33,ゲスダイン 潜入開始
いよいよ動き出したパーソンの潜入作戦!
狙い通りに王様の近くに行く事が出来るのか?
「さて 今日は麦の収穫準備だ」脇の麻袋を抱え上げ 倉庫の外に出る。
「パーソン 今日は忙しいぞ」アーク農国での支援者が口にしてパーソンを呼んでいる。
荷馬車に麻袋を積み重ね 麦の出荷作業が続く。
「パーソンこれで今日の出荷は終わりだ」荷馬車に麻袋を積み終えた彼が パーソンに声を掛けた。
「今年は収穫も十分ですね」
「あぁ これで今年も越せるな」
「来年はもっと増やせますかね」
「あぁ これで余裕が出来る」彼はそう言うと 市場に向かって荷馬車を動かしだした。
「よう お疲れさん」市場に着いた荷馬車に 彼に声を掛けてくる友人。
「よう!」手を上げて 声の友人に答える。
「あれ?新入りか?」パーソンを見て声を掛けてくる友人。
「遠縁の親戚なんだ 将来有望だからうちの手伝いに来てくれてるんだ」
「ほお じゃあお前の所は安泰だな」と笑い 友人は籠の中の果物を渡してきた。
「うちの娘婿だがな」
「まだ生まれたばかりじゃなかったか?」相手は呆れたように口にする。
「20年後だ 20年後!」当たり前だろうとばかりに笑っている支援者。
「気のはやい奴だな」
「だが 将来に楽しみがあるから頑張れるんだ」
「まぁな 俺の所の嫁にと思ったんだがなぁ」
「お前の所こそ 生まれたばかりじゃないかよ」と また笑った。
麦を卸し お金を受け取り市場を見て廻り荷馬車で帰宅する。
「市場は活気があっていいですね」
「えぇ サーライトの支援のおかげで収量が増えたので 皆笑顔なんですよ」
支援者も 身分を合わせた口調に戻す。
「戦争になったら またあの”笑顔”が消えますからね」暗く重い声を口にする。
過去の戦争で農地が荒れ 日々の生活に苦労した事を思い出したのだろう。
「なんとしても”ゲスダイン”の悪行は防がねばなりません」彼の言葉に自然と パーソンから声が出ていた。
「”非常に危険な任務”と聞いています くれぐれも無茶をなさらぬように」
「あぁ 気を付けるよ」
翌日また市場に行くと 今度は他の農業者の手伝いをするパーソン。
「彼はゲスダインに麦を卸している農家なんだよ」支援者が教えてくれる。
「こんにちは パーソンです」そう言い 相手に挨拶をして手伝いを始める。
「若いと作業がはかどるなぁ」
「やらんぞ うちの娘婿予定だからな」
「まぁ いらんがな ”うちでは”」笑って答える相手。
「”うち”?」
「そう ”うち”」互いに笑いあい なんだかけん制するようにしはじめ パーソンの腕をつかむ。
「ゲスダインの店舗で人が足りてねーんだ」
「また お城に引き抜かれたのか?」彼の言葉に驚いて見返してくる相手。
「あぁ よく判ったな」
「お前の店は見習いは”すれてないから”安心なんだろうなぁ」ぽつりとつぶやく。
”ゲスダイン潜入の為に”彼を顔合わせに連れてきてくれた事をパーソンは理解した。
「ゲスダインは 喧嘩っぱやいのが多いから 見習いが追放されちゃうんだよ」
呆れた口調の彼。
「そんな連中が多いから きれいな所作のものは直ぐに噂になって 上に引っ張られるってことさ」
「アクセサリーとかと勘違いしてるんだろうかねぇ 困ったもんだよ」
「いいか パーソン お前はうちの娘婿(予定)だ 目立つんじゃないぞ」肩を掴まれ 見つめてくる支援者。
まぁ お芝居なんだが 真剣に説得してくる。
「やだなぁ 僕ごときに気にする高貴な人はいませんよ」パーソンは笑って返答し 辺りに目を配る。
数人がこちらを見てひそひそしている気がしたからだ。
「まぁ 王家ご用達のお店に出入りする名家だけど 田舎者だしな」
「まぁ 歴代の王様が内の麦を使って頂ている 誇りはあるがな」
「それは光栄な事ですね」
「僕も王様に喜んでいただけるように頑張らないと」そう言いパーソンは腕を出し力こぶをを作って見せる。
だが その”可愛いい力こぶ”に彼らは笑うだけだった。
それから数週間 パーソンは麦を搬入し 店を手伝い ゲスダインになじむように心掛けていた。
なじみの客も出来 麦や他の農作業品を手渡していると 見るからに”センス”の悪い客が声を掛けてきた。
「ここが王家に食料を卸している商会か」不機嫌そうに声を出している。
「これはボロ男爵様 今回はどのようなご用件で?」店主が気付いて 男に話し掛ける。
「新国王様ゲース9世陛下の命に命により 食料安定流通の視察である」ふんぞり返り返答する。
「ご苦労様です では視察前にまずはお茶を」と言って男爵を別の部屋に案内していった。
「なんですかあれは?」他の店員に聞くと 呆れた声を答えてくれた。
「まぁ”立場を利用した”乞食だよ」
「えぇ?」
「あの貴族の機嫌次第で”店の営業許可”が取り消される噂があるからな」
「まさか?」
「まぁ 軽い賄賂でそれがないなら安いもんだろう?」
「いいんですか?」
「これがこの国じゃ当たり前だよ」寂しそうに呟く店員にパーソンは頷いた。
「なるほど 素晴らしい店だな」部屋から出てきた男爵は 店長にそう言うと満足そうに出て行った。
「ご苦労さまです」店長は頭を下げて言った。
どおいう事か とうとうゲスダインの高位貴族に接触したパーソン
これをきっかけに目標の王様にまで接触できるのか