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意志量子力学(ウィルクァンタムコンプレックスセレオム)

 嵐のような事件のあとに、平穏な日々が帰ってくる。

 しばらくはもう精霊中核市に行きたくはないのだが、紅茶が切れたころにまた買い出しに向かうことだろう。ぼくはといえば、3日に一度はリティを載せて空中散歩をしていた。いまだにリティが魔箒を発注した意図がわからないままだ。

 「いや、何もかもわからないまま、か」

 夜にはこうしてベランダで星を眺めることにしている。もうそろそろ夜の寒さがきつくなってきたころだから、ラウドは暖炉の前でリティに抱きかかえられながらごろにゃんとしていた。ぼくは今日も飽きもせず、またたく星空を眺めている。箒星は、めったに流れない。

 『騒動魔女』ノイズィと精霊中核市。あの拉致されていたときのことはあまり思い出したくないのだが、彼女――、彼がぼくに話してくれた事実はいくつかの筋道を与えてくれた(当然、ノイズィの言葉を全面的に信じるならばというエクスキューズがつくのだが)。ノイズィの言うとおり、魔女にとって、精霊中核市に移住しないということのメリットが思い当たらなかった。個人的な好き嫌いはあるのかもしれないが、どうもリティを見ているとそんな気がしない。

 精霊中核市への買い出し――、必要な食料品と大量の魔導書グリモア。これだって、そもそも精霊中核市に住んでいればいいだけのことだし、リティが精霊中核市に用事があることの証明になっている。嫌ならもっと遠くに住めばいい。必要ならあそこに住めばいい。リティはどうもそのどちらにも決めかねているような感触がする。

 『静寂魔女』

 ノイズィは詠唱という手続きが魔法にとっては重要なのだということを教えてくれた。たしかにノイズィの絶え間なくしゃべり続ける戦闘スタイルは、ある意味で詠唱なのかもしれない。ああして、自分のテンションを高めているのだと思えば、なんとなく理解ができる。しかし、リティは喋らない。ラティナリオ大聖堂の加護を受けたノイズィを前にして、不利な闘いを強いられたとしても、詠唱をすることはなかった。けれど、一度だけ、箍が外れたように『――それは』と言った。ぼくたちは誰一人としてそれを聞き逃さなかった。喋ることができる、これは予想はしていたけれど、いざ目の前にすると不可解に消化できない事実だった。

 「……それに、ぼくはあの声をどこかで聴いた気がする」

 遠くで梟が啼き、ぼくは持っているはずのない記憶に身を委ねようとしていた。


 ※


 まどろみの中で、浮かんでは弾ける泡を数えていた。

 星々が流れている記憶があった。箒星というらしい。気まぐれのように漆黒の夜空をかけるそれは、それが流れているあいだに願い事を唱えれば叶えてくれるものらしい。「願い事は唱えられた?」隣に座る誰かがそういう意味のことを言っていた。ぼくは首を振り、困ったとばかりに顔を伏せた。夜空には数え切れないほどの箒星が流れており、どれに願い事をすればいいのか迷うほどだったからだ。

 それに願い事も思いつかなかった。いまぼくが、いいや、ぼくたちが最大級に願っている事柄を、この箒星たちは叶えてくれないということは知っていた。それなのに、隣に座る彼女は何かに納得をしたように微笑んでいた。

 「わたしはしたよ、願い事」という意味の、言葉。


 ※


 「ようやくリティが寝付いたから暇つぶしに来た」

 ラウドがとことことやってきて、ぼくとマイノの前に座り込んだ。尻尾をくるりんと回して四ツ揃えにされた脚にさっと添える。背筋をピントのばして、開いた猫の瞳孔でぼくを見つめた。

 「精霊中核市ではごめん、ノイズィが何か仕掛けてくるとは想定していたけど、思ったよりも早くて、大胆で、直接的だった」

 「……いくらなんでも気を抜きすぎだったんじゃない、ラウド」

 「申し訳にゃい」

 本当に反省をしているのかどうかわからないが、いつもはピンと立っている三角の耳がへたりと垂れている。おっ、と思った。これは珍しくラウドより高い立ち位置に立てているような気がしたのだ。ヤガーの魔法具店から運ばれてこれで三週間に入ろうとしているが、この生意気な喋る猫とまったく喋らない魔女については、まだわからないことのほうが多い。聞くなら、今なのかもしれない。

 「ノイズィから色々聞いた。ラウドがなかなか気づいてくれなかったからね。話す時間はたくさんあった。『帝龍』、『騒動魔女』、精霊中核市を救った『静寂魔女』。そして当然、ぼくは捕虜として非情な尋問を受けたけど、決して口を割ることはなかった。なにせ、知っていることがほとんどないからね」

 「……へえ、そこまで話したのかあいつ。ウィスク、君は随分気に入られたんじゃないか?」

 にやにや顔でそういうラウドだったが、たっぷり10秒間黙っているとまた居心地悪そうにしょんぼりした。

 「さて、結局リティが助けに来てくれたけど、その問答も憶えてる。リティは『わたしはまだ精霊中核市に移住するつもりはない。でも、あなたたちに迷惑はかけないから、ウィスクを返して』と言った。というか、君がそう代弁した。まだ、ってなんだ? リティは何を待っている?」

 「言ったとおりの意味しかないよ。ボクはリティの表情を読んだだけだ」

 「知ってるんだろ?」

 「さぁね、あんまり乙女のプライベートに踏み込まないことだ」

 ぼくが歯がゆくて唇を噛んだ。役には立っていないが、ぼくだって立派なリティの使い魔、魔箒であるはずだ。それに、リティが精霊中核市に移住しないが故にあんな恐ろしい目にあったのだから、ぼくにだって知る権利はあるはず。けれど、目の前の黒猫は唯一絶対の門番であるかのように、凛と立ちふさがるばかりだ。ラウドはしばらく沈黙を保ったが、やがて気まずそうに口を開いた。

 「君を巻き込むかたちになってしまったのは本当に反省している。でもね、リティが『静寂』を保っていることは、いま起こっているすべてにつながってくる鍵なんだ。精霊中核市への移住、魔箒の購入、リティの迷い、すべてが一本の線で繋がっている。決断をするのはリティだ。君がいずれリティから真実を話されない限り、ボクは何も話すべきことはない――。でも、リティはいまの精霊中核市を嫌っているんだ」

 不意にノイズィとの対決が思い出された。都市の素晴らしさを語るノイズィに対して、リティは氷のような表情で『それは――』と告げた。そのあとぼくの全身を使った決死の一撃が決まったから続きを聞くことはなかったけれど、明らかにリティは魔女の楽園たる精霊中核市にいい印象を持っていなかったように思う。魔導書はあり、通り名を持つ魔女ならば一定以上の暮らしが見込め、法則の改変強度が緩い聖地。ノイズィが煩わしいとはいえ、それは理由ではないような気がした。

 「精霊中核市は法則改変能力を持つものを集めている。意志量子力学ウィルクァンタムコンプレックスセレオムの力場を形成するために。あの円形の城塞都市はそれがそのまま回路を形成している。わかりやすく言えば、魔法陣のようなもの。意志の力を適切に増幅して、ラティナリオ大聖堂に集中させる。あの戦いでリティが苦戦していたのも、あそこがノイズィにとって有利なフィールドだったからだ」

 「知っているよ、だから魔女にとって魔法を使いやすい場所に――」

 「それにしたっておかしいんだ。精霊中核市は、というか、ラティナリオは何かを焦っている。都市として許容量を超えてまで、各地から能力のあるものを呼んでいる。ほんの少しでも能力があれば、招聘とはいうものの、神官部隊でむりやり連れてきているというのが現状だ。君も見たろ、あの裏路地を。彼らは無理やり連れて来られたうえに、あそこで暮らすほどの能力を持たないものたちなんだ。そういったものたちまで、ラティナリオは都市の魔法陣を稼働させるためのエネルギーとしている」

 「……リティはそれを嫌って」

 「彼らの目的はまだわからないけれど、魔法が使いやすいフィールドだからとか、魔導書を手に入れやすいからというだけの理由で、簡単に移住できるようなものじゃない。ましてや強力な力を持つ『静寂魔女』はね。ほんとはもうひとつ理由はあるんだけど、これがリティの表向きの理由。ラティナリオの横暴さ。様子を見るために、こうして付かず離れずの場所で監視をしている」

 ラウドはここまで喋って、はぁっとため息をひとつついた。

 「ついつい喋りすぎた。後ろめたさがあるといけないね。ま、これくらいならリティに怒られることもないだろうけどさ」

 欠伸をしながら、リティの家に戻っていくラウド。

 「それじゃあね、おやすみ」

 「って、おい、魔箒を発注した理由は!? ぼくは何のためにリティに呼ばれたんだ!?」

 「そればっかりはお口にチャックだ」


 ※


 「随分な目にあったそうじゃない、ノイズィ」

 「たまたま九死に一生を得たよ」

 かつ、かつ、とぼくの足音が反響して耳に障る。『騒動魔女』ノイズィはこんな静謐な空間は嫌いなのだ。よくラティナリオ大聖堂での父の礼拝に付き合わされたけど、あれほど苦痛なことはなかった。気になることを、気の向くままに、気が済むまで。それがぼくのモットーだった、けれど、さすがにこの空間で騒ぎ立てるほどぼくは愚かではない。

 無限にも思える闇へと繋がる螺旋階段。精霊中核市に住まうすべての『意志』を持つ者たちのベクトルの中心、ラティナリオ大聖堂。その地下深くにこのような茫漠な空間があることを知るものはほとんどいない。そしてその奥底に潜む、ひとりの魔女のことも。ぼくのわりといい目でも彼女の姿はまだ捉えることは出来ない。冥府へ続くかのような階段をぐるぐると回るのみで、ぼくの記憶が正しければ、まだあと半分ほどは降りていかなければならないはずだ。

 まさに地下牢。それほどまでして守らなければならないほど彼女は、この精霊中核市にとって必要な存在であり、それほどまでして遠ざけなければならないほど彼女は、この精霊中核市を揺るがすほどの力を持っている。ラティナリオの教義を右から左に聞き流していたぼくであっても、父からこのことを伝えられたときには震えたものだ。

 「あなたを見ていると飽きないわ」

 「でも君にはこの結果が見えていたわけだよね」

 「……どうかしら」

 地の底から彼女にしては珍しく明るい声が響く。この『墓所』に入れるのは父とぼくのみ。ラティナリオ大聖堂の血統だけだ。父は彼女を畏れてここに立ち入ることはない。長いラティナリオの歴史の中でも、こんな気軽にここに入り浸る者もいないだろう。ぼくだって怖くないわけではない。けれど、ぼくの好奇心は彼女を放っておけるようには出来ていない。こんな『騒動』を起こしてくれそうな存在は、どこを見たっていやしない。

 「久しぶり、『騒動魔女』さん。変わらないわね」

 「あぁ、久しぶり、『天計魔女』さん。君こそ変わらない」

 ラティナリオ大聖堂地下深くに存在する秘密の小部屋、『天計の墓所』。通称カタコンベと呼ばれるここには、『天計魔女』と呼ばれる少女が一人で暮らしている。陽の光は当然当たらず、周囲を冷たい石で囲われたイドの底だったが、少女は平然と微笑んでいる。一糸纏わぬ姿で、四肢を円環煌めく鎖で繋がれながらも、少女は微笑む。

 「恋の相談かしら?」

 「いいや、単に世間話さ」

 ぼくはフリルのスカートの裾を気にしながら、最後の石段に腰掛ける。ここでこうして彼女と話すのは何度目だろうか。はじめは怯えていたような気もするが、次第にこうして雑談をするようになった。ラティナリオ大聖堂の跡取りと、彼女はこの街で唯一対等に話をしてくれる存在だったからだ。かちゃり、と彼女を縛る鎖が音を立てる。

 「ノイズィ、あなたの弄した小細工の首尾は?」

 「上々。箒君のおかげでね」

 ぼくの笑い声が地下のイドに反響する。

 「それにしてもどうして箒なんて買ったんだろうね、『静寂魔女』は。何か企んでいるとは思えないけど」

 「リティにはリティなりの苦悩があるのよ」

 「知ったような口ぶりだ」

 「『天計魔女』ですもの」

 天地に存在するすべての構成要素の位置と運動量が把握できれば、あとは膨大な計算をこなすだけで、今後起こるすべての事象を予言することができる。歴史が失われる前、そのような思考実験をした学者がいたという。門外不出の歴史書だから、一部の神官しか知らない事実だけれども。

 意志量子力学ウィルクァンタムコンプレックスセレオムに基づく力場は、ラティナリオ大聖堂を中心に形成されている。この魔法都市に優秀な魔女が集まれば集まるほど、この『墓場』に法則の歪みが集中する。都市ひとつ、住民数十万人を生贄とした魔法陣のその中心で、この世界のあらゆる構成要素にその腕を伸ばし、計算をし続ける魔女。

 「けれど、まだこの都市には力が足りない」

 「そのためにあなたのお父様もお祖父様もその前もその前も尽力してきたのだけれどね。能力のあるものないもの問わず、半ば都市としてのキャパシティを超えてまで、この精霊中核市に力を蓄えていった」

 「だが、ぼくの時代には『静寂魔女』がいる。彼女は特別だ。絶対に精霊中核市に招いてみせる。ノブレス・オブリージュだ。あれほどの能力を持ってなお、精霊中核市に貢献しないなんて、自分勝手がすぎる」

 くすくすと少女が嗤う。

 「漢としての面子と大義と性欲が同じベクトルを向いてるなんて、幸せものね、ノイズィは」

 「……」

 「『騒動魔女』が黙りこくるなんて、かわいい」

 『天計魔女』がいつからここに幽閉されているのかは、もう誰にもわからない。彼女がヒトと呼べる存在なのかどうかも。わかるのは、彼女という化け物を肥えさせるためにこの精霊中核市という街が存在し、彼女を制御するため、ラティナリオ大聖堂という施設が存在しているということだけだ。そして、いまもなお、『天計魔女』は完成していない。が、この地下深くでも簡単な能力は発揮できるようで、外界の様子は千里眼のように把握をしている。ときにそれは巫女の託言として、ラティナリオ大聖堂にもたらされ、精霊中核市の運営に還元される。

 「さて、真面目な話をしましょうか。例の件。またひとつ、村が滅んだわ。四日前のクリスマスイブイブ。深夜十一時四十分。場所は、ゼーリガー地方オルバース。被害規模も手法もいままでと同じ、村には数えきれないほどのクレーターしか残っていない。緯度と経度は必要?」

 「いや、場所はわかる。精霊中核市からみてバルバロイ地方の手前だろう? しかし、ラティナリオの神官の探査網には引っかからなかった。それほどの規模で魔法が展開されて、ここで歪みを検知できないはずはない。空間における法則の連続性は断絶するわけにはいかないから、余波のようにここまで届くはず……」

 「進歩しすぎた魔法は科学と区別がつかない――、そうね、法則の改変といえど、その背後にある黄金率までは手を加えられない。そこまで書き換わってしまっては世界が崩壊してしまうもの。むしろ黄金率が、その表面の法則に対して一定の改変を許容していると表現したほうが正しいのかもしれない。ノイズィ、あなたの言うとおり、いくら物理的に距離がかなりあるとしても、オルバースでの法則改変がここで検知できないのはおかしいわね」

 「それも厳重警戒体勢を敷いているにもかかわらずだ。もうこれで大小合わせて十六ヶ所目だぞ」

 『天計魔女』はぼくを母のような目で見、小首を傾げた。

 「この世界で何が起ころうとしているのか、それを突き止めるのはわたしの託言ではないわ。まさにそれはいずれラティナリオを担うノイズィの仕事。たとえ時間はかかろうとも、きっとあなたは真実を目の当たりにする。きっと悔やむこともあるでしょうが、強くおなりなさい」

 「……君は見て見ぬ振りをするのか」

 「わたしはもう多くの悲劇を見過ぎたから」

 彼女はいつもこうだった。ここでぼくが噛み付けば、『わたしと同等の力を持っていないものが、わたしが力を行使しないことについて誹るのは、子供のやることだわ』と言われるに違いない。精霊中核市、ラティナリオ大聖堂は、彼女のために存在するが、彼女はぼくたちのためには存在していないのだ。知っていることをすべて教えろと、こちらが実力行使に出られないことを彼女は知っている。

 「神官の人員を増強する。ヤガーにも発注をかけて魔法具の充実を図り、戦力を強化する。アカデミアからも学徒動員を。次はここが狙われる可能性もゼロではないからね。さらに、『静寂魔女』リティにも引き続き干渉し、精霊中核市に引き込む。いいね、『天計魔女』」

 この都市のすべては『天計魔女』のために存在する。故に、この都市のあらゆる方針は彼女の承認が必要だった。承認を行わずに事業を為そうとした為政者はいたが、すべて彼女の干渉で無に帰していったという。父が彼女を畏れるのはそのためだ。

 「あなたにラティナリオの加護を、『騒動魔女』」

 やることは多くある。いまの託言を父に伝えるのはもちろんのこと、対外的な業務は基本的にぼくに一任されているのだ。戦力の増強。頻発している事件への対応。わからないことは多く、対処しなければならないことは数え切れないほどある。ぼくは拳を強く握り、踵を返そうとしたが、彼女が不意に口を開いた。

 「ところで、『運命魔女』はどうして精霊中核市に住まわないのかしら?」

 「ヤガーのことかい? それなら、魔法具の製造に必要なものがここにはないからって」

 「それをここに持ち込むということはしないのね?」

 「企業秘密だからって教えてもらえなかったけどね」

 彼女を縛る鎖が、しゃりんと鳴った。

 「残りの通り名を持つ魔女は?」

 「『天計魔女』の君に、『騒動魔女』のぼく。精霊中核市の外にいるのは『運命魔女』ヤガーと『静寂魔女』リティ。街にはあと、『菓子魔女』レーヌと『錬金魔女』メギストスの居所は把握している。行方不明が2人」

 通り名を持つ魔女は8名存在する。特殊な生い立ちを持つメギストスは例外として、基本的にはその桁外れの意志に人々が畏怖の念を込めた敬称だ。意志の強さは、そのまま法則に対し強い説得力を持つこととなり、それは即ち法則の改変たる魔法の情報的強度に等しくなる。この8名の中の序列は相性もありはっきりとはしないが、直接的な戦闘ではぼくかリティがトップに立つことは明らかだった。

 行方不明もいるが、この事件に対して何らかの関係を持っているとは考えづらかった。いずれも直接的な攻撃ではなく、もっと別のベクトルに特化した魔女だからだ。ぼくやリティでもできないようなことができるとも思えない。となると、この他に、それに匹敵するあるいは凌駕する魔女が存在するということになる――。

 『天計魔女』はひとつ曖昧な笑みを見せ、口を開いた。

 「そう。頑張ってね、ノイズィ」

 「ああ、また来るよ。ラプラス」

 そろそろ動き出す時間だからね。

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