21)でも許せない
本当の罪
白い空間に声がこだました。
-どうして?ー
目の前に深い緑色の長い髪の毛をした人が立っていた。
ーどうして私だったんだろうねー
振り返った人物は中性的な顔をした人だった。
ー本当は知ってたんだー
《なにが?》
-普通の果実じゃないってこと-
その人は私に近づいてきた。
ーでも騙されたフリをしたんだ。私は縛られた聖人なんだよ、一生この森から離れることが出来ない、形は人に近いのにこの森には人がなかなか入ってこれないー
周りは、暗森の風景に変わっていた。
-聖獣の森にでも住んでいたら、出れたんだろうけどね。でも、周りは魔獣ばかり、増えすぎず減らしすぎずに狩らなくちゃいけない-
私はただ、その人の独白を聞いていた。
-彼に出会ってから何度も思った。こんな森なくなってしまえばいいって。でも駄目なんだよね、光りと闇のバランスを取るためには-
目線をそらしたその人は遠くを見ていた。
- 人語を話しても、彼らは魔獣。人に変化しても魔は魔
聖人も人じゃない
それでも、遠くでみてるだけでよかったんだ、契約をすることも叶わないから
それに敏感に気づいたあいつが果実をだしたとき、思ったんだ。
これを食べたら、人になれるかなって。
普通の果実じゃないとは思ったけど、まさか黒い果実だったなんてね。
私は穢れて、狂気に飲まれた。
これは私の罪なんだよ。
聖人としての役割を無下にした私の
いっぱい人を殺してしまった。
怖くて、怖くて、最後は意識を手放したんだ。
あいつに体を渡してしまったんだ。-
《あなたは・・・》
-虚無しかなかった私が、半身を見つけたときの喜びを君は分からないだろ?
ねぇ、ラルクのこと好き?-
《わからない。でも、嫌いじゃないと思う》
-憎い?-
《ぁあ・・・少し・・憎いかもしれない》
-ふふふふ。でも、君がどんなにラルクに苦しめられ利用されても羨ましいよ。
だって側にいられるじゃないか、繋がれるじゃないか
どうして彼が私の半身だったんだろうね?
今でも思うよ。
出会わなければ、こんなことにならなかったって
あの果実を受け取ることも、あいつが作ることも無かったって
あぁ!私も、ときどき彼らが憎くなる。
これが穢れてしまったせいなのかな?-
その人はそっと私の首に触れた。
-でもね、一番憎いのは自分自身-
手に力を込められ絞めあげられた。
「ぁっ・・・・」
-弱くて、脆くて簡単に壊れてしまった私自身
犯した罪は消えない・・・生まれ変わっても
だったら犯した本人が消えるのが一番でしょ?-
《やめて!!死にたくない!!》
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はっと目を開けると目の前におばあさんがいた。
「ナミ!大丈夫か!」
「お・・・ばあさん」
「よかった」
おばあさんは安心したように奈美の手を握り締めていた。
「・・ここは?」
周りを見渡すとベットに寝かされているようだった。体中ギシギシと痛んでいた。
「部屋じゃよ。体はまだ動かさんほうがいい、傷は魔法で塞いだにすぎん、無理に動かせば傷口が開く」
ぼーっとしたまま奈美は先ほど見た夢を思い返していた。
あれは、ゴディバ(わたし)だったの?
ふともの寂しさを覚え、視線をさまよわせた。
なんだか落ち着かない
それに気づいたおばあさんが、頭をなでながら言った。
「半身であるラルクがいないから不安なんじゃろ?」
「・・・ラルク」
あぁ、そうか彼が酷く遠くにいる感じがする。だから不安なのか
自分の心に納得し、奈美は先ほどまで起きた惨劇を思い出した。
「!魔獣は?!」
「今始末してる最中じゃよ。お前さんはここで待機じゃ、ヘタにでて足手まといになってはいかんしな」
「ラルクは?!ラルクはなんで遠くに行っているの?!」
「・・・あれだけ強い魔獣を倒せるのはラルク意外おらんじゃろ、下手に周りのものが加勢しても邪魔になるだけじゃからな、誰にも邪魔されない場所に飛ばしたんじゃよ」
やめて、やめて
心の中で叫んでいる自分がいた。
お願い、やめて
緑色の髪の毛をした人が泣いてるような感じがした。
それは自分自身