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去りゆく、小さき背中

作者: 示彩 豊

挿絵(By みてみん)

 夕陽が沈みかけ、空は赤く燃えていた。


 長く伸びた影が地面を横切り、町は静かに一日の終わりを迎えようとしている。


 馬車――いや、車の列が砂埃を巻き上げながらゆっくりと近づいてくる。


 その様子を見届けるように、建物の前に立つ女がいた。彼女は腰に手を当て、鋭い目を光らせながら静かに口を開く。


「順番に行きな!」


 その声に、誰からともなく頷き、ひとり、またひとりと歩み出す。背を向け、迎えに来た者のもとへと進む姿は、まるで長い旅路に出るアウトローのようだった。


 女は腕を組み、柵にもたれながら目を細める。


 その視線は最後に残された一人に向けられている。

 

「お迎えが来たようだな……」


 乾いた風が吹き抜ける。彼女は微かに笑みを浮かべながら、最後の一人に声をかけた。


「……ああ、そろそろ、お別れの時間だ」


 そう言い残し、最後のひとりがゆっくりと歩み出した。


 そのとき、車のドアが開き、中から降りてきたママが首をかしげながら言った。

 

「まだ流行ってるの?  西部劇ごっこ」


 カウボーイ――いや、子供は気まずそうに手作りのウエスタンハットを取り、ママの手を握る。

 

「いつまで続くんでしょうね?」


 ママが苦笑しながらつぶやくと、柵にもたれていた女は肩をすくめ、穏やかな声で答えた。

 

「さあ……でも、町を守る者がいる限り、平和は続くもんですよ」


 ママは思わず吹き出し、「もう、お世話になりました」と軽く頭を下げる。


 女はただ、夕陽を背に小さく頷いた。


 こうして今日も、一日の終わりが訪れる。


 それは西部の掟――いや、幼稚園のお迎えだった。


――了――

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― 新着の感想 ―
 お久しぶりですね! 面白かったです。  オチが読めませんでした。すごく可愛いオチでよかったです。  イラスト含めてやられましたwww  ありがとうございました。
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