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おおきな街、ちいさな扉

どんな平和な場所でもたったひとつの割れ窓から治安が悪化する

 いくつもの山をこえ、谷をこえ、川をこえ、山をこえ、海をこえ、あ、ふたつくらいウソついた。


 もうとにかくいろんなものを飛び越えてきたんだってこと。とてもタイヘンだったけど、それでもたくさんのオトモダチができてとても楽しかった!


 アイン・マラハの首都フラーい近づくにつれ、道路がキレイになりリッパな馬車を見かけるようになった。なかにはエラい人がはいってるとオジサンが言う。馬車といえばスプリットくんも行商の護衛として使ってたけど、そういうタイプとはまた違ってこうきゅうかん? みたいなのがあった。


 すごくまぶしい。宝石みたいなのが太陽の光を反射してとてもチカチカするのです。


「見えてきたぞ。アレがフラーだ」


 くねくねした道を抜け、オジサンを先頭とした一行は開けた場所に躍り出る。舗装された石畳の道を下っていくと、広い景色のなかに明らかな人工物の気配が顔をのぞかせてきた。


「あれがフラー。この国の首都か」


 目をうすめてそれを確認する。平野の中心にあるようで、その街はこちらから見えるすべての角度を壁でガードしていた。オジサンから聞いたように石造りのもの、木材を組み立てたもの、土を盛ってその上に柵を取り付けたもの。入口らしき場所まで道が続いてて、その手前から検問待ちの人で溢れかえっていた。


「もっとも人が多くもっとも栄える街。アイン・マラハのすべてがここに集まってる」


 今はとおくにある巨大な砦を思わせるような壁。それでも圧倒的な存在感で、ひろく平らな地形にどんと構えそびえ立っている。ふと見れば、街をかこむ道のあちこちに兵士たちがいて、それぞれ決まった道筋を巡回しているようだ。ああでも、うん。


(あれじゃルートバレバレだよね。いつだれがどのルートを通るのかわかりやすいなぁ)


「どうしたグレース?」


「ううんなんでもない。こんなところからもおっきく見えるなんですごいね!」


「そうかぁ? オレはあぶねーと思うけどなぁ」


「ほう、どういったところに危険を感じる?」


 何気なく放った少年のひとこと。だけどそのことばに真剣な眼差しを向ける異世界の住人がいた。


「かんっぜんに囲んじまったらさ、たとえば中で火の手が上がったときどうするんだ? 周辺警備だってこの数じゃ少なすぎだし、たとえばソコをマモノが襲ったらどう助けるつもりかわからねぇ」


 ソコ、というのは大通り沿いにある建物を指している。フラーは壁に囲まれてるけどその周辺は畑が広がっていて、ぽつぽつと民家やなにかのお店のような建物が見受けられた。


「まるで見てきたかのように言うじゃないか」


 オジサンが感心したかのような声をあげる。おおきく頷きアゴをさするしぐさはなんともオッサンくさい。


「見ての通り、フラーは平地にあった小山を切り崩しできた城下町だ。だからこの裏側は崖になってるんだが、高台に城があるということは水の工面が難しいことを指す」


「雨水を利用するほかなくなるな」


 合点がいった顔をしたのはビーちゃんだ。ただし彼女の意見にカウンターパンチをもっている。


「それもそうだが、城では地下水を引いて水源としている。近くの川からも引き出しているから、スプリットが予想するような大規模災害にはならんだろう。とはいえ、フラーには確かに燃えやすい木造家屋が多い……さて、こっちだ」


「ここではないのですか?」


 律儀に最後尾に並ぼうとした修道女。指をさしアピールする少女に対し、オジサンはふふんと胸を張る。


「知り合いから良いパスをもらってるのだよ。これさえあれば一般検問ではなく別ルートで入れるぞ」


 ま、検問はあるけどな。オジサンはそう言って入場待ちの列から逸れていく。ついていかないワケにはいかないのでオジサンの背中を追っていくと、やがて人ひとりが通れるような小さな扉と、その手前に控える警備兵数人が見えてきた。


「旅の仲間だ。キミたちにはコレが役に立つだろう」


 差し出された木札を示し得意げな顔。そこに記された文字を見たのか、検問官は驚いたような表情をしてそれを確かめている。


「なるほどこれは……ただし、しっかり確認させていただきますので」


「ああ」


 数人の警備員に囲まれ、オジサンは身体をパンパンされた。いや、えーっとなんか武器とか仕込んでないか探ってく感じのヤツ。あ、でもちょっとまってそれされたら困るかも。


(いやーんはずかしーでも女性もいるしだいじょーぶ、じゃなくて)


 わたしの服、いろいろ仕込んでおりますのでこれはぜんぶ外したほうがいいでしょう。


「では、こちらに武器をお納めください」


「はーい」


 あらかじめオジサンから聞かされていたとおり、武器などは一時預かりになるようです。ってことでわたしは服からいろんなウェポンを外すことにしたのだけど――。


「……おい」


 検問官の目が見開かれていく。提示されたカゴにどんどん仕込みナイフやアイスピックや杭や目潰し用の球などを放り込んでいく。そのたびに重量が増していき、カゴを手に持った若い警備兵がどんどん青ざめていった。


「えーっと、コレでぜんぶかな?」


 さいごに口から吐く用の毒液入りビンを収めて終了。ちなみに、この緑色したどくどくしい毒は口に含んでも問題なしです。なんか傷口に吹きかけると相手が泣きわめき叫び慈悲を乞う系。くわしい仕組みはわかんない。


「あ、ああ……このような装備、どこで使う?」


「狩り」


「え」


「狩り。たまにぜんぶ効かないのいるよ」


「……ほんとに?」


「うん。そんなときは諦めて逃げるか素手で戦うしかないんだけど、そういうのはぜんぶサっちゃんに任せてるし」


 検問官はこのなかでいちばん巨大な女性に視線を移した。


「なるほど、そうなんですか」


 乾いた笑いが響くなか、わたしは名前や所属などの定型的な質問を受けて時間を過ごす。それらのガマンタイムをすり抜ければ、いよいよ待ちに待った瞬間が訪れる。


「以上で終了です。では、お気をつけて」


 小さな扉が開かれる。その先にはいったい何が待ち受けているのだろうか?


 たくさんの人がいるだろうか?


 その人たちのうち何人と仲良くなれるだろうか?


「んっふふぅ~たのしみ」


 これを機にトモダチひゃくにん目指そうかな? じゅうまんにんって言ってたからひゃくにんくらいすぐだよね。じゃあもっと欲張ってせんにん?


「わたしたちの旅がいまはじまる!」


 そして、わたしは新たな一歩を踏み出したのだった。

扉のむこうは雪国だった?

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