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その他の短編

起きたら庭にダンジョン出来てた

作者: 笑うヤカン

10月21日 曇りのち雨

なんか、起きたら庭にダンジョンができてた。

ダンジョンとしか言いようが無い。意味わからん。


10月22日 曇り時々雨

きめー! ダンジョンの中に入ったらなんかいた!

なんかドロドロした奴。何だあれ? 超キモい。


10月23日 曇り

なんか出てる。ダンジョンの入り口に超でてる!

何あれ? 生き物なの? 馬鹿なの?

頭は犬で体が人間とかありえないからマジで…なんかガタイ良いし


10月24日 曇り

今日も犬人間が入り口から顔を覗かせている。

犬人間はどうやら、ダンジョンの入り口からこっちには出てこれない模様。

入り口で唸ってる。


10月25日 晴れ

また犬人間が入り口からこっちを見てる。

頭は犬だから表情とかはわからないが、超凝視してる。

どうも俺の食ってる飯を見てるみたいだった。

試しに残飯やったらすげー勢いで食ってた。


10月26日 晴れ

なんかこの異常な状況にも慣れてきた。相変わらず犬人間は

入り口で唸ってる。エサをやると静かになるみたいだ。

単にハラヘリさんかアイツは。


10月27日 快晴

なんか段々犬人間が可愛く見えてきた。エサをやると、まんま犬みたいに

鼻面突っ込んで食うのな。頭以外北斗の拳みたいな体してるくせに。

手を使え、手を。


10月28日 雲ひとつ無い晴れ

犬人間をポチと名づけた。ポチも俺の顔を覚えたらしく、顔を見せると

座って待ってる。頭以外ジャギみたいな体してるくせに。


10月29日 晴れのち雨

ポチも大分慣れてきて、撫でたりしても全然気にしないようになった。

お手とかするし可愛い。頭以外雲のジュウザみたいだけど。


10月30日 晴れ

ちょっとダンジョンの中に入ってみようかと思う。


10月31日 晴れ

ホームセンターで役に立ちそうなものを買い揃えてみた。

これからダンジョンに入ってみる。

日記が途絶えたら、俺は死んだものとみなしてパソコンのHDDは

焼却処分して欲しい。


11月1日 晴れ

ポチつえええええ!

俺がダンジョンに入ったらついてきてくれたんだけど、大正解だった。

あの変なドロドロした奴とか、動く骨とか出てきたけど圧勝!

ポチと同じ犬人間も出たけど、ポチはボス犬だったのか襲ってこねーし


11月2日 晴れのち曇り

豚の顔したオッサンに遭遇、激戦になる。ポチが相手の攻撃を食い止めて

くれてる間に、俺が後ろからホームセンターで買ったスコップでぶっ叩いて勝利。

ハート様ごときがジュウザに勝てるわけ無いだろ、常識的に考えて。


11月3日 曇り

地下2階への階段を発見。

早速降りてみると、どうやら出てくる面子が1階とは違うようだ。人間っぽい化け物が

沢山出てきた1階に比べて、2階はどろどろしたヘドロみたいな奴とか、緑色のガス

みたいなくせに生意気にも動いて襲い掛かってくる奴とか、不定形のが多い。


まあ、全部掃除機に吸い込んだので何の問題も無い。

ダイソン、それは吸引力の落ちない唯一つの掃除機。


11月4日 晴れ

昨日吸い込んだゴミを捨てようとしたら、なんとヘドロみたいな奴が

まだ生きてた。ゴキブリもびっくりの生命力だ。

あんまり気にせずそのままゴミ袋に入れて捨てた。

これって燃えるゴミでいいんだろうか。


11月5日 晴れのち曇り

3階への階段を発見した。どうも、階層ごとに出てくる生き物が変わるらしい。

この階は食虫植物とか、デカい動く樹とか、近寄ると胞子を出すキノコとか

植物っぽいのばっかりがいる。


全部火をつけて燃やした。

ジャングルとかで、どれが普通の植物でどれが化け物なのかわからなきゃ

怖いかも知れんが、石畳の迷宮にいちゃ駄目だろ、こいつら。


11月6日 曇り

4階に到着。今度はやたら虫ばっかりいる。しかもやたらデカい。キモい。

何匹かはスコップで叩き殺したが、数が多すぎるので逃げてきた。

どうでもいいが、ポチが何かをもぐもぐしている。見なかった事にしたい。


11月7日 晴れ

バルサンを焚いてみた。効果はてきめん、そこかしこに虫がひっくり返ってる。

虫ごときがライオンに勝てるわけはないというわけだ。

おはようからおやすみまで暮らしを見つめているだけの事はある。


ポチが虫の足をもいで喰おうとしていたので止める。


11月8日 曇り

無人の野を進み地下5階へ。お次の敵は虫より気持ち悪い、ゾンビどもだ。

これなんてバイオハザード? 銃を寄越せ、出来れば弾丸無限のロケランを。

と思ったけど適当に般若心経の一節を唱えてみたら苦しんでた。弱っ。


11月9日 曇り

実験の結果、塩ばら撒き、聖書の一節、コーランの一節でも苦しむ事がわかった。

強いとか弱いとかおいといて節操なさ杉だろ。


ちなみに一番効いたのは「伯方の塩」。


11月10日 曇り

実験の結果、つのだ☆ひろのゴスペル風般若心経、安産祈願のお守り、

じゅげむじゅげむごこうのすりきれかいじゃりすいぎょの以下略でも

苦しむ事がわかった。


もしかして何でもいいのか?


11月11日 曇りのち雨

いい加減ゾンビで遊ぶのも飽きたので地下6階に下りると、背中に蝙蝠の

翼が生えたいかにも悪魔でござい、みたいなのがいた。


とりあえずつのだ☆ひろのゴスペル風般若心経聞かせておいた。


11月12日 雨

しばらく日記を書きたくない……





11月15日 晴れ

ようやく気持ちが落ち着いてきたので書く。ポチが死んだ。

最近日記には出てなかったが、つれていたのだ。

7階に足を踏み入れた時の事だ。そこはデカい犬やらウサギやらカバやらが

いるフロアだった。

ゾンビや悪魔みたいに弱点があるわけでもなく、餌付けも効かない。

ポチは、俺を逃がす為に敵の群れに飛び込んだ。



絶対許さん。


11月16日 血の雨

ロードローラーだッ!

WRRRYYYYYYYYY!!


でかいカバとか頭が三つある犬とかヤギの頭のあるライオンとか

全部轢き殺してやった。

この迷宮の通路が無駄に広くて良かった。


11月17日 晴れのち曇り

土建屋の知り合いからロードローラーを借りて一気に進んだ。

この迷宮の通路はロードローラーの横幅より多少広いくらいなので

敵がなんだろうと踏み潰していける。


8階は土の塊とか、火の塊とか、水の塊みたいなのが蠢いていた。

何でそんなのが動くのか良くわからんが、ロードローラーで轢いたら

動かなくなったのであまり関係ない。


11月18日 曇り

ちょっと困った事になった。

でかい。でかい。でかい。なんだあれ。


9階は巨人ばっかりだ。ジャイアント馬場換算で2.5ジャイアント馬場から

5ジャイアント馬場くらいのでかい人間がうじゃうじゃいる。

腰ミノとでかい棍棒くらいしかつけてないから、頭は悪そうだが

ロードローラーで轢けそうもない。


何より、その格好であぐらをかくな。見える。見たくもないものが見える。

でかい。なんだあれ。


11月19日 雪

恐る恐る近づいてみたら、あいつら全員立つと天井に頭ぶつける事が判明した。

当たり前だ。天井の高さ1.5馬場くらいしかない。

馬鹿かあいつらは。何でこんなトコいるんだ。


11月20日 晴れ

ついに地下10階に到達した。いい加減この辺りが最下層であってほしい。

この階層の敵は、流石に俺でも知ってる有名な相手だ。

背中についた羽。これでもかと言うほど色んなトコに突き出す棘。

全身を覆う鱗。尻尾と牙。


どう見てもドラゴンです。本当にありがとうございました。



まあ、全部寝てるわけだが。

日の光の全くささない地下深く、季節はおりしも冬。昨日初雪が降った。

そりゃ冬眠するよな、トカゲだし……


11月21日 カエル

この日記も一月を過ぎた。

俺はとうとう、ダンジョンの最奥部に着いた。

扉には「邪悪なる魔術師 営業中」とかいう札がかかっている。

隣どころか庭に勝手に引っ越しておいて蕎麦もないとは

ふざけた野郎だ。


もしかしたら、これが最後の日記になるかもしれない。

俺が帰らなかった時には、これを読んでいるあなたに頼みがある。



俺のPCを、完膚なきまでに破壊してくれ。

くれぐれも、くれぐれもパスワードハックして中を見たりしないように。

これはフリじゃない。繰り返す。これはフリじゃない。

大事なことなので二回言いました。

どうか故人の最後の頼みだと思って聞き届けてくれ。









12月31日 晴れ


「懐かしいな……」


年末の大掃除。深く険しい押入れの中を探索していた俺は、

古い日記帳を見つけ出した。

もう10年も前につけていたものだ。


あの日、ダンジョンの最奥に突入した俺を待ち受けていたのは、

のんびりとお茶をすする一人の魔法使いと、その隣で美味そうに

餌を食べるポチの姿だった。


「害虫駆除の方ですね、ありがとうございます。

 家から出ることもできずに困っていたんですよ」


そう笑いながら言うその魔法使いに俺はすっかり毒気を抜かれ、

茶菓子をご馳走になって家に帰ったのだった。


その風変わりではた迷惑な隣人がやがて友人になり、

そして妻になるとは思いもしなかったが。


「ただいまーっ」

「あなた、今かえりました」


買い物から帰ってきたのだろう。

玄関から、今年4つになる子供の声と、最愛の妻の声が聞こえる。


幸せというのは、こういうものなのかもしれない。

ぼんやりと、そう考える。



どこか、雲のジュウザに似てきた我が子の筋肉からはあえて目を

逸らしながら、俺は家族を迎えた。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 一つのダンジョンを攻略する様子が、日記という形にすることでぎゅっと凝縮されている いかにもダンジョン! っていう構成のダンジョンに、なんで主人公は突っ込んでいったのかw 逃げなさいよ! あ…
[一言] …ん? ポチにNTR?
[良い点] とっても面白かったです! こういうタイプのは初めて読みました(*´ω`*) ダイソン……笑笑 そこが一番ウケました笑笑 いや、ロードローラーといい勝負か……笑笑 とにかく、楽しかった…
2013/10/27 23:14 退会済み
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