俺。

 冒険者・商店街をぞろぞろと歩く俺と女達。

 ピクシーのフェイが、ウサウサーと、パタパタ喜んで飛び回っている。

 サクラとフェイがニコニコしているから、いいか・・・


 次は武器屋なんだがー


「ぐははははーーー」

「ぷぷぷぷーーーー」

「ハーレム奴隷が、どーして幼女になったぁあぁぁぁ」

 馴染みの武器屋、髭ドワーフだ。

 俺はサクラを動く甲冑のレイチェルに、そっと預けた。

「タロウ、ぱーーーんちぃぃぃ」

 ちっ、展示品の盾で受けやがった。

 こいつは武器屋の髭ドワ、ゲンサクだ。

 武器製作なんでもござれ、その製作の腕はピカいち、性格てきとー

 それなのに、そうなのに、奇跡のごとく女房・子持ちなんだ。

 ゴンッ☆

 その髭ドワ・ゲンサクの頭に鈍器フレイルが見事にめり込む。

「アンタ、お客さんに失礼しないように」

「いつもいつもいつもいつもぉ」

「言って・る・だ・ろ!」

 ゲンサクの嫁さん、ミヤさんだ。

「何度言っても分からないならー」

 迫力である。

「とーぶん酒抜きにするよっ!」

 とってもド迫力である。

 ゲンサクが土下座している。

 見事に尻の下に敷かれているゲンサクだ。

 くっ、幸せそうだなんて、思わないんだからなっ。

 うらやましいなんて、思わないいんだからなっ。

 こっちだった、女だらけのPTなんだぞっおぉぉぉーーー・・・

 ・・・・・・

 むなしい(涙)

 

 武器となれば、動く甲冑レイチェルの出番だ。

 レイチェル主導でサクラの武器を見繕いが始まった。

 頭をさすりながらゲンサクが「ちびっこいからなぁ」と色々出してくる。

 それらの武器をサクラが興味深そうに次々と手に取って試していく。

 イヤ振り回せるからって、自分の身長超える片手斧はダメだろ・・・

 色々悩みつつ、さすがに実戦と普段の使い勝手を考えて、無難に決めたのだった。


 やや細身だが先刃が有るナタのような片刃の短剣。

 なぜ片刃のナタ剣と聞くと、剣の背でぶん殴れるからだと・・・

 万能に使える、小さいがしっかりした作りのナイフ。

 投擲用のピックを一式。

 それに武器の手入れ用品のセット。

 となった。

 

 サクラのヤツが嬉しそうに短剣を手にして掲げ見ている。

 俺の方へ顔を向けて、

「タロウ、ありあとー^^」

 ニパーと笑った。

 鼻血が出そうになった。

 思わずサクラを抱きしめてしまった。

「そのまま素直に、でっかくなるんだぞ」

「金に汚い大人とか、生ものぢゃないのに腐った女とか、脳筋なのにエロさで男をたぶらかすような女」

「触れない、触っても硬い、触る所もにゃい、触ろうにもちっちゃすぎる」

「そんな夢も希望もない存在になるんぢゃないぞ」

 しみじみと俺は願いを込めてサクラに言ったのだった。

 しこたま女達に殴られた。

 俺は真実と事実しか言ってにゃいのに・・・


 髭ドワの武器屋の次はー

 魔法屋と、リッチ・ロードのタマが通りを先導して歩き出した。


「タマ、俺達の行きつけの店を通りすぎたぞ」

 あれっと思い俺は聞いた。

「私の・・・ひいきの・・・店いく」

「タマの、いきつけ、の店?」

 コイツの行きつけの店?不安になって聞いてしまった。

「値引き・・・結構・・・利く」

「決まりねっ」

 アリスさんよぅ。

 不安の予感を抱えて、俺達はタマの後を付いていった。


「ここ・・・」

 一軒の店の前にタマが立ち止まり、ためらいもせずに店に入っていく。

 店構えは、まぁ普通だな、うん普通。

 俺達もタマの後に続いて入っていった。


 カウンターの向こうに、フードマントを着て顔も見えない店員が居る。

「・・・・・・」

 無言だ。

 無言すぎる。

 店員とタマが無言で見詰め合っている。

 じっと、見詰め合っている。

「あー、まさかと思うが、姉妹?」

 思わず聞いてしまった俺。

 二人が俺の方を向いた。

 二人が俺が見つめる。

 二人揃ってー

「「 腐っ 」」

 なんだか、すごーーーく見下された気がした。

 なんだか、すごーーーく傷付いた俺・・・

 さらには、腐っなんだっ、腐ってぇぇぇ。


 その俺を無視して、店員のフードマントが無言で色々とカウンターの上に出してくる。

 定番のポーチ、小ぶりのバッグ、小さなリュック、指輪やペンダントも有った。

「これ全部、魔道具で収納のアイテムなのか?」

 俺は聞いてしまった。

 店員で無言のフードマントが、ひっそりと頷く。

「登録・・・した人・・・だけ、出し入れ」

「盗まれ・・・魔具で・・・場所、わかる」

「同士・・・紹介・・・値引き、する」

 こ、こいつ、絶対タマの同類で腐ってやがるなっ。


 バッグやリュックは動くのに邪魔になる、指輪も微妙だ、ペンダントは落とす事も有りうる。

 となると定番のポーチか?

 悩んでいると、無言店員がー

「とって・・・おき・・・」と違った品を出してきた。

 金色をした蛇のブレスレット、こった作りだ。

 無言店員がサクラの左腕を取り、その蛇のブレスレットを近づけて呪文を唱えた。

 金色の蛇がピクと動いた、そして、スルスルとサクラの左腕に移動し巻きついた。

「「「「「おおおーーー」」」」一同、思わず声が出てしまった。

 サクラが自分の腕に巻きついた蛇を不思議そうに見つめ、指先でツンツンしている。

 そして、俺の方に顔を向けニパッと笑った。

「決まりね」

 アリスさん。

「決まりでござる」

 レイチェル。

「きまったのー^^」

 フェイだ。

「お買い上げ・・・ありがとう・・・ございます」

 無言店員が言った・・・

 普通のポーチに比べて、やたら高かった(泣き)

 もちろん支払いは俺である(棒涙)


 次は古着屋なんだがー

 

 この世界では基本、衣類は自作なんだ。

 注文制作は、貴族とか平民でも金持ちだけで、ごく普通の平民は布地を買って自前作成が当たり前なんだ。

 例外は冒険者で稼いでいる奴等くらいだろう。


 俺達は馴染みの古着屋の前に居る。

 この店は少々変わっていて、古着屋なのに、注文制作もやっている店なんだ。

 おまけに店主が趣味に走りすぎる服を作ろうとするので有名だった。

 見かねた俺がビスク・ドール・サイズのゴーレムを作り、

そのゴーレムに趣味の製作衣類を着せて展示すればいいとアイディアを出した店だ。

 まぁ、ちびっこいゴーレムをマネキン代わりにする布地節約の展示販売を提案しただけなんだが。

 それが、変な方向で当たってしまったんだ。

 動く膝乗せサイズの着せ替えゴーレム、どっかツボにはまったんだろぅなぁ・・・


「入りたくねー」

 俺は思わず声に出した。

「いいから行くわよ」

 アリスさんに首根っこ引っつかまれて入店させられてしまった。


 「あら、久しぶりねぇ」

 店長だ、見た目、すげーーー美人だ。

 キリっとした凛々しいタイプの長身美人だ。

 ワンポイントの泣ホクロで、流し目がゾクっとする美麗な大人の美人だ。

 だが俺はレイチェル後ろ、彼女の細腰にすがり付いて退避している。

 レイチェルが迷惑そうに体を動かすが、俺はさらにガッチリとすがり付くっ。

 俺のファースト・キス&ETCを奪いかけたモッコリから身を守るためにっ。

 

 「あら、タロウちゃん」

 色っぽい唇に指を当てて喋るんぢゃねぇ。

 「見るな、寄るな、触るな、色目使うなっ」

 「もぅ、いけずぅ」

 モッコリにゃのに、悲哀の色香を出すんぢゃねぇ。

 「おっ俺は、童貞喪失を男でする気はないっ」

 「ましてや、男を相手に新しい世界に目覚める気は全然にゃいっっっ」

 店内に居る全員が微妙な空気の元、動きを止めて俺を同情の眼差しで見ていた。

 宣伝ゴーレム達がピコピコと歩き回っている・・・

 

 「と、とにかく、今日は、この子の用事で来たのよ」

 アリスさんがサクラを両手で抱え持ち上げて店長へ突き出した。

 店長とサクラが見つめ合うー

 店長の泣ホクロの眼がキラリンと光ったっ。

 そっそれから、怒涛の、嵐のような、着せ替え衣類の洪水が始まったのだったー

 俺は、もちろん店の隅っこへ緊急退避した。

 したのっだった。

 我が身が、かわいい、やーほれーほー・・・

 「がうぅーーーん」

 許せサクラ、決してお前を見捨てた訳ではないっ。

 「うきゅうぅぅぅ」

 男では、どーにもならぬ絶対無力、それが今なんだ。

 「にゃやゃゃゃ」

 うぐぐぐ、俺は、俺はっ。

 「ターロウぅぅぅ」

 ここで戦わなくて、いつ戦うんだっ。大切なものを守るために戦うと誓ったじゃないかっ。

 「うおぉぉぉおぉぉぉーーー」

 俺は、もぅ逃げないっ、逃げないぞおぉぉぉ。

 「サクラあぁぁぁ」

 

 店の外へポイされて、地面を舐めている俺がいる。

 戦いにもならなかった。

 許せサクラ、俺は無力だ(棒涙)


 腕の中のプンプン怒りのサクラが、俺をポコポコと叩く。

 古着屋の買い物をすませて(もちろん支払いは俺)、宿へ帰る途中だ。


 「あー、んー、うー、腹減ったな何か食うかぁ?」

 知恵の無い俺の、浅知恵なのだった。

 サクラのヤツが動きを止めて、次の瞬間。

 「串、肉ぅーーー」

 と叫んだ。

 串肉ってー

 「屋台のアレか?」

 サクラは満面の笑みで、シッポをパタパタさせて頷いた。


 結局、噴水公園で俺達全員が串焼きを食べている。

 もちろん全部、俺の支払いなのだが・・・

「がるるんん♪」

 サクラはご機嫌で串焼き二本目だ。

「いい天気だなー・・・」

 ポロっと言葉が出てしまった。

 サクラが串焼きを食べるのを止めて、空を見上げてー

「がうぅぅぅーーー・・・」

 と一声上げた。


 なんだか、心まったりとしている俺に。

「「「「タロウ、串焼き追加」」」」

 女達からの注文が入った。

 女なのに雰囲気を読めないヤツラだぁ。

 しかたないので、屋台のおっさんへ買いに行ったのだが、

「お客さん、尻5個にしかれちまってるのかい、大変だねぇ・・・」

 と言われて、ズンと固まってしまった俺だった。


 これを人はハーレムと言うんだろうか?

 なんか違うと俺は言いたい(泣)

 絶対に違うと俺は叫びたい(涙)

 

 血涙を流しながら帰路につく俺がいた・・・

普通に書くなら一人称が一番書きやすいかも・・・

詳しくは近況報告へー

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