13)夜と聖者と睦みごと
睦みごとです。
そういう描写があるのでご注意ください。
その日は、一日聖獣と戯れて奈美の一日は終わった。
こんなにはしゃいだのはいつぶりだろう?
奈美は寝転び、天上の星空を眺めた。聖獣達は奈美に寄りそうに囲み冷えないようにぬくもりを与えていた。
この城につれてこられて以来、マトモな運動を行っていなかったため、体中くたくたに疲れ奈美の意識は遠のいていた。
これは、絶対次の日は筋肉痛だ。
そう思いながら、聖獣たちのもふもふ毛皮に囲まれて眠りについた。
◆◆
白妖樹の根元で淡い光りに包まれながら獣達に囲まれて眠る姿は、御伽噺にでてくる姫のように見えた。
「・・・姫か」
ラルクはゆっくりと奈美に近づいていった。
その気配に獣達は少しずつ白妖樹の中に逃げ帰っていった。
ラルクが奈美の横についたときには、奈美の胸を枕代わりにしているエッフルだけとなっていた。
「・・・おきているんだろう」
閉じていた瞳を開けてエッフルは言った。
「今度殺したら、お前のこと許さん」
そういって、エッフルはラルクを見上げた。その瞳は力強く目線をそらすことを許さなかった。
「・・・殺しはしない」
「壊すなよ」
そういって、エッフルは白妖樹の中に戻っていった。
奈美は穏やかな眠りについていた、周りを囲っていた獣達がいなくなって寒いのか、身じろぎをし丸くなった。
そのとき、襟ぐりから豊かな丘が見えた。
「はっ・・・本当に女だとはな」
ラルクは両手を囲むように奈美の両側に置いた。
そして、静かに眠っている奈美の口をふさいだ。
『ここに契約を交わす・・・』
ラルクはぽつりぽつりと言葉を繋いでいった。
最初は、ぬくもりが消え肌寒さを感じた。
次第にほんわりとしたぬくもりを感じたがまだ体を温めるに寒い、奈美は温もりに手を伸ばした。
すると、その温もりは、奈美の手を捉え、今度は体全体に重苦しさとともに暖かいものが降りかかった。
首筋に熱を押し付けられたと思ったら瞬間ひんやりとする、その繰り返しをうけまどろんでいた意識が浮上してくる。
眠い。。寒いだかあったかいのか意味分からん
次第に聴覚が働きだすと、誰かの息遣いを感じた。
誰かのと自分のと
そこで急速に意識を覚醒させて、目を開けた。
目の前にはふわふわとした、白妖樹の光りにあてられて光る毛と天高く上った月が見えた。
「はっぁ?」
身動ぎしょうとしたが両手は地面に縫い付けられたように押さえつけられ、足もなにかに絡んで動かせなかった。
ぇ?ぇえ?!ちょっ?組み敷かれてる?私?!
奈美は呆然とした。
「夢」
思わずつぶやいた言葉は、組み敷いていた男の意識をむけるのに十分だった。
「夢じゃない、奈美」
そういって顔を上げたのはラルクだった。
密着していた体に隙間ができ冷たい風が入った、一気に奈美の体の熱が冷えていくのを感じた。
「な・・・何してるの」
「契約の続きをしてる」
「へっ・・・契約?」
「お前は、俺の花嫁だ、そして俺の子を産んでもらう」
「ぇ、何言ってるの?!」
「死にたくないだろう?」
そういってラルクは組み敷いたまま、奈美の顔を両手で包みこみお互いの鼻がつくくらい顔を近づけた。
「お前がゴディバではないということを信じよう。ぁあ、生まれ変わりだったな。だがな、一度お前を知っている者達は納得しないだろう。だから俺の花嫁として契約をすれば、とりあえず暗殺されることはなくなる」
「・・・何いってるの」
「俺を受け入れろ」
頭の中が真っ白な状態の奈美は、ラルクの瞳に思考を奪われていた。まるで奈美の意識を絡め取るような蒼い瞳に。
『汝の名は奈美、呼び出したる我が半身』
魔力のこもった声でラルクはつぶやくと、奈美の口をふさいだ。
その瞬間、奈美の体は電流が走ったかのようにびくりとした。
『ここで繋ぎとめん』
『許す』
知らずに奈美はつぶやいていた。
その瞬間、下腹部から心臓までを熱が走っていった。
「・・・はぁ!ぁぁ!」
ドクドクと血が流れ心臓を掴んでいるように感じた。
『我ラルク・フロイアンス・カファレルは半身、奈美と契りにて我が所有とする』
奈美の中で何かが弾けた瞬間、守るように何かに包まれるような感覚に襲われ意識を手放した。
体が鉛のように重い。
昨日と違い、ふわふわした暖かさはなく、ぺったりと張り付くような暖かさに奈美は眉間をしかめた。
目を開けると、薄暗く頭上から淡い光りが差し込んでいた。
そこで何かに包まれていることに気づいた。
奈美がもぞもぞと動いて、顔を光りのほうに出すとラルクの寝顔にたどり着いた。
一瞬固まった奈美だったが、次第に昨日の夜のことを思い出した。
「・・・・・・・夢じゃなかったのか。うそ、やっちゃったよね」
体の感覚が戻り始め、夢でなかったことを奈美に伝えた。
「しかも屋外かよ。・・・・いや温室だから屋外じゃないか?」
いやいやいやいや、まてまて自分。いろいろ起きてて、頭が回らないぞ?!なんでこうなった?!聖獣さん達と健全よろしく寝てたよね?!私?!
奈美はなんとかラルクの腕を解き、起き上がって周りを見ると場所は昨日寝た場所とかわっていなかった。
ただ、今日は聖獣たちが一匹もいず、鳥たちだけが静かに白妖樹の上から様子を伺うかのように枝に止まっていた。
奈美は恥ずかしくなり、ラルクと自分が被っていた布の中に戻ろうと俯いたとき自分の体に変なあざが出来ていることに気づいた。
それはあざではなく文様だった
下腹部から心臓にめがけて、蔦のような柄が伸びているのだ。
「ふぇ?!ナニコレ?!」
奈美は羞恥心も忘れ起き上がって体をまじまじとみた。
ラルクの体には心臓から腹部にかけて伸びているような文様だった。
「・・・ん」
ラルクが身動ぎをして目を覚ました。
「ちょっと!どういうことよ!これ!」
「んーうるさい」
ラルクは不機嫌そうに再度寝ようとした。奈美は肩を掴んで揺さぶった。
「ねんなー!!!!人のこと襲っといて何したの?!てか、あんた私のこと嫌ってたんじゃないの?!」
「ぁー・・・。今もそんなに好かないな」
「だったらなんで!」
「お前が俺の花嫁だからだ」
「はぁ?!いつ私があんたの花嫁になった!!!」
「もともと、仮契約で呼び出してる状態だったから、本契約に移しただけだ。はぁ。お前は俺を挑発してるのか?」
「は?何いってんのよさっきか・・」
奈美が言い終える前にラルクが起き上がったが、奈美はラルクの上に跨った状態だったためは後ろに思わず倒れこみそうになった。
それをラルクが背に手を伸ばし支えた。
「ぁ・・・」
「やっと意味が分かったか?」
にやりと笑ったラルクに奈美は顔を赤くさせていた。
「まぁ~要約すると、お前はもともと俺の花嫁として呼び出したが何の手違いかでゴディバの生まれ変わりを呼び出したのを、ばあさんが気づいて匿っていた。が、お前以外に俺の花嫁として最適な人間が他にいない。だからだ」
そういうと、奈美の首筋に顔をうずめた。
「ふぇ?!ちょっと。やめてよ!てか、私はおばあさんに呼び出されたって聞いたし!」
ラルクは顔を上げずに答えた。
「術式を書いたのはばあさんだからな、間違っては無い」
「でも、おばあさんは・・・」
「うるさい。集中できないだろう」
「集中すんなし!!てか離せ!!」
ラルクの胸に腕を押し当てるがびくともしなかった。
「はぁーめんどくせぇ。二択やる」
「めんど・・・」
絶句しながらラルクを見ると凄みのある笑顔で言われた。
「乱暴にされるのと、やさしくされるのどっちがいい?」
「それは・・・・結局やることは一緒では?」
びくびくしながら奈美は聞いたが無視され、腕に力をこめられ再度きかれた。
「どっちだ」
・・怖い・・・逃げられない。
「・・・やさしいほうで」
「残念。泣いた姿を見れると思ったのに」
そういうと、深く口付けられた。