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光が強ければ闇も強くなる

もしも東京の都心部に巨大テーマパークがあったら?

「ふぁ~もう入らない」


「とか言ってデザート追加で頼んだのはだれだ」


「いやいや、遠慮されるよりこのほうがいい。おいらも奢りがいがあったというものさ」


 レストランに入る前と後で、たぶんいちキロくらい体重ふえたと思います。


「見ろよ! アタイの筋肉が喜んでるぜ!」


「フッ、ほんと、トゥーサがうらましいな。食べたものがすべて筋肉に変わってしまう」


「そんなことないさ。食って寝てを繰りかえしゃだれだって腹に溜まってく。そういう意味じゃ、ビシェルだって筋肉にしてるじゃないか」


「当然だ」


(むぅぅ)


 ふたりのおなかをチェック。方やバキバキ方やハリツヤコシの三拍子。じゃあ我が下腹部はいかに?


「――う!」


 むにっていった! つまめた!


「あぁ? なにやってんだおまえ」


 おとなりにはこっちの心情を理解できない男子一名。そしてデリカシーのない中年男子が余計なひとことを添えてきやがりました。


「おい、隠密い重量過多は致命的になるんだと何度言えば――」


「ちがうもん! これは別腹だもん!」


 うごけばへってくもん!


「はぁったく。明日からはランメニュー中心だな」


「ガーン!」


「食後の運動かい? それなら王城まですこしフラつこうか?」


 スパイクの提案にオジサンは渋い顔だ。


「もう夜じゃないか」


「まだ宵の口だよ。それともなにか? まさか"おこさま"は寝る時間だなんて言わないよね?」


(寝る時間です)


 だって暗闇は怖いから。


 いつドコから牙を剥かれるかわからない。肉食獣かマモノか、はたまた人間か。町から町へ旅していたころであればすでにテントを張り夜の番を決めなければならない時間だけど今はそんな心配なっしんぐ。


「ってことでいいよね!?」


「なにがだ」


「いいな。どんな遊びがあるんだ?」


「なんでもござれだぞ? 若人よ。ダイス、ダーツ、キミが望むなら歌いながらダンスもできるしなんだったら夜ならではの遊びも――」


「やめろスパイク。こいつらはそんな年じゃない」


「わからないぞ? 異世界人は十歳で成人かもしれん」


「えー十歳はおばあちゃんだよ」


「っはは! 冗談がうまいね。それだけじゃないんだよチャールズ。王城の向こう側にキミが好きそうなバーがここ最近オープンしたんだ」


「……ほう」


 はい魔法の呪文いただきました。効果は言わずもがな覿面です。あとはもうひといき。


「ねえねえ! ちょっとだけでイーからあっち行こ?」


「……しかたない、ちょっとだけだぞ」


 自分に言い聞かせるように、彼はうんうんとうなずいた。






 めっちゃまぶしかった。ほんとに夜だったの?


 道にはたくさんの人が行き交っていて、道路のはしっこには火の魔法を封じ込めたガラスがたくさん並んでいた。


 あっちではオジサンとおなじ酒のにおいをふりまく人がいて、こっちには力なくふらふら倒れ込む人がいる。ふと路地裏に目をとめると上半身裸のまま地面に寝転がった人もいて、声をかけてもぜんぜん反応してくれない。


「キャッ」


「放っておけ」


 オジサンにむりやり肩を引かれる。その目は憐れむような悲しむような、そんなふしぎな眼差しに満ちていた。


「どうだ? フラーの夜の街は」


「騒々しいな。数年前とまるで違う」


「そうさ、ここ数年でほんとうに変わったんだ。そこかしこに欲望と金の香りが渦巻く夜の街。これがもうひとつのフラーの姿さ」


「……ほんとうに変わってしまったな」


(オジサン?)


 さっきまで笑顔だったのに、なんでこんなに悲しそうな表情をしてるんだろう?


「スパイク。民衆の暮らしは実のところどうなってる?」


「素晴らしいよ。金さえあれば食も娯楽も学問も思いのままさ――金さえあればね」


「らしいな」


「気付いたかい?」


「御託はよせ。見せつけるためにわざわざ連れてきたのだろう」


 次は不機嫌っぽい。今日のオジサンはひゃくめんそうだなぁ。


「表だけ見ればきらびやかに見えるが――なんだ、この違和感は。なにか、狙われているような気配が」


「んー、マドモアゼル鋭い指摘だ。その視線を感じたら決して裏路地に足を踏み進めないことをおすすめするよ」


 オーバーなジェスチャーでビーちゃんのことばを肯定する。それまでおどけたような調子で言葉を連ねていたスパイクが唐突にシリアス風味を醸し出す。


「もはや隠しきれなくなってる。小さな火の粉なんてしょっちゅうだし近頃は例の連中も現れて暴力沙汰が目に見えて増加した。もはやおいらの力だけじゃ抑えられない……チャールズ、おいらはどうしたらいい?」


(ふたりしてむずかしー顔してる)


 ふとした好奇心。それと、胸の奥に感じるキュッとした感情に突き動かされて、わたしは彼らを引き止めた。


「ねえ、なんの話してるの?」


「……キミたちが救世主になってくれればいいのに」


 悲しげな顔のまま、スパイクはただそうつぶやいた。

人はだれもがヒーローになれる


けど、人はヒーローを求めている

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