復讐する者
カアカアと禍カラスが俺の周りを飛んでいる。合計で9匹いて、1匹はさっき切り裂いた。残り8匹だ。
1匹消されたのに警戒しているのか中々襲ってくることはなさそうだ。
「誰だ君は?」
「俺は解浄銅璃だ。『禍』を退治しに来た!!」
「君までぼくの復讐を邪魔をするのか。止めてほしいよ」
ん?復讐って何だ?
チラリと狼原さんを見る。説明をプリーズと目で語る。復讐って何だ!?
「簡単に説明するとイジメを受けたから復讐するんだって」
「理解した!!」
チャキリと『銅刀・天晴』を構える。見据えるは目の前の烏森と言うヤツだ。そしてバタバタと俺の周りを飛んでいる禍カラス。
「お前の復讐なんて知らないが『禍』を放って置く訳にはいかない。今ここで全部断ち切る!!」
「部外者がぼくの復讐を邪魔するな!!」
禍カラスが円状に俺の周りを飛び始めたな。グルグルと周っているのを見て俺は予想できる。どう襲ってくるかをだ。その予想は正解であり避けることができた。
円状から収縮するように鋭いくちばしで一斉に襲い掛かってきたわけだ。それを予想してしゃがんだ俺は正解だ。そして銅刀の刀身を上に向けて突き刺す。1匹を突き刺して消滅!!
「残り7匹」
「ぼくのカラスが2匹も。よくもやってくれたな!!」
「退治した方がお前の為になるんだがな」
「3匹はぼくのところへ。4匹はそのまま旋回だ!!」
またグルグルと周囲を周るか。今度はどう襲ってくるんだか。っと、いきなり来たよ!?
「1匹ずつ突撃!!」
1匹ずつ突撃なんて楽なことを言ってくれるぜ。そのまま1匹ずつぶった斬ってやる!!
烏森が言ったように1匹ずつ突撃してくる。だけどストレートに飛んでくると考えていた俺は浅はかだったと思う。カーブやらフォークやらとで飛んでくる。これには避けるしかない。
「うおおおおおおおう!?」
「そのまま間髪入れずに回転しながら攻め続けろ禍カラス!!」
禍カラスの4匹が回転しながら交互に襲ってくる。速さ的には目で追えるから避けられるけど当たったらマズイな。そもそも4匹でこれだと向こうは残り3匹を足してくるかも・・・。
「残り3匹も追加!!」
やっぱりぃ!?
「チッ、ちっとやべえな」
7匹の禍カラスが回転しながら縦横無尽に襲ってくる。どの禍カラスも精密な動き出し、統率の取れた動きだ。
縦1列横1列に襲ってくる時もあれば、バラバラになって襲ってくることもある。今の状況は避けっぱなしだ。だけどだからと言って攻撃に移ることができない。1匹か2匹はなんとか斬ることはできそうだが、その内にほかの禍カラスに貫かれる可能性がある。
だから不用意に銅刀を振るえない。チクショウ。
(恐らくヤツは禍カラスの何匹かを犠牲にして狙ってくる可能性があるな)
(やっぱりカラスの何匹かは斬られるかもしれない。でも1匹でも残れば大丈夫だ。1匹だけでも復讐することはできる)
7匹の禍カラスがまた旋回を始めた。旋回するのが好きなのか。しかも身体が少し大きくなったな。まだまだ成長途中ってわけか。よく見るとヤツが指をタクトのようにして操ってんのか。やっぱ叩くなら本体か。
おっと!!・・急に襲い掛かってくるな。このまま避け続けても決着はつかない。ならすること1つ。
「一旦引くぞ狼原さん!!」
この路地裏を上手く使う。そして離脱の際に1匹斬る。残り6匹。
「逃がさない。そのまま3匹は追いかけろ!!」
路地裏を走りながら追いかけてくる禍カラスをどう退治するか考える。あの禍カラスども恐らく自動追尾だろう。なら誘いこんでいっきに斬る!!
路地裏に落ちているゴミを銅刀で弾き飛ばす。命中して機動がずれた。このまま落ちているゴミを弾きながら走る。今から目指す場所は行き止まりだ。行き止まりなら場所をいくつか特定しているから大丈夫だ。戦う場所くらい下調べはするからな。狼原さんに電話でこの路地裏の地理はある程度教えてもらったからだ。『禍』は姿形、性質によって退治の方法は変わるからな。今回は路地裏を上手く活用しよう。
さて、なぜ行き止まりを目指すかというと、行き止まりは迎え撃つのに最適だからだ。場所的に襲ってくるのは前か上の2択だからだ。相手は3匹。前からも上からも来たとしても対応できる。
「よし、目的の行き止まりに到着!!」
3匹の禍カラスが追いついて襲ってくる。予想どうり2匹が前から、残り1匹が上から襲ってくる。俺はまず前から来る2匹を斬り落とし、上から来る1匹も真っ二つだ。
「これで残り3匹だ。早くヤツのところに戻らないとな」
③
「くそ!!ぼくのカラスが3匹やられた!!」
「これで残り3匹だな!!」
路地裏からソッと出る俺。銅刀を肩に担ぎながら余裕な顔をしながらヤツの前に出る。実際は余裕でも何でも無いけどな。
「残り3匹だな。もう諦めろ」
「ぼくの邪魔をするな。1匹は肩に待機して、残りは2匹は前進」
2匹なら簡単だ。くちばしをドリルのようにして突っ込んで来ても対応はできる。銅刀を肩から外して刀身を禍カラスに向ける。どっからでも掛かって来い!!
間合いに入る瞬間に禍カラスが左右に分かれる。そして高速旋回する。本当に周るのが好きだなコイツら・・・つーか指示してんのは目の前ヤツだったよ。旋回が好きなのはアイツか。
「グルグル周るのが好きみたいだな」
「周るのは嫌いじゃないよ。禍カラス、翼を大きく広げて連結!!」
高速回転している禍カラスが翼を広げて連結した。禍カラスのサークルだ。そしてサークルの中心にいる俺に向って囲うようにドリルが生える。この時点で何をするつもりか分かる。
「烏輪刺し。収縮するんだ!!」
このままだと串刺しだが、俺には効かない。この銅刀があるからだ。向こうは知らないだろう。『銅刀・天晴』は『禍』を斬るためだけの刀だということを。
『禍』なら絶対に斬れる。この状況は俺にとってピンチでも無い。寧ろ『禍』を断ち斬るチャンスが来ただけだ!!
「禍を乱刀両断!!」
「何だって!?」
一刀両断では無い。乱れるくらいバラバラに禍カラスを切断する。そのまま走り抜け、右拳を相手の顔めがけて突き出す。ズガンッと音が聞こえながら殴り飛ばした。
「うああっ!?」
チャキリと銅刀を突き立てる。もうこれで終わりだ。
「もう諦めろ。お前の負けだ」
「・・・・・確かに邪魔されたし、禍カラスが8匹も斬られた。でもぼくは復讐さえ出来ればいいんだ」
「1匹いないな。おいおいまさか」
「そう。残り1匹はもう復讐するように指示して向わせたのさ。それにぼくの目的は復讐だから君に勝つことじゃないんだ」
してやった顔をしやがって・・・1匹を残してたのはそのためか。今頃ここから離れてイジメをしている相手に向って飛行中だな。早く追いかけないとマズイな。
「もう間に合わないさ。ぼくは最初から君たちに見つかった時からどうにか1匹を向わせようと考えていた。そして成功した。これで復讐は成功だ!!」
電話が鳴る。
「そうでも無いかもな」
「え?」
電話の相手は狼原さん。内容はこうだ。『禍カラス1匹を見かけたから蹴り消した』だそうだ。力を手に入れたからって・・すげえよ狼原さん。
「そ、そんな・・・ぼくの復讐が」
「この結果は俺も予想外だな。でもこれで終わりだ」
この後始末は『翠竜』に任せるか。狼原さんを向えに行かないとな。
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