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思ってたのとちがう

光が強ければ闇も深くなる

「沈黙は彼の美徳だ」


 ことば少なく肯定するカールを一瞥して、やたら貴族っぽい衣装に身を包んだオジサンの親友は肩をすくめた。衣装は貴族っぽいけど、なんか信用できない顔と振る舞いのせいで大道芸人っぽく見える。


「カールくん。少しだけ説明してあげてくれないかな?」


「……思っていたのと違った」


「なにがだね?」


「自分は武道を極めたい一心でギルドに入った。用心棒だ。だが実際のしごとはただ立ってるだけだった」


「ただ立ってる……ああ」


 あの時いたイカつい壁たちもそうだったな。結局ドッタンバッタン大騒ぎしちゃったけど、あの筋肉たちみんな戦いに関してはしろーとだった。


「戦う相手はみな無力なにんげんばかり。依頼主はただ自分を立たせて、先ほどのように土地の権利書、金を受け取る(・・・・)――気に入らなかった」


「その考えは正解だよ。それでギルドを抜けたわけだ」


 カールはこくりと頷いた。


「うーむ、やりクチは汚いがなまじ真っ当な手段で動いてるだけにメンドウだな」


「なんで? ふつーにやっつけちゃえばいーじゃん」


「そう簡単な話ではないのだグレース。ギルド結成の許可を得るには手間がかかってな。それは逆にギルドを解体させる難しさにもつながるんだ」


「どゆこと?」


「国の許可あって存続できるのだから、それを解体するとなるとよほどの理由が必要となる。長が死亡したとか重大犯罪が明らかになったとか、とにかく理由が必要なんだ」


「なんだ、じゃあかんたんじゃん。そのギルドがやってることを報告すればいーんだね!」


「……」


「なんで黙ってるの? みんなで悪いことしてますよーって言いに行けばいいじゃん」


「それはムリだね」


 黙り込むオジサンのかわりに彼の親友が口を開く。すこしおさえた声で。


「彼らはただ住民から土地の権利を購入してるだけだ。そして、それらの土地を|国の発展のため《アミューズメントパーク建設》に充てている。役所からすればコレ以上なく懸命で模範的なギルドに映るだろう。人材を適切な場面に送り込んで評判もいい。つまり、表面上はこの上なく優秀なギルドってことさ」


「でもやってることはダメなんでしょ? それなら」


「複雑な問題なんだ」


「えっ」


 ただ冷たい声が響く。どこか突き放すような声色だった。


 人間ってなんで、こんなカンタンなことわからないんだろう――あれ。


(にんげんって、また他人事のような)


 まるでわたしが人間じゃないみたいな感じじゃん。


「オッサンの言いたいことはわかるけどよ……なんか釈然としねーよな」


「そうだな、気に入らない」


「お、ビシェルと同意見なんて珍しい」


「メンドウだねぇ、そのギルドがある場所はドコだい? アタイがイッパツかましてやりゃ済む話じゃないか?」


「余計ややこしくなるだけだろ」


「……フラーは豊かな街だと聞いていましたが、まさかこのような実情があるとは」


「申し訳ないねぇかわいいお嬢さん。都会だからこそ光も闇も深いんだ。王のご容態も芳しくないうえ隣国からきな臭い匂いもする。ほんと、平和ってのは束の間の安らぎでしかないと思うよ」


「待て、それは初めて聞く話だぞ。王の容態が良くない?」


「町ではもっぱらのウワサだよ。ただウワサはウワサでしかないから、まだよその町には届いてないみたいだね」


 自由な両手を操って、彼は二杯目をグラスに注いでいく。水と同じような無色透明な液体がゆっくりと注がれていく。水に見えてそれは水じゃない。人の中に流れるウワサもまた、ウワサではないのかもしれない。


「信憑性があるウワサだ。現にここ最近の王は表舞台に姿を表しておらず、好まれていた馬上槍試合でもすこし挨拶をしただけですぐ下がってしまった。チラリと見た知り合いから聞いたが、その顔は人を疑うほど青々としていたらしい」


「まさか……二十年前はあんなに元気だったのに」


「二十年経てばだれでもそうなるさ。さ、しんみりした話はこれまでにしよう。テーブルを開けといてくれたまえ」


 そのことばにタイミングよく、扉が開け放たれ台車に乗った料理の数々が運ばれてくる。熱を帯びた色とりどりの肉や野菜。その姿と醸し出す香りを感じ、成長期のお腹はたまらず音を上げてしまった。

異世界にネズミーランドとか国際的スタジオとかあってもよくない?

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