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14)ひっくりかえして

気がつくと拘束具はなくなり、シルクのような手触りのネグリジェを着てベットの中で寝ていた。

「天蓋つきベットだ」

起き上がると、周りは豪華な装飾品で飾られた一室だった。


わぁ~お、超待遇が違いませんか?


コンコンというノックがしたあと、扉が開いた。

そこには、ラルクと同じ服を着た女の人が3人いた。


「目覚めたか。」

そういうとラルクは、奈美のベットに腰掛け、頬に触れた。

「・・・この待遇は?」

「俺の花嫁になったんだ、これくらい普通だろう」


そう言って笑うと、奈美のおでこに口付けを落とした。

「こいつらは、お前の侍女だ。これからお前の身の回りの世話はこいつらがする」

「ぇ・・・おばあさんは?」

「明日の午後くらいには会えるさ」

そう言って、ラルクは侍女達に何か指示をあたえると部屋を出て行った。


「では、ナミ様。お着替えをしていただきます」

侍女の一人が奈美に声を掛けた。

目は伏せ気味で、視線を合わせようせず無表情だった。薄ら寒い思いをしながら奈美はベットを降り、衣装部屋へとはいった。

侍女たちは終始無言で奈美にドレスを着せていった。

侍女たちの顔は、3人とも同じような顔をしていて見分けがつかなかったので、名前を聞くのをやめた。


侍女のこちらへ、という言葉で仕度が終わっていることに気づいた。

言われるがまま廊下に出て行くと、こないだは無かった人の気配があちこちにあった。


どういうことだろう・・・城だから人がいるのは当たり前なんだけど。

そういえば、ここに来てから牢屋の兵士とラルクと、おばあさんと言い争ってた男くらいしか会ってなかった。


途中で、人に何度か出くわしたが皆無表情に顔を下げていった。

そして遠くに聞こえるヒソヒソ話。


明らかに良い話ではない。それは、廊下全体にただよう雰囲気でわかる。


何も考えたくない。

奈美はただ、前を歩く侍女の背中だけを見るようにした。


たどり着いた場所は、大きな窓のある部屋だった、大きめの丸いテーブルの上にはパンやらスープが置かれていた。

席にはすでに、ラルクが着いていた。


「道中なにもなく来れたか?」

奈美は最初何を言っているのかわからなかったが、廊下の雰囲気と温室で言われた内容を思い出した。

「・・・・ぇえ」

どういった噂が広まっているのかは知らないが、良い話ではないことは確実だった。


奈美は、執事のような男が引いた椅子に座った。ふと窓の外をみると明るい日差しの先に線対称の綺麗な庭園がみえた。

この場面だけ切り出せば、まるで御伽噺にでてくるお姫様のよう。

「・・・私は暗森には帰れないの?」

「元の世界に帰りたいとは言わないんだな」

そういわれて、奈美は今更気づいた。奈美は一度も自分が生まれ育った世界に戻りたいとは思わなかった。

「そういえばそうだね。なんでだろ~・・・」

奈美は小さく微笑んで、テーブルの上に置かれたお茶を口に含んだ。

ラルクはおばあさんが言っていたことを思い出していた。


ー ゴディバは、もともと暗森で一生を過ごし、終わるはずだった。 -

ー 聖人だった -


前世と関係があるのか無いのか。ラルクには分からなかったが、暗森のほうが奈美の心を引き付けるのだろうということは分かった

「・・・暗森には帰せない。お前は俺の花嫁だといったはずだ」

ラルクは食事を始めた。

「私じゃないといけない理由ってなに?」

奈美もラルクの食事の作法を見つつ、目の前にあるパンを食べ始めた。

「俺の魔力は強い、俺よりも魔力が弱い女は俺の子供を身ごもれない。」

「なんで身ごもれない?」

「子供は俺の魔力も受け継ぐ、そうなると母親にかかる負担が大きい。魔力が強くても収める器が頑丈でないと無理だ。そうなってくると、この世界には俺の子供を身ごもれる女はいない」

「・・・これから強くなる女性がいるかもしれないじゃない?」

「それはない、いっただろう、器も頑丈でないといけないと器を見ただけでわかる」

「なんでそんなに、子供を欲しがるの?」

「この国は、出来たばかりだ。今は俺の過去の功績と、俺よりも魔力が強い奴がいないおかげで纏まっているが、俺が死んだ後に跡継ぎがいなければ、また継承者争いになる。」

「・・・子供が出来れば用済みになるの?」

その言葉に、ラルクは食事の手を止めて奈美のほうに顔を向けた。

奈美の視線はラルクと重なることは無かった。

「用済みになって欲しいのか?」

「・・・さぁ」

奈美は気の無い返事をして。視線を窓辺に移した。


奈美にとってラルクは恨むべき人でいいはずだった。それなのになぜか恨めずにいた。

罵倒されたり、無理やり牢屋に入れられたり・・・

私の前世はもっと酷いことをした、そう思うと今までの待遇は仕方ないと思える自分がいた。

むしろ今の待遇の方が申し訳ないとさえ思えるほど。


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