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銅色奇想記  作者: ヒカリショウ
2章:魅せる魔
8/9

家出をする者

新章です。タイトル通りで家出をする者が登場します。

家出をしたらさっさと家に帰ろう。

増えた。何が増えたかと言うと居候が増えたのだ。我が解浄家には俺と龍姫様の他に2人が新しく入ったのだ。

正直言って迷惑極まりない。居候だって許可したと言うよりも強制的に押し入ってきたようなものだからだ。しかも相手は家出少女だ。

絶対に厄介持ちでしかない。いや、実際に厄介事に巻き込まれて彼女たちが俺の家に押し入ってきたのだ。

食事も洗濯も掃除も倍になった。これでは専業主婦化してしまう。学生の身でありながら家事をマスターしてどうする。構わないのだが何か微妙な感覚が頭をぐるぐる回っているのだ。

そんな感覚に襲われながらフライパンに卵を4つ投下、ベーコンを8枚投下。今は朝食作りの最中だ。

ジュージューと音を立てながら増えた居候2人のことを思い出す。始まりは夕食を作ろうとしたら冷蔵庫に何も無いことを思い出して夜の買い出しをしていた時である。







買い物袋を2つぶら下げて帰宅する。早く帰らねば通報されてしまう。ただの買い出しで通報されたら洒落にならない。

学生にとって外の夜時間は自由ではない。だが不満も無い。



「早く帰って飯を作らないと龍姫様がうるさいかな。今日は龍姫様が好きな飯でも作るか」



歩く早さを少しずつ上げる。しかし赤信号には逆らえなく、ピタリと止まる。人間が赤信号に止まる反射神経はいつから埋め込まれたのだろうと考える。そしていつから赤信号は止まらないといけないのだろうか。

恐らく幼稚園児の時に教え込まれたのかと思うが、どのあたりかと分からなくなる。どうでもよいことなのに考えが止まらない。

人間は自由を奪われた存在だと思う。無機質の物が赤く光っただけで足を止めるのだからだ。車なんて通っていないのにも関わらず足を止める。



(しかし右も左からも車が来る気配が無いのに赤信号で止まるなんて滑稽にしか見えない。どうするか・・俺はこのままそのルールを壊し自由の1歩を出すべきか)



俺はなんてくだらないことを考えているのだろう。だが男はくだらないことを真剣に考えるものだ。



(では自由の1歩を!!)



右足を出そうとした時、横断歩道の向こう側にある女性を見た。彼女は曰くギャルというやつだろう。金髪が目立ち、ギャル風な服装。しかもわざとなのか胸元が開けてる。

視線が直進してしまうぜ。それに他の人からも注目されている。



(つーか気になるのは手に持っているキャリーバックだ。まるで家出少女じゃないか)



家出少女。家に居られなくなった者か。何があったのか。



「あ・・・・」



家出少女らしき少女と目が合った。そして何故か笑顔で手を振られた。ならば此方も手を振り返すしかない。

フリフリと振り返す。挨拶みたいなものなら返事をしなければ失礼だろう。



(彼女が家出少女だかどうか知らないけど俺には関係無いな。厄介事に巻き込まれないようにさっさと帰るか)



横断歩道を渡り、さらには彼女の横を通り過ぎる。

トコトコトコトコ。早歩きで帰宅する。

カラカラカラカラ。何かを転がして引いてくる音が聞こえてくる。

トコトコトコトコトコトコトコトコトコトコ。

カラカラカラカラカラカラカラカラカラカラ。

歩く音と何か転がして引く音が同時に聞こえる。それが自宅近くまで聞こえるのだ。正直言って後ろを見て確認すれば解決したかもしれない。だが俺は厄介事に巻き込まれたくないから後ろを振り向かなかった。

それが間違いだったのだろう。さっさと後ろに振り向いて解決すればよかったのだ。今更ながら遅いが後ろを振り向く。



「へえー、ここがアンタ家なんだ。なかなか大きいじゃん」



そこに居たのは先ほど見かけた家出少女らしい少女であった。



「誰だあんた。つーか俺に何か用か?」


「アタシは魅磨夢子みまゆめこ。よろしくね!!」



ダブルピースしながら自己紹介してきた。



「俺は解浄銅璃だ。じゃあサヨナラ」



家のドアを開けようとドアノブに手をかける。後ろには魅磨夢子がまだいる。気にせずにドアを開ける。



「ただいま~」


「お邪魔しまーす!!」



パタンとドアを閉じる。



「おい」


「何?」


「何じゃない。何で堂々と俺ん家に入ろうとしてんだ」


「だって今日はここに泊まるし」



意味が分からないこと言う少女だ。なぜ彼女を我が家に泊めなければならないのか。頭にはハテナマークが7つ浮かんだ。

状況を整理しよう。目の前には家出少女らしき少女の魅磨夢子。彼女は我が家に泊まると言っている。そして勝手に入り込んでこようとする。



「ふむ。やはり意味が分からない」


「何ブツブツ言ってんの? 早く家の中に入ろーよ」



俺の手に魅磨夢子の手が重なり強制的にドアが開かれる。そして堂々と我が家に侵入している。

なんてヤツだろう。



「待て待て待て!!」


「だから何?」


「何はこっちセリフだ。お前は何で俺ん家に泊まるんだよ!!」


「だってアタシ家出少女だし」



本当に家出少女であった。



「ならお前が行くところは俺ん家じゃなくて警察だ」



携帯電話を取り出す。目の前の厄介事の塊を通報しなければならない。



「ちょっと待った。アタシも警察に厄介なるのは困るからさ・・・・・てい!!」


「うわっ・・何!?」



携帯電話を奪われた。だが諦めない。何とか家出少女から帰宅少女になってもらおう。



「帰れ」


「もう家の中に入ったから帰れないよ」


「まだ玄関だ。まだ帰れる」


「何でよ。アンタはアタシに泊めてくれるんでしょ。だってアタシと目が合って、手も振り返してくれたじゃない」


「そんなつもりで手を振り返した覚えは無い」



まさか手を振り返しただけで目を付けられたわけである。人間どんなことをしても厄介事に巻き込まれるらしい。



「こんな可愛いギャルが泊めてって言っているのにダメなの? 安心してよちゃんと宿泊代は払うからさ」



宿泊代があるのなら安いホテルに泊まれば良いはずだ。なのになぜ我が家に泊まるのか。

家出少女ならある程度お金は持っているはずだ。無一文で家出をするヤツはいないだろう。いたらバカだ。

ならばあまりお金を使いたくないということで安いホテル代より少しでも安くするつもりなのかもしれない。

でもダメだ。我が家には龍姫様が居る。龍姫様に家出少女を部屋に入れたら何て言われるか。



「どうしてもダメえ? さすがにオッサンとことかに泊まるのは飽きてきたんだよね・・・じゃあゲームしない?」


「ゲーム?」


「そ、ゲーム。アタシが勝てば宿泊代を払って泊まる。アンタが勝てばアタシは帰る。どっちにしろアンタに不利なんてことは無いと思うよ」



10秒考える。なかなか面白そうだ。それにゲームを受けないと帰ってくれなさそうだ。



「そのゲームを受けてやる。どんなゲームだ?」


「説明するよ。簡単だからすぐ分かるよ」







ゲームの説明を聞いた。ゲーム名は『ダウトゲーム』。トランプのダウトでは無いが似たようなゲームだ。しかもどこかで聞いたことのある内容のゲームだ。

3つ言葉を言って、その中で嘘の言葉を当てる。それだけだ。簡単に理解できるゲームだ。ではルールを確認しよう。

1、嘘と真の言葉は曖昧では無く必ず白黒ハッキリとした言葉であること。

2、嘘を見抜く側の考える時間は2分であること。

3、勝利条件は相手の嘘を見抜くことと嘘見破られないようにすること。



「ルールは理解できた。先攻後攻はどうする?」


「ドーリが決めていいよ。ゲームを提案したのはアタシだからね」


「なら遠慮なく決めさせてもらおう・・・俺が先に3つ言葉を言おう」


「どうぞ~」



俺が言った言葉はこの3つだ。

『海外では実は猫も干支に含まれる』、『円周率の13桁目は9である』、『空に浮かんでいる雲の名前で空積雲と言う雲がある』。

この中で嘘は3つ目だ。空積雲なんて存在しない。俺が適当に考えた雲の名前だ。嘘はやはり有りそうで無さそうなことを言うのが鉄板だと思う。

制限時間は2分。腕時計を見ながら魅磨夢子の答えを待つ。

さあ考えろ考えろ。この難問を考えろ。答えられるものなら答えてみろ!!



「嘘は3つ目だね」



答えられた。



「何で分かったん?」


「干支のことに関しては雑学で知ってたし、円周率は20桁まで暗記してる。なら残ってるのは3つ目だよね」



ぐうの音も出ない。まさかアッサリと答えられるとは予想外すぎる。リーチをかけられてしまったがまだ負けではない。俺も嘘を見破れば瘴気は残っている。

さあかかってこい!!



「じゃあー・・この3つにしよっと」



『星座にはほ座という星座がある』、『亀の甲羅は剥がれる』、『男はエロイ』。



「ちょっと待て!! 3つ目は曖昧だろ!!」



しかも8割は真実だから堂々と俺がエロイと公言するようなものだ。



「冗談冗談。3つ目は『アタシは今パンツを穿いている』」



爆弾発言がきた。



「ちょっと待てい!!」


「何? 曖昧じゃないでしょ。アタシがパンツを穿いているか穿いていないかでしょ」


「それは分かってるがモラルとしてどうなんだ!?」


「はいはい。2分数えるよー」



考える時間は2分。仕方が無いが考えよう。まず2番目に関しては真だろう。テレビでやっていたことを思い出す。

ならば嘘の言葉は1番目と3番目のどっちかだ。はっきり言って星座には様々な星座がある。彼女が言うほ座が存在するか分からない。

そしてパンツを穿いているか否か。これに関しては穿いていてもらいたいものだ。もしパンツを穿いていなかったら彼女はただの痴女だ。



(さて、モラル的に考えてパンツを穿いてもらわないと困る。・・・・・普通に考えてパンツは穿いているはずだ。普通に考えて。おそらく魅磨夢子は俺をただの初心な思春期男子だと思っているのだろうな)


(考えてる考えてる。この童貞男子め・・・答えは①か③の2択と悩んでいるだろーね。フフフフ、この2択は考えれば考えるほど分からなくなるからね)



残り1分。時間も残り少ない。2分なんて一瞬だ。これは無駄に考えてもしかたない。

魅磨夢子の作戦はきっと慌てさせるためにパンツのくだりを言い放ったはずである。その作戦は実際に慌てさせたのだから成功している。

男として反応してしまうのは誰も責めてくれないはずだろう。考えが今の所パンツを穿いているか穿いていないかに悩んでしまっている。まさに作戦に嵌っている。



(おそらく星座に関してから遠のけている可能性がある。パンツの印象は強力だぜ)



時間切れ。答えを出す時間である。



「嘘の言葉は①だ!!」


「ブブー。嘘の言葉は③でした」



痴女が目の前にいた。そしてゲームの勝敗が決まり、魅磨夢子を我が家に宿泊させることも決まった。



「パンツ穿いてないってどーゆうことなのさあああああああ!!」


読んでくれてありがとうございます。

次回もゆっくりとお待ちください。

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