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第一章第一話 自己紹介は独房の中で

俺、星乃 智影は、現在青春真っ只中の17歳だ。

17歳といえば、世間では高校2年生といったところだろうか。

そんな、17歳達は、もちろん政治の裏側に渦巻く「陰謀」を知るわけないし、ましてや宇宙人や未知の世界からの侵略なんて、小説の中だけの話で片付いてしまうだろう。

でも、俺は知っている。全てとまではいかないが、知っている。

政治の裏の陰謀や暗殺、そして異次元からの侵略も知っている。

つまり、俺が何を言いたいかというと、俺は、普通じゃない。

普通じゃないじゃ伝わりづらいかもしれないな。

そうだな、俺は「人」でもない。「神」だ。

「人」よりも優れた身体能力を有し、「魔法」までも使いこなす。

言うなれば、「人」の完全上位互換。圧倒的な食物連鎖の頂点。

とまあ、ここまで期待させてから悪いのだが、別に神だからなんでもできるというわけではない。

そりゃ、風邪だって引くし、タンスの角に小指をぶつければ転がりまわって悶絶する。

不老不死でもないし、好きな人に告白して振られたりもする。

結局のところ、あまり「人間」と変わらないのかもしれないな。

そんな俺だが今、誰もいないこぢんまりとした殺風景の独房にいる。

そう、あのよく「カツ丼食うか」って言っているところだ。

(あのカツ丼って美味しそうだよね。)

そんなことを思いながら、独房の中を見渡してみる。

あたり一面灰色の壁で覆われ、光が差し込んでくるのは俺の背後にある格子戸一つからだけだ。

その向かい側には、扉のない鋼鉄の扉がドシっと構えていた。

鋼鉄の扉は、よく磨かれているのか光をよく反射している。そんなわけで、鉄の扉は智影の姿を鏡のように映し出していた。


「綺麗だ、、、、」


智影はそうポツリと、つぶやく。

鉄の扉に映し出された姿は、

キリッとした眉毛、海を埋め込んだかのような瞳、空を閉じ込めたように水色に輝くポニーテールにまとめられた髪、筋肉がついているわけでもなくかといってヒョロガリなわけでもない標準的な体。

確かに、いわゆるイケメンの部類である。

ただ、みてわかる通り、ナルシストである。それも、結構重めの。


「これで、独房の中にいなければ完璧なのにな、、、」


智影は、はぁとため息を漏らした。そんな声に反応してか、それともただ単に偶然か、


「自信家であることは、良いことですが度がすぎると、己が身を滅ぼしますぞ。」


と不意に白髪混じりの長い髪をしたスーツ姿の初老の男性が目の前に現れた。


「うわっ!?」


扉の開閉音などは全くなしに、急に現れたこともあり、智影は思わず声を上げて驚いてしまった。

その拍子に縛り付けられている椅子ごと倒れかけてしまい、心臓が止まりかけた。

(こっわぁぁあぁぁ、倒れないように気をつけないと、、、、)

智影は、冷静になろうと、呼吸を整えようとして必死に、ひっひっふー、ひっひっふーと繰り返した。

老人は、その様子を面白がるように見つめながら、白く蓄えられた立派な髭を撫でながら、「ふぉふぉふぉ」と笑っている。


「この度はお越しいただきありがとうございます。少し手荒な真似をしてしまいましたがお許しください、《龍王》様。私、『対神協会』の幹部を務めさせていただいております、武田 宏昌と申します。以後お見知り置きを。」


初老の男性、、もとい武田は恭しく頭を下げながら一礼をしてきた。

まるで、急に誘拐して拘束している奴の態度には見えない。

『対神協会』、、、聞いたことはある。聞いたことはあるのだが、名前だけでそれが何かはさっぱりわからない。

智影は、何か怪しい団体なのでは、、、?と一瞬考えたものの、どんなところが俺を拘束したのかという興味の方が勝った。


「すまない、『対神協会』とはなんなのだ?」

「これは、これは失礼いたしました。我々『対神協会』は日本国直営の団体でございます。古来より、地球を守ってこられた天上の人々、神々の方々への接待や対応を担当しております。」


接待などと行っているが実際は、『魔法』という脅威を支える我々を監視、管理する為に作られたようだ。

実際に今カストラ自身が捕まっているので、限りなくこの説が正しいだろう。


「なるほど、、説明ご苦労。ところでなんで接待されるはずの俺が椅子に拘束されているんだ?」


俺は、老人に向かって圧をかける。この圧は、常人だと失神するレベルの強さだ。


「まあまあ、落ち着いてください。順を追って説明いたしますので」


老人はその圧に慌てるそぶりも見せずに、話を続ける。しかし、老人の頬を何本も水が伝う。

いくら冷静を装おうとしても、体は正直だった。

そんな様子に、カストラは気づかずに、怯えていない武田を見て恐怖すら感じでいたのだが。

老人は苦笑しながらも続ける


「さて、少し遠回りしすぎました。今回お呼びした要件をお伝えいたします。

《龍王》様、、、あなた『大量虐殺』をしませんでしたか?」


空気が凍るのを感じた。

老人の目つきはいつの間にか厳しいものとなり、真剣な表情になっていた。


「返答次第では、条約の破棄も厭いませぬぞ」

「ちょっと待ってくれ、『大量虐殺』はいつどこで起きたんだ?俺は、今まで任務に行ってたから最近のものなら多分別の人か神だと思うぞ」


俺が冷静に返すと、老人は惚けるなとでも言いたげな表情を浮かべながら


「場所は、日本の北海道。時刻は10日前の正午です。」

「、、、ぎり俺も犯行可能な時間ってわけか。俺が任務に旅だったの8日前だもんな、、、」


確かに、それならば俺のアリバイを証明できない。10日前は家で家事をしていたせいで誰とも会ってないからな、、、いや、1人というか一神の子守りはしていたか、、、、


「犯行現場は、それは酷い有様だったと聞いています。夥しい数の原型をとどめていない肉片の上にカラスはとまり、あたり一面は赤く染まって強烈な腐敗臭が今なお漂ってくると言います。

そして、犯行現場の近くであなたのその特徴的な青い瞳、水色のポニテ髪、なにより目立つ着物を着ていた人物が複数人に目撃されているんですよ。」


老人は声を荒げながら捲し立てるように言い切った。

うん、、、、そんなに俺に似てる奴がいるんか、、、俺な気がしてきたな、わんちゃん俺?それとも生き別れた双子の弟とか?

まあ、そんなはずはないので


「俺は、10日前はずっと家にいた。家からは一歩も出ていない。その特徴は見た人の気のせいか、他人の空にだろう。」

「まさかまさか、ここまで一致していると疑いたくなくても疑ってしまうものです。

ところで、《龍王》様。まさかとは思いますけど、人間と神の間で結ばれた条約をお忘れになったわけではありませんよね?」

「ああ、もちろんだ。」


その条約が結ばれるときに俺もその場にいたんでな。


「一、人間は神々が、衣食住に困らないように全てのサービスを階級に応じて支給する。

二、人間は、淫らに神々に対して敵対しない。

三、神々は、淫らに人間を殺してはならない。

四、神々は、この条約が守られる限り地球をその命に変えてでも守り抜く

だったよな?」

「はい、その通りでございます。今回のことは、第三項に違反すると思われるのですがどう弁明されるおつもりで?」

「だから、俺はやってないんだってば」


俺は、何度も続くやったやってないの言い合いにうんざりしてきた。

確かに、特徴は似ている。しかも、俺にはアリバイがない。疑うのはわかるのだが、、、、、

俺がどう抜け出そうか頭を捻っていると突然、俺と老人しかいないはずの独房内に若い女性の声が響き渡った。


「妾の可愛い弟子をいじめてるやつがおると聞いてな!カストラ!どこじゃその不届ものは!」


そう言って、何もなかったはずの空間には、俺の師匠、その人が立っていた。


「その、星が宿ったような藍色の瞳と銀髪、、、もしかしてあなたが、、

あなた様が全神の頂点に立たれている御方《龍神》様ですか?」

「ああ!その通りだ!妾の名前は、『カトレア・サンスベリア』じゃ!覚えておくが良いぞ!」


カトレアは、自信気に無い胸を張って偉そうにしている。

老人の方は、いきなり神の頂点が現れて腰を抜かしてしまっているようだ。


「して、ご老人よ。カストラはもらって行くが良いかのう?」


カトレアが老人に問いかけると老人は勢いよく首を縦に振った。

そんなこんなで、俺はようやく日常に戻れたのである。

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