巻き込まれ解決する者
こんにちは。もしくは始めまして。
突然だが皆は奇想天外と言った怪奇現象を信じるだろうか。妖怪や神様の存在を信じるだろうか。・・・禍を信じるだろうか。
俺は信じる。百聞は一見にしかずと言うべきか、自分の目で見てしまえば嫌でも信じるしかない。
おっと、そういえば自己紹介がまだだった。俺の名前は解浄銅璃。清条学園の2年生だ。好きなものは納豆。ネバネバしたものは美味しいよね。趣味は森林浴。緑生い茂る空間は落ち着くよね。好きな言葉は『なんとかなる』。
正直に言って普通の人間では無い。1年前までは普通の人間だったけど。一応誤解が無いように言うけど怪物になったわけじゃないから。自分がいる世界観が他の人と違う意味合いだ。1年前のある出来事によって俺は変わったと言っても過言ではない。1年前のある出来事とは詳しく話せば長くなるのでまた今度にしよう。
話すのは今から起こる事にしよう。俺は・・・
「何をしておるのだ?」
「日記を書いているんだよ」
「日記か。書かずとも頭の中に入れておけばよかろう」
「人は記憶をいつか忘れてしまうんだよ。でもこうやって記録しておけばいつでも思い出せるんだ」
「人間とは頭が悪いのう」
「人間と龍を一緒にするな」
俺、解浄銅璃は今自室にて日記を書いている。そして古くさい話し方で話しかけてきた人物は龍姫様。紫色の髪にオレンジ色の目、頭に生える枝のような角を持つ少女。
はっきり言って龍姫様は人間では無い。龍だ。龍、それは誰もが知っている伝説の生物。強さの象徴とも言え、最強の存在とも言われる。
まさに最初に言ったように常識では無い怪奇的な存在だ。目の前に居る事実により怪奇的な存在を信じるしかない。
「ふむ。しかしこの、ちょこれーとは甘くて美味いのう。昔には無かった甘味じゃ」
チョコレートを摘みながら俺の部屋でゴロゴロしている普通の少女しか見えないが伝説の生物と言われる龍だ。・・・ただの少女ではない。本当に龍なんだ。大事な事だから2回言ったよ。
龍である彼女も1年前に出会ったんだ。その話も長いからまた今度にしよう。
「それにしても、せっかくの日曜日が暇じゃのう。どこかに連れてってくれぬか銅璃」
「うーん、どこかに連れてけと言われてもな。・・・今住んでいる町は案内し尽したからな」
「ならば御主が通っている学園とやらに連れてけ」
「大人しくしとけよ。あと、家出る前に角は隠しといてよ」
俺が通う学園は清条学園と言う。比較的に大きな学園だ。最初見た時は近代的な学園だと驚いた。なぜなら俺は田舎の学校に通学していたから。
清条学園に通う前はザ・田舎と言うくらい村に住んでいたんだ。でも清条学園に入学する事になり引っ越して来たわけだ。いやー都会って凄いね。さらに日本の中心と言われてる東京はもっと凄いんだろうな。・・・絶対迷うな。
隣に歩いている龍姫様は絶対に迷子になるな。
「なんじゃ?」
今の構図。俺が龍姫様の手を繋いで歩いている。どこからどう見ても兄と妹の姿だ。確実に年が上なのは龍姫様だけど。
そういえば龍姫様の年齢って何歳だろうか。百年は優に生きているのは確かだ。気になったら聞いてみよう。
「龍姫様って何歳かなって」
「女性に年齢を聞くもんじゃないぞ」
「もう年齢を聞かれても気にしない年齢だろ。百は優に超えてるんだから」
無言で脛を蹴られた。地味に痛いから止めてほしいものだ。弁慶の泣き所と言うが、これは屈強な弁慶だって弱点になるよ。
歩いて電車に乗って歩いて清条学園に到着だ。
「ふむ。ここが御主が通う寺小屋もとい学園か大きいのう」
「日曜なのに学園に来るとは思わなかったな。で、どう案内しようか」
「ならば学園の七不思議ツアーをしようぞ」
「この学園に七不思議は無い」
学園生活2年目になるがそんな噂は聞いた事が無い。
「馬鹿な・・・学園とやらは必ず七不思議があるのではないのか!?」
「どこの常識だ」
学園に七不思議は必ずあるとは思えない。在ったら在ったで面白そうではあるんだけど。
少しだけテンションが下がった龍姫様を連れて学園中を周る。日曜日だから学生は居ないに等しい。居るのは部活やサークルのメンバーくらいだ。
たまーに龍姫様の事を聞かれるが従妹と言って誤魔化す。本当は龍と言ったら馬鹿にされそうだ。
「・・・・・何かつまらん」
「まあ・・ただ見学しているだけで何かイベントが起きるわけじゃないからな」
日曜日の学園なんて何も無いに等しい。食堂だって開いていない。ただ学園内を見て周るだけだ。
「何か起こってくれんかのぉ」
「何も起こらないよ。面倒事に関しては起こってほしくない」
こんな事を自分で言っておいて何だが、この後にすぐ面倒事が転がり込んできた。正直、俺は面倒事に巻き込まれるタイプだ。1年前の『あの日』以来から面倒事が増えた気がするんだ。
『あの日』って何?と思うだろう。それを今説明するのは出来ない。まず面倒事が目の前にいるからだ。正確にはこれから巻き込まれるだろうと言う面倒事だ。
「解浄くんが日曜日に学園にいるのは珍しいね。確かサークルとかには所属して無かったよね。隣の子を見て思うに・・その子に学園見学をさせているってところかな」
見事に俺らの行動を正解してみせた彼女は同級生の狼原潤実。成績優秀、性格良し、可愛いの三拍子揃っている。
俺が思うに彼女のチャーミングポイントは綺麗な黒髪で動物の耳のような髪型しているところだ。寝癖ではないと思う。
「ああ。狼原さんこそどうしたの?」
「わたしは忘れ物をしたから取りに来たの」
忘れ物。今日は日曜日なのだから明日の月曜日まで待てばいいのにと思う。俺なら日曜日に忘れ物を取りに来ないな。だって面倒だし。
でも狼原さんは忘れ物を取りに来る。彼女曰く。
「わたしは気になった事があれば気が済むようにしてるの」
だ、そうだ。真面目なのは良い事だよ。とても好感が持てる。『真面目が馬鹿を見る』なんて言葉がるらしいが俺はそんな言葉認めないね。ぜひ真面目な彼女には幸せになってもらいたい。
さて、親戚の叔父さんみたいな事を言っている場合じゃない。面倒事をどうにかしなければならない。先に言っておくけど狼原さんが面倒事ではない。彼女の影が面倒事なんだ。
先ほどから龍姫様が無言だがそれは人見知りだからではない。ずっと狼原さんの影を見ているのだ。その影は狼原さんと同じ形をしていない。人の形ではない。ただ影が光の反射や角度などで形が変化しているとは別物だ。
狼原さんの影はどこからどう見てもある動物の影に見えていた。それはオオカミであった。
(まさか同級生に禍持ちがいるなんて・・・見たくなかったな。もとい心配だ)
「どうしたの解浄くん?」
「んん、いや、狼原さんの影が一瞬オオカミのように見えてさ」
「え?」
「ゴメン見間違いだったかな」
「あ、そ、そうだね。解浄くんの見間違いだと思うよ。影がオオカミに見えるなんて無いからね」
一瞬慌てたように見えたけど、すぐに落ち着いた。とりあえず堂々とチョイ確信を言った。
(反応から見ると狼原さんも自分の影について理解しているみたいだ)
「じゃあ、わたしは帰るね。また明日」
「ああ。また明日」
スタスタと急ぐように帰っていくな。仕方ないと言えば仕方ない。普通なら自分の身に起きた異常を伝えるのは難しい。さらにそれが現実では考えられないモノなら言っても鼻で笑われてしまうかもしれないからだ。いや、信じてもらえない可能性が確実に高い。
それが『禍』なら尚更だ。
「どうするのじゃ銅璃。このまま放って置くのか?ならあの女は死ぬぞ」
「放って置くわけないだろ。ったく、本当に俺は面倒事に巻き込まれるよ」
頭をポリポリと掻く。掻く無いけどなんとなく掻いてしまう。これは俺は面倒事に巻き込まれたらしてしまうクセだ。
さて、家に帰って『禍』を祓う準備をするか。
「帰りに甘味が食べたい」
「家にある羊羹を食ってくれ」
さあ『禍』を解決しよう。
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