テンプレなトラブル
思いつきで書き出したお話が第六話。
昼飯どうするかとなったのだが、めんどくさいのでー
冒険者ギルドに併設されている、待合所、兼、食堂、兼、酒場にしょうとなった。
いつもの冒険者ギルド、いつもの溜まり場、いつもの喧騒だ。
俺は反対したのだが、女達の結束主張でこんな所になってしまった。
ここって、味はーまずくはない。量はーそこそこ。栄養バランスーOK、値段はー安い。
さらには弁当まで作ってくれると、至れり尽くせり文句なしなんだが・・・
「ゲヒゲヒ、これはこれはハーレムPTじゃないですか」
「グフグフ、幼女居る、ハーレムPTうらやまし」
「ゲグゲグ、ほどこし欲しいど」
モヒカン頭、ツルツル頭、髭面の三人が湧いて出た。
何だか小汚く、頭悪そうで貧乏臭い、三拍子揃った三人組だ。
そうなんだ、こーゆぅヤツラが、たまーにぃ湧いて出るんだよなぁ・・・
俺はウェイトレスさんに目線で、どうしましょ?と問いかけた。
ネコ族のウェイトレスさんが苦笑しながら、目線でやっちゃってと返してきた。
めんどくせぇー
冒険者ギルドに併設されてるって、ダテじゃないんだ。
こんな所で騒ぎや問題を起こしたら、起こした方はタダじゃすまない、つーのに・・・
んな事を思っているうちにー
「ゲヒゲヒ、おやおや怖くて声も無いですか」
「グフグフ、怖く、無い」
「ゲグゲグ、施し欲しいど」
三人組は俺達のテーブルの間近まで近寄り、本格的に絡んできた。
俺達のPT構成、男は小僧の俺一人で他は女だけなのを見て、いいカモだと思ったのだろう。
バカな連中だ・・・
俺がどうしょうか、めんどがっているうちに女達が先に動いた。
「食事が不味くなる、消えろ」
アーク・スケルトンのアリスさん。
「うむ、働かざるもの食うべからずでござる」
動く甲冑のレイチェル。
「創作・・・意欲、湧かない・・・」
リッチ・ロードのタマ、お前それ何か違うー
「いのちは、いっこなのー」
ピクシーのフェイ、こいつが一番過激だった。
ちなみに、サクラは俺の膝の上でアクビしている。
女達の言葉に状況が動いた。
モヒカン頭が顔を真っ赤にして、フェイへ手を延ばそうとー
レイチェルの裏拳一発、モヒカン頭が白目を剥いてゆっくりと後ろへドタンと倒れた。
ツルツル頭が「なにしゃがるっ!」叫んで腰から剣を引き抜こうとー
タマが手を延ばしてチョコンと触れた、たちまち萎びていくツルツル頭。
手加減はしているようだがリッチ・ロードの生気吸収だ。
ツルツル頭がその場にペナペナと崩れ落ちた。
「お、お、おぉぉぉ」
それを見た髭面が、叫びながら片手斧を振り上げー
アリスさんが、いつの間にか背後を取って、髭面の顎下に短剣をヒタッと貼り付けていた。
我がPTメンながら怖い女達だ。
これで、まだまだ本気じゃないんだ。
「で、どうする。命は一個だぜ」
俺は髭面の眼をジトっと見つめて言った。
髭面はダラダラと脂汗を流して返事できずにいる。
アリスさん、アンタ・・・
アリスさんは、片手の短剣を髭面の顎下に当てたまま、
もう片手で両手・片手剣のブロード・ソード引き抜いて、
髭面の髭をジョリジョリと器用に剃り始めていたのだった。
「た、助けて」
髭が半分以上無くなった髭面が涙目で懇願する。
「うむ、そぅか、助かりたいか?」
と、聞き覚えの有る声が掛かる。
「こ、こいつらがー」
髭面が声のした方へ、何とか顔と視線を向ける。
向けて、そこに存在した代物を見て、真っ青になって小さく悲鳴を漏らした。
満面の笑み(とても怖い)を浮かべた教官殿が湧いて出ていた。
教官殿がゴロツキ冒険者三人を引きずって行った。
やっとこさ昼飯にできる。
ネコ族のナイスバディなウェイトレスさんが注文を取りに来た。
「あいつら最近、ヨソから流れて来たらしいのにゃ」
「素行悪くて、どうしょうか様子見ていたのにゃ」
「丁度、良く、始末が付いたにゃー」
シッポをフリフリさせながら笑顔で説明してくれた。
説明してくれ・・・
「タロウのハーレムPTにちょっかい出すにゃんて、本当に命知らずにゃー」
え゛、いや、その一言、なんか違うぅ。
違ってお願い、お願いします。
ゴロツキ相手に俺が何もしなかったと、注文スペシャル・ランチが俺の奢りとなってしまった。
まあ・・・いいんだ・・・
こーゆー時は男は逆らっちゃいけないのは分かってるから。
スペシャル・ランチは、ガッツリ・ステーキと温野菜ソース掛け&キノコ・スープの三点セットだった。
スペシャル・ランチだけあって味も悪くないし量も有る、肉もそぅ硬くない。
ピクシーのフェイは収納から自前の食器セットとテーブルを出して、
自分が食べる分だけ取り分けて食べだしている。
その余った分はPTメン全員で分けて食べる事にしている。
以前、フェイに食べる量がたいした事ないのだから、俺のを分けようかと聞いたら、
「人の分を取るのは、よくないのー」
と言われてしまった。
本当に、いい、できた女だ。ちっちゃいけど・・・
俺の膝の上から椅子に移され座りなおしたサクラが、女達に構われながら、
自分でナイフとフォークを使って食べている。
はぐはぐ、もぐもぐ、両方のほっぺたをプクンと膨らませて、実に幸せそうだ。
しかし、サクラ、お前、その成人向け一人分の量を全部食うのか?
てか、結構なスピードでサクラの腹の中へ消えていくスペシャル・ランチ。
「サクラ、それ全部、食べれるのか?」
思わず聞いてしまった。
サクラが俺の言葉に動きを止めて、俺の方を見た。
金色の瞳がキラリンと光ったー
一瞬の早業っ。
俺が食べやすいように切り分けていたステーキの肉、俺の皿から肉が一個消えたっ!
サクラの握るフォークの先に肉が刺さっている。
ニヤリと俺に視線を向けて、フォークの肉を口に放り込んだ。
旨そうに、もぐもぐしている・・・
「お、お前えぇぇぇ」
たとえ相手が幼女でも許せぬ事が有るっ。
許してはならぬ事が有るっ。
許しては、男の股間に、もといっ。沽券にかかわる事が有るっ。
戦いが始まった。
サクラのステーキ肉を狙う俺のナイフ&フォーク。
それを阻むサクラのナイフ&フォーク。
ぶつかり合う二組の金属がキンキンと音をたてる。
こっ、こいつ、できるっ。
譲れぬ戦いが、ここに有る。
譲ってはならぬ戦いが、ここに有る。
ここで譲ったら、この先、一生かすめ取られ続けるっ。
「うおぉぉおぉぉぉ」
男の意地と根性、試されてるぜぇ。
「がるるるぅうぅぅぅ」
(強い者のみが生き残るぅぅ)<<意訳
ゴンッ&ガンッ!!
サクラの頭には骨製のゲンコツが落ちた。
俺の頭には金属製のゲンコツが落ちた。
「「いいかげんにしなさいっ&するでござるっ!!」」
アリスさんとレイチェルの怒号がハモッた。
俺とサクラ、二人揃って涙目でゴメンナサイしました。
「行儀・・・悪い・・・」
タマに言われた。
「ふたりとも、お子ちゃまねぇー」
ハァとフェイがため息をついた。
なんだか頭の痛さよりもダメージが有ったのだった。
あぅ。
それから全員、昼飯も食べ終わり、フェイが自前の食器にクリーンを掛けて収納をした。
それぞれ好みの食後のお茶を飲みながら、これからどうするか話し合った。
サクラは俺の膝の上で、すぴすぴお昼寝モードになっている。
お前、寝る子は育つ腹回り、になるぞ・・・
「まずは日常品よね」
アリスさん、となると雑貨屋か。
「武器と防具も必要でござる」
レイチェルだ、武器と防具屋か。
「服と下着・・・色々必要・・・」
タマだ、古着屋か・・・
「まじっく・ぽーちがいるのー^^」
おぉぉぉ、フェイお前、なんてまともな事を。
「「「「でもって支払いは、全部タロウ持ち」」」」
女達、全員が見事にハモッた。
「・・・・・・」
はい、サクラは俺の奴隷ですから。
はい、使うお金は全部、俺持ちが当たり前ですね。
はい、何も文句は有りません。
はい、はい、はい。
はい(涙)
俺は寝ているサクラを抱いて、PTメンの女達と街中を歩いている。
幼女と言っても、こうやって抱き続けていると結構、重いもんだ。
身体強化でも掛けるかと思っているとー
「仕事以外で、街中を昼間から、全員でこうやって歩くって珍しいわよね」
アリスさんが何だかしみじみ言う。
「で、ござるなぁ。狩から戻ってくるのは夕方でござるから」
レイチェルがうなずいている。
「人生・・・ゆとり・・・必要かも」
タマだ。でも、お前の場合、寿命ないだろぅ。
「お菓子を買いだめするのー^^」
フェイ、お前、収納にどれだけお菓子のたぐい溜め込むつもりなんだ・・・
俺は経験から分かっている。こーゆー時は余計な事を言ってはいけにゃい。
ヘタに口を滑らせるとぉ、絶対ロクな事にはっならないっ。
うん、絶対にだっ。
俺は無言を貫いた。
賢いぞ俺、誰か褒めてね俺、うんうん俺。
女達がナゼか無言で俺を見つめるが、無視だ無視っ。
眼を合わせてはいけない・・・
眼を合わせると、きっと、とてつもないナニかが起きるっ。
眼を合わせると、夜、ベッドで一人、シクシク泣く自分が見えるっ。
俺は腕の中のサクラを、よっこらしょと抱きなおした。
そんな俺と、すぴすぴ寝ているサクラの周りを飛びながらー
フェイが歌い出した。
身体がちっちゃいから、そぅ声は大きくないのだが通る歌声だ。
風にそよぐ緑が奏でるささやき。
昼と夜、星と月、大地と空。
命のきらめき、その、すばらしさ。
見過ごしているけれど、実は眼に映っている全ては奇跡なんだとー
俺は涙を流していた。
フェイ、あなどりがたし・・・
俺の顔の前でニコニコしているフェイが居る。
「気が向いたら、また歌ってくれよな」照れ隠しにぎみに言った。
フェイが俺の顔にくっついてー
「タロウとサクラのためなら、いつでもうたうのー」
と笑って言ってくれた。
ちっちゃいけど、本当に、いい女だ。
気がつくと、道すがら通行人の人達が山盛りになって、こっちを見てニコニコしている。
「いいモン聞かせてもらったぜ!」
「こりゃ自慢話しができるっ!」
「できりゃ、も一度聞かせてくれや!」
なんだかんだ、声を掛けられてしまった。
愛想を振りまきつつ何とか人の山を振り切る、とにかく用事をすませなくちゃな。
俺と女達、サクラは俺の腕の中だ。
まったりと街中を歩く。
冒険者にも、こんな日が有ってもいいかもだ。
なんだか幸せって、こんなたあいない時間なのかもしれない。
たまには、ハーレムを忘れてー・・・
あれ?ハーレムをあきらめたら、俺の存在意義って?
あるはずだよな・・・?
約一週間で一話の投稿ペース守れるか・・・