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銅色奇想記  作者: ヒカリショウ
2章:魅せる魔
9/9

魔を感じさせる者

前回から遅い投稿でお待たせしました。

では、始まります。

『ただいま』と言う言葉が2つ重なる。その発生源は俺こと解浄銅璃と魅磨夢子だ。

賭けのゲームに負けて夢子を我が家に泊めることになってしまった。負けてしまったので文句は言えない。負けた俺が文句を言ったら小さい男だろう。



「じゃあ飯を作るからテレビでも見て待っててくれよ」


「お、ご飯まで作ってくれんの?」



家に泊めるならおもてなしくらいしないといけない。ならば夕食くらい作る。今日の夕食はオムライスにしよう。

フライパンの用意をして卵をカシャポと割る。龍姫様もお腹が空いてるだろうからさっさと作らないといけない。



「あ、夢子のこと伝えるの忘れてた。おーい龍姫様、今日は宿泊客がいるぞー」


「うっわこの子カワイイ!!」


「おい銅璃。この娘は誰じゃ」



もう既に接触していた。龍姫様が人形のように抱っこされている。カワイイな!!

さて、接触したみたいだが龍姫様は特に迷惑してそうではなさそうだ。ただ興味が無いだけのようだ。

なされるがままであり、抱かれたままテレビを見ながらソファに座った。



「おい銅璃。だからこの娘は誰じゃ」


「そいつは家出少女の魅磨夢子。なんやかんやで俺の家に泊まることになった」


「ふーん。いつまでいるんじゃ?」


「明日ま・・・」


「とりあえず1週間は世話になるかな」



俺の言葉を重ねるように予想外な宿泊日を言い切った。そして1週間とは中々長い。『旅行か!?』っとツッコミを入れたい。

オムライスを作りながら冷静に考える。確かに魅磨夢子を家に泊めることはゲームに負けて決まったことだ。俺の中では1泊だけだと思っていた。しかし彼女の中では1週間も我が家で居候するつもりのようだ。

これは本当に面倒事を連れ込んでしまったようだ。今、オムライスが完成した。追加にワカメサラダとスープも作った。

テーブルに料理を置いていく。『1週間』と言う言葉が頭の中でぐるぐる回りながら夕食が始まる。



「いただきまーす」


「なんか適応力というか図々しさがあるよな」


「そうじゃな。むぐむぐ」



オムライスを一口食べる。美味しい。その言葉は龍姫様と魅磨夢子から言われる。

作った料理を美味しいと言われれば誰だって嬉しい。



「本当に美味しいよ。良い夫になるんじゃない?」


「それは立場が逆だろーが」


「でも美味しいよ」


「ありがとな。ところで1週間泊まるって・・」


「テレビのチャンネル変えるよー」


「話を聞けよ」



話を聞かないし目も合わそうとしない。無視をするなと言わんばかりテレビの電源を消す。

食事をしながら話をしようじゃないか。



「で、1週間って何だ」


「アタシが宿泊する日数」


「そうか。明日の朝家に帰りなさい」


「ヤダ」


「「・・・・・・・・・・・・!!」」



無言の牽制と言うかメンチの切り合いと言うか見つめ合い。



「泊まらせてやれ銅璃」



ここで龍姫様からの意外な一言。まさか援護射撃かと思えば背後からピストルで撃たれたかのような一言だ。

おいおいマジか。



「さっすが龍姫ちゃん。分かってるぅー」


「いいのか?」


「ワシは気にせん。1週間くらい構わん」



ため息が出る。ここまで言われたら認めないわけにはいかないだろう。ここは大人の対応を見せるべきだ。

お茶を一口飲み、心を落ち着かせる。そして1週間の宿泊を認めた。



「やりぃ!!」


「面倒事は起こさないでくれよ」







夕食が終え、食器洗いも済んだ。リビングには俺と龍姫様がコーヒーを飲みながら一息ついている。

家出少女の魅磨夢子は今シャワーを浴びている。ならせっかくだから龍姫様に宿泊を認めた理由でも聞いてみるか。



「なあ龍姫。何で宿泊させたんだ。しかも1週間も」


「理由は特に無し。気まぐれじゃ・・・と言うわけではないのう」


「どっちだよ」


「あの娘から少しだけ魔を感じた」


「ま・・・魔?」


「そうじゃ。魔・・・悪魔な」


「妖怪じゃなくても禍でもなく?」


「うむ。悪魔じゃ」



悪魔。ファンタジーの世界だとよく聞く言葉だ。現実的に話すと宗教組織にとって対立する悪を象徴する存在である。

悪魔、妖怪、禍。似たような存在だが、実際は存在意味は違う。

俺は難しく考えるのは苦手だから怪物と勝手に決めている。超越的存在には変わりないからだ。



「じゃあ夢子が悪魔にとり憑かれてるってことか」


「うむ。しかし今あの娘に悪魔は憑いとらん。いたら今頃ワシが一刀両断しているからな」



確かに龍姫様の言う通りだ。我が家に悪魔が来たら一刀両断で即退治をする。偏見かもしれないが悪魔と聞いて良い事は思いつかない。

しかし、家出少女だけでいい迷惑だと言うのに悪魔憑きなんて更に厄介じゃないか。



「夢子は自分が悪魔にとり憑かれてるって理解してんのかね?」


「さあな。悪魔に憑かれるなぞ運が悪いか自業自得のどっちかじゃ」



見た感じ悪魔に憑かれてる感じはしないけど・・実際はどうなんだか。だけど悪魔に憑かれてるなら俺はその悪魔をどうにかしなければならない。

なぜなら魅磨夢子が1週間も我が家に泊まるなら絶対と言っていい程、悪魔が絡むはずだからだ。ならば準備が必要だ。



「悪魔退治だ!!」


「お風呂出たよ」


「あ、はい」


「じゃあ次、ワシが入る」



トテトテと風呂場に向っていく龍姫様と魅磨夢子が入れ替わる。ゆっくり入ってくれ龍姫様。

俺は俺で彼女にそれとなく聞いて悪魔に関して情報収集をしてやるさ。風呂から出た彼女を見て俺は吹き出した。

原因は魅磨夢子がなぜかパジャマ代わりにワイシャツを着ていた。見た目が裸ワイシャツであった。



「何やってんだ!?」


「何ってパジャマ?」



疑問系で答えてんじゃねーよ。はっきり思ってしまうともう彼女は痴女でしか見えない。

話をする前にいろいろと疲れる。何なんだよこの痴女は・・・パンツ穿いてないし裸ワイシャツだし。



「この姿だとグッとくるでしょ?」



確かにグッとくる。本音に嘘ついても仕方ない。



「ムラムラする?」


「もう寝ろ」


「もうするの?」


「何を言ってるんだお前は」



いかんいかん。せっかく話を聞いて情報を聞き出そうとしたのに話もせずに終わらせるところだった。

さて、どう話を切り出すか。いきなり『悪魔がとり憑いているから心当たり無いか?』なんて言い出せない。

こんな時に狼原さんが居れば上手い具合に話を始められるんだけどな。電話でもしてヘルプを出すか?

いやダメだ・・・こんな状況に狼原さんを呼んだら痴女について追求させられてしまう。俺の立場が危ない。

チャンネルをピッと点け直すとちょうどテレビでオカルト関係の番組がやっていた。内容も悪魔関係だ。

これなら自然と話題を切り出せるな。テレビも悪魔についての説明をしている。切り出すなら今だ!!



「なあ夢子って悪魔とか信じるか?」


「んー・・・信じてるよ」



意外に話に乗ってきて助かる。じゃあ核心をつけそうな質問を少しずつしていくか。



「お、信じる派か。じゃあ何か悪魔に関することでもあったのか?」


「悪魔に遭ったことがあるからね」



まさかの言葉が出てきた。これなら自然に話せるかもしれない。しかし悪魔に出遭っているなんてこれは深そうな話だ。



「おいおいマジか。悪魔に出遭っただと・・・どんなヤツだ?」


「お、興味あるの~?」


「ああ、俺も悪魔とか妖怪とか信じる派だ。ちょうどテレビも同じように説明してるから教えてくれ」


「いいよー。実はさ、ある真夜中の公園で8割が裸の女に出遭ったんだ」



もう可笑しい・・・悪魔の話をされているはずなのになぜ痴女の話なんだ。いやいや、まだ始まったばかりだ。ここは大人しく話を聞こう。



「その女は角、羽、尻尾が生えてた。まるで悪魔のね。しかも浮いてたし」



どうやら痴女でもコスプレでもないらしい。真夜中の公園なんて言うから変質者なんてオチかと思っただ杞憂になりそうだ。



「へえ、それでどうしたんだ?」



悪魔に出遭って何も起きないなんてことは無いだろう。本当は何も起こらないのが一番だけどな。

どうやら彼女は運悪く悪魔に出遭った感じだ。



「ただ普通に話した」


「話ただけか?」


「うん」



話しただけか。でも本当に話しただけなのか分からない。もしかしたら嘘ついてるかもだしな。



「おいおい、本当に話しただけかよ。実は何か契約とかやっちゃったんじゃないか?」


「ある意味ヤッたけどね」



そんなカミングアウトはいらない。冗談で聞いても苦笑いだ。本当は何をしたんだか。



「なんかその悪魔はさ、お腹空いてたみたいなんだよね。何か食べ物を出したらいらないって言われて代わりに精気が欲しいって言われた。だからヤッた」


「冗談だよな」


「女よりも男が良いって言ってたけど我慢するって言ってた」



おかしいな。何か俺が聞きたい情報じゃない。もっとこう・・・悪魔の話なら恐れるような、ゾッとするようなものがあると思う。

だが魅磨夢子から聞いてる話は冗談なのか本気なのかの感じだ。そもそも話し方がオープンだ。



「んで悪魔は私にこう言ったんだよ。「契約しない?」ってさ。だから契約してみた」


「やっぱ契約してんじゃねーか。危険だろ」


「ちゃんと説明は聞いたよ。一応危険は無い契約だったから平気」



本当だろうか。悪魔と契約なんて専門家でもなければしない方がよいものだ。素人がやっても絶対に痛い目にあるからだ。

痛い目にあうなんてことで済ませば運が良いものでもある。悪魔の方からの契約でも運が悪い状況だぞ。



「どんな契約何だ?」


「それはナイショ。そーゆう契約だしね」


「そこはやっぱりナイショなんだ」



少しはそれらしい話が出た。契約内容は秘密か。気になるが俺のワガママで魅磨夢子を危険にさらすわけにはいかない。

これ以上聞くのはマズイかもな。



「ま、信じるか信じないかはドーリ次第だけどね」


「俺は信じるよ。いろんな文化や事件が起こる日本だ。悪魔が存在しても可笑しくないしな」


「信じてくれるんだ。他に人は言っても信じてくれないのに」



まあ突拍子も無い話であるし、話の始めかたも冗談でしか聞こえなかったからな。でも俺は信じる。今風呂に入ってるのが龍神であるから悪魔だって存在する。

だから俺はこう言った。厄介事には無縁でいるようにされている俺は言った。



「何か悪魔で困ったことがあれば言ってくれ。どうせ1週間は泊まるからな」


「お、ありがと。優しいねドーリは。やっぱアタシの目に狂いは無かったみたい」


「なんだそりゃ?」



1日目が終わる。

魅磨夢子を家に泊まらしていきなり濃い夜となったがこれでゆっくりと寝れるな。明日から学校だが魅磨夢子はどうするのだろうか。

気にしてもどうせ疲れるだけだ。なら明日の朝食作りのためにささっと寝よう。明日から1週間1人分食事が増えたからな。

寝よう。

これで魅磨夢子1泊目が終了した・・・・・・はずだった。







目を瞑り、寝てから30分が経ったが今夜は珍しく寝れない。その理由は分からないが、もしかしたら魅磨夢子という他人が我が家にいるからだと思う。

俺はそんなに神経質では無かったと思っていたが実はそうでもないらしい。明日は学校なのに寝不足は勘弁だ。夜更かしするのは明日が休みの日か修学旅行の日だけで十分だ。



「1回起きてミルクでも飲むか。確かホットミルクが良いんだったか」



布団から這い出たら目の前に誰かが居た。その誰かは暗くてもだいたい分かった。その正体は魅磨夢子だ。



「どうした?」


「いや、今日のお礼してないし」


「お礼って何だよ」


「そ・れ・は」



いきなり馬乗りになってきた。暗くてよく見えなかったが目が慣れてきたから彼女の姿が見える。

裸ワイシャツの姿なのだが寝る前とは過激な格好になっている。詳しく言うなら服が乱れて見えそうで見えない感じ。それよりもなぜ馬乗りになるんだ?



「アタシを好きにしていいよ」


「・・・はあ?」



最初は言っていることが分からなかったが状況的に見て理解できる。俺はそんなに鈍くない。



「エッチしていいよ」



ハッキリと直接言ってきた。何を言いだすんだこの痴女は。だけど彼女の行動は前にテレビでやっていたのを思い出す。

ヤドカリ援交。確かホテルとかに泊まる事の出来ない家出中の女性が、一般男性の住んでいる部屋にタダで泊めてもらう代わりに体でお礼をする事だったな。

まさか彼女も実践者だったとは・・・いや、言動からソレらしいのはあった。ただの冗談として聞き流していたが実際にこう迫られると頭が回らない。



「冷静になるんだ」


「冷静だよアタシ」


「冷静になるんだ・・・俺」


「なんだ自分自身に言ってんのか。でもそんなの気にしない気にしない。ヤッたらそんなの気にしなくなるからね」



馬乗りになられて上手く動けない。それになぜか彼女から目が離せない。本当に目が離せないのだ。

それはまるで魔に魅せられた状態だ。頭はまだ冷静だが身体は動かない。



「ほら、アタシを好きにしていいんだよ」



俺は・・・両手を彼女の胸に向けるのではなくて自分の首に回す。危険な方法だが自分で自分を締め落とした。



「ありゃま。無理矢理寝ちゃった・・・アタシも無理矢理は好きじゃないからな~。また明日でもいっか」


読んでくれてありがとうございます。


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