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19)犯した罪は

気がつくと、そいつはいた。

暗森の中、近づいてくる獣は命知らずな低脳な魔獣ばかりだったが

そいつだけ、赤茶色の狼の魔獣だけは違った。


理由はわかっている、聖人である私を闇に落とそうとしている

「無駄だよ」

腕を払うだけで、自分を取り巻く闇を払う。


赤茶色の狼の魔獣は舌打ちをした。

人間らしい動作に眉根をよせた。

「・・・人間を食べたのか。だったら言葉がわかるな」

「フン、ソコラヘンノ ザコト イッショニスルナ」

「雑魚の方がかわいいさ、お前。今度人を食べたら狩るからな」

「オマエジャナイ オレニハ ディルポ トイウナガアル」

「・・・名まで奪ったのか」


知能のある魔獣は近づいても攻撃などしかけない、それなのにこのディルポと名乗った魔獣だけは攻撃を仕掛けてきていた。

会うたびに、ディルポが力をつけていくのが解った。

そのぶん、攻撃の回数も減ってきていた。


---


言葉も流暢に話せるようになってきたころ、ディルポはきいてきた。

「オマエ、人じゃないノカ?」

「なんだ?いきなり」

「他のヤツラがいってた。ゴディバはセイジンで人じゃないト」

「そうだよ。私はこの森を管理する聖人だ。」

「人トどうちがう?」

「体の特徴でいうと性別がないんだよ。あとは、闇にのまれないとかね」

「フーン」

「ディルポ、お前だいぶ賢くなったな」

「ふん。・・・・お前はずっとこの森にいるのか?」

「あぁ。一生この森にいることが私の役目なんだよ。」



 なら、なんで遠くを見るんだ?


 あっちにはなにがある?


 あっちはリンンゴクとかいう森があるんだろ?

 僕より強い魔獣がいってた。


 リンゴクとかいう森になにかあるのか?



---


ディルポは人型に変化できるようになった頃、ゴディバが何をみているのかがわかった。

人の目線でみると、オレンジ色をした点が森の中を動いていた、その周りにも点がいくつもあった。

それは人間が森の中であそんでいるようだった。


ゴディバの目線はいつもオレンジ色をした人間をみていた。

そいつは、他の人間よりも飛びぬけて魔力が高いことが遠めでもわかった。


「気になるのか?」


「ん?」


「あのオレンジ色の髪をしたやつ」

「ふふ、飛びぬけて強いよね。見ていておもしろいよ」


 なぜ、あいつばかりみる?ただの人間じゃないか

 お前はこの森の聖人、人間じゃない

目線のあわないゴディバにディルボは冷たく言った。


「お前は人間じゃない」

「しってるよ」

「お前は、男でもおんなでもない、あの人間とは一緒にはなれない」

「ははは!お前はおかしなことを言うな?なぜ私があの人間と一緒にならなくちゃいけない?」

そういうとディルボを残してゴディバは暗森の中に戻っていた。


 だったらなぜ、あの人間ばかり目で追う!!

 僕をみろ!僕たち魔獣を森をみてろ!


 いつか、あの人間と一緒に出ていくんじゃないのか?!


 だから・・・・


---


見晴らしの良い樹の上から森を眺めていると隣国から兵士が流れ込んでいた。

「人間が森をわたってく。よくあれだけ魔力の強いものを集めたな」

「始末しないのか?」

横にいたディルボが聞いた

「私の役割じゃない、それに人間は殺さない」

「なぜ?」

「そういう決まり」


 知ってるよ。穢れないために狂わないために聖人には決まりごとがたくさんあるでしょ?


「・・・あの人間がいるからじゃないのか?」

軍のなかにオレンジ色の髪をした人間がいた。

それに気づいたゴディバが一瞬優しい笑みを浮かべた。


「違うよ」


 僕は知ってる。


「半身なんだろ、あいつ」


 あいつと契約をしたらお前はこの森を捨てるんだろう?


ゴディバはディルボを見て、笑った。

「嫉妬してるのか?」


 あぁ!この感情が嫉妬というのか。なら僕はしてるさ、あの人間に!


意外に可愛い所があるんだな、そう言ってゴディバは樹から下りようとした。

その背中が、いまにもあの男のもとに向かってしまうようでディルボはゴディバを抱きしめていた。

「ディルボ?」

「行くなよ」

「何いってるんだ?私はどこにも行かないよ?」

そういって、ディルボの頭をなでた。


 あいつのもとには行かせないさ。


ディルボはポケットに入れていた実をゴディバに渡した。

それは赤いチェリー

「やる」

「チェリーか、もうそんな季節か~ありがとう」

うれしそうにゴディバは受け取り口に含んだ。

口の端から垂れた果汁は


黒い汁


「僕のゴディバ。誰にもやらない」


赤いチェリーの幻影を見せて黒い果実を渡した

かみ締めた瞬間にゴディバの表情が変わった。

「?!」

すかさずディルボは必死で口を飲み込むまで押さえた。

「っ!!!!ディルボ!!!」

「あんな奴に取られるなら!僕が壊してやる!!黒い果実には性別を変えることも出来るんだよ!性別の無い聖人に性別ができるってどういうことかわかる?!穢れちゃえば僕でも君を食べれるんだ!」


「ぅぅぅぅぁあああ!!!!!」

「さぁ!穢れて!!誰にもやらない!僕が血の一滴まで食べてあげる!まずはあいつらを片付けようか!!」



聖人を穢した魔獣はどうなる?




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