17)マスカレード
気がついたら、お気に入りに登録してくださっている方がたくさんいてびっくりしました。
こんな拙い文章を読んでくださりありがとうございます。
うれしいやら恥ずかしいやら
(。_。*))) モジモジ…
お披露目パーティーは何事もなく進んでいた。
奈美は、ラルクの横に寄り添うように立ち、終始笑顔を浮かべていた。
ぁー早く終わらないかな。口角が引きつってきて痛いだけど
そんなことを思いながらも。
パーティーも終盤に差し掛かり、城に呼ばれた旅の一座の演目が始まっていた。
魔法と曲芸を合わせた技は、ファンタジックな世界を繰り広げ、奈美は夢中で見ていた。
その様子をラルクは笑顔で見つめていたが、従者に何事か耳打ちされラルクは静かに席を立った。
宙に舞う曲芸師の姿は妖精のような衣装はキラキラと光る素材だった。
薄暗い会場の中、曲芸師たちの場所だけ光り輝いていた。
そんな中空中に浮かんでいた蒼い髪の青年が、奈美の前に舞い降りた。
手にはガラス細工のような花束を持ち、奈美に捧げた。
「麗しい皇帝陛下の花嫁どのどうぞこれを」
奈美は差し出された花束を受け取りお礼を言うために口をあけるが、言葉は出なかった。
目の前には金色に光る獰猛な瞳。口付けをされていると思ったときには、口の中に異物が入れられ吐き出す前に中で潰されてしまい、思わず飲み込んでしまった。
それは、ブランデーのような甘い香りと苦味ふわりとした感覚、まるで酔ったような感覚陶酔感。
「最初からこうしておけばよかった。」
曲芸師の青年は口の周りが黒い汁で汚したまま笑顔で言った。
奈美は呆然と自分の口に触れ、手をみた。青年の口についていたものと同じ。
口移しで入れられたものは、
黒い果実。
周りが騒然となっている中、衛兵が青年に剣を向けるがヒラリとかわした。
悲鳴が飛び交い、衛兵達が青年に剣を向け逃がさないように取り囲んでいた。
「きゃぁああああああああああああああああ」
奈美は叫び両耳を抑えた。
ガンガンと頭に響く血流の音、目の前は真っ赤に染まっていた。
周りが奈美を見る中、青年は灰色の髪の毛をした男にかわっていた。
「あはははははは!!!!!さぁ!殺せ!!狂え!!」
体が焼けるように熱い。
喉が乾く。
体中に走る狂気。
奈美の視界には別のものが写っていた。
会場の人間が、どんどん壊れた人形のような姿に変わり果ていた。
口の中にはさびた鉄の味が広がる。
人を虐殺していく前世の自分、バラバラな人の一部だったパーツを持ち上げる
周りは壊れた人形が散らばっている。
「い・・・や・・・」
聞こえるのは狂気に狂った自分のような声と助けを求める声
”肉を切り裂きたい!”
”やめろ!嫌だ!”
”壊したい!”
”やめてくれ!”
”もっと叫べ!”
”見たくない!!”
”もっと血を!!”
”もっともっともっと!!”
”いやだいやだいやだいやだ!!!”
”俺を殺してみろ!”
”誰か!俺を殺してくれ!”
涙を流す奈美の瞳は、狼の魔獣を捉えた。
「ねぇ、今どんな気分?」
くすくすと笑う人型の狼の魔獣の声だけが鮮明に奈美に届いた。
「・・・く・・るし・・ぃ」
「ねぇ、楽になる方法を教えてあげるよ?」
「い・・・や・・・」
奈美は拒絶を示すが
「目の前の奴らを殺せばいい、血の香りに恐怖。それが欲しいんでしょ?」
悲鳴があがり、血の香りが充満した。
それは奈美の鼻腔にも届き、魔力が奈美の周りで充満し始めていた。それは刃物のように鋭く近づけば力だけで切られてしまうような。
「っぁ・・・」
奈美はデジャブーを感じていた。
これは、どこで見たこと?
狂気に彩られた魔力を開放しないように、身に沈めるようにするがその意識もむなしくまた、悲鳴と濃くなっていく血の香りに意識が遠のきそうになってきていた。
このまま意識を失えば楽になるのだろうか?
いや、ならない
意識を失えばあいつの思うつぼ・・・
つらい
助けて
欲しい
「ナミ!!!」
奈美の悲鳴にラルクは急いで戻り、狂気に彩られた魔力を気にすることなく抱きしめていた、が奈美の焦点はラルクに合うことはなかった。
「くそっ。黒い果実を口にしたか」
ラルクは奈美を抱きしめたまま、狼の魔獣を睨みつけた。
「あはははは!!遅かったな!!ラールク!!!黒い果実は狂気をまとう猛毒!!彼女はどんな狂気を魅してくれるかな?」
奈美は空に助けを求めるように手を伸ばした。
「こ・・・ろ・・ぃ・・て」
ラルクはその手を取り、奈美の口を塞いだ。
「あははははは!!!殺してやれば?そうすれば楽になるよ!!まぁ、そんなことしたらお前も死んじゃうんだっけ?」
魔獣は襲い掛かる兵士達をなぎ払いながら、笑いながら踊るかのように切り裂いていた。