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異世界で過ごす日常風景

環境が変われば"あたりまえ"も変わる

 異世界に来て、わたしたちはたくさんの"にちじょう"を過ごしてきた。


 野を駆け山をのぼり、オジサンにへとへとになるまでしごかれ、町や村ではいろんな異世界人とオトモダチになった。あ、異世界人にとってはわたしたちこそが異世界人? あれ、ちょっとまってなんだか混乱してきた。


 とにかく、まいにちいろんな経験をしてきたわけです。


(とても楽しい。たのしいけど、なんかちがうんだよなー)


 元いた世界。


 わたしたちはソコでどんな"にちじょう"を過ごしてたんだろ。


(あっちこっち走り回れるの好きだし、いろんな人と会えるのもうれしいし、なんかこう、自由だ! って感じがしていいんだけど……なんかちがうっていうか)


 落ち着けない。


 以前のじぶんはもっとせまいところにいたと思う。ぜんぜん自由じゃなくてまいにち同じような生活をしてたとおもう。それだけ聞いたらなんかしあわせそうじゃない気がするけど、わたしにとってはそれが幸せで、オトモダチに再会できる瞬間がとてもうれしくて――。


(おともだち? ううんちがう。なんだろう、それよりもっと大きな)


 ふわふわした思考のまま歩みをすすめていく。みんなそれぞれの日常のため行動していた。


 ビーちゃんは弓の手入れ。チコちゃんに紹介されたお店に行った。グウェンちゃんは町の協会に向かってお手伝いかな。オジサンは相変わらずあちこち歩き回って情報収集。スプリットくんはオジサンとの訓練がないから、たぶん買い出しでもしてると思う。それぞれが思い思いにうごく中、わたしはなんかいいことないかなーって気持ちであっちこっちを徒歩りんぴっく中。


 あ、言い方がわるいね。えーっと短期間のおしごとを探しているところです。すべてはおいしいおやつのため。


(どこかに暗殺者を所望する方いらっしゃいませんかー……っと)


 先が見えない思案にかられていると、そのうち耳がいろんな破壊音をキャッチするようになった。


 鈍器で岩を砕く音。金属が地面に打ち立てられる音。それらに混じってなんか聞き覚えのある声。


「さあさあ! アタイに勝てるオトコないないのかい?」


 おしごとを探すなら町中がいいとわかりつつ、わたしははずれにある鉱山付近に足を進めていた。その理由は、なんていうか好奇心? でも今回は当たりっぽい。


「なんてパワーだ。うちの力自慢をことごとく倒すとは」


 とおくからでもハッキリ見える濃い茶色のおかっぱ頭。褐色の健康的な素肌というか筋肉。二の腕をぶんぶん振り回し己の力を誇示するスタイル。


「俺が相手だ!」


 そんな彼女に立ち向かった男性。見た目は確かに筋肉質で動けそうなカラダしてるけど、彼はいわゆるひとつのアスリートタイプ。パワーくらべじゃうちのサっちゃんを止めることはできないんだなぁ。


(およ? なにあれ)


 ふたりはまるいテーブルに相対した。両者がおなじ間隔でヒジをつき、手を組みにらみ合いを披露してる。


 その間にレフェリーらしき人が立ち、両者ミッチリ掴まれた手をおさえ神妙な面持ちで時を数えた。


「レディー……ゴー!」


 ご、の瞬間に終わってたと思う。その瞬間にサっちゃんの腕が曲げられオトコの人のそれをテーブルに叩きつけた。ちゃんと壊さないよう力加減できてるね。


 ルールとかよくわかんないけどサっちゃんの勝ちみたい。落胆する男性の声と観衆の拍手、あとそれに応えてテーブルに叩きつけたほうの手をふるサっちゃんに近づいていく。


「もう仲良しさんになったの?」


「おう、グレースか。まあそんなもんだ。ここでちっと仕事できないか頼んだら、こいつら「オンナにくれてやる仕事はない」っつーからよ。そこまで言うならアタイをぶっ倒せるんだろうねと問いただしたらこの程度でまいっちまうよ」


「言ったな! テメーふざけんじゃねーぞボコボコにしてやる!」


「へっ! できるもんならやってみな? ぺしゃんこにしてやるよ!」


 ことばはアレだけどみーんな笑ってる。そんな中奥からやってきた大男がひとり。


「相手しよう」


(うわ)


 マジで大男だ。サっちゃんと似ても似つかないようなマッチョメーンだ。


「へえ、少しはできそうなのがいるじゃん」


「うちの若ぇのが世話になったが、どうやらタダ者じゃないらしいな」


「そういうアンタもいいカラダしてるねぇ――やろうか」


 ズン。そんな音をたてテーブルにヒジをつくサっちゃん。オトコの人もそれに応えて、両者ガッシリ手を掴み合う。


 こころなしか、サっちゃんの表情がときめいてるように見えた。


「ゴー!」


 そしてレフェリーの声が! ってあれ? ふたりとも動かない?


(……あ、ちがう)


 テーブルがミシミシ言ってる。これ動かないんじゃなくてどっちも同じ力で競り合ってるんだ。


「ッ、やるな」


「おまえ、こそ。はは、これは楽しいねぇ」


 戦闘狂みたいなこと言ってる。っていうかだいじょーぶ? そのテーブル木製だけどさっきよりミシミシ度が高くなったよ?


「ホンキを出させてもらうよ!」


「応ッ!」


(気のせいかな? ふたりからなんかオーラが見えてるような気がすんだけど)


 気づけばギャラリーがだいぶ増えております。みんな興奮してるのはわかるけど、ただ固まってるだけのシーンになぜ「やっちまえ!」とか「そこだ! もっと右だろ!」とか「今の押しは効いたな!」とかテキトーなこと言ってるのはなんでだろう。


(でもどっちが勝つんだろう。ごくり)


 動きが見えないからこそ伝わる緊張感。けど、その勝負は思いもよらぬ方向で決着を迎えました。


 ミシ。


 ミシミシ。


(あっ)


 ひびが。


 ミシミシミシ。それがテーブルが残したさいごのことばだった。


 ずどぉおおおおおん!!!


「ッ!?」


 サっちゃんもオトコの人も動かない。だけどふたりの全エネルギーを受け止めていたテーブルがとうとう耐えられなくなり粉々に砕け散っちゃった。


「……」


「……ふっ」


 両者手を組みバトル中とおなじ構えのまま硬直していたけど、やがてオトコの人のほうから手の力を抜いて、サっちゃんに白い歯を見せた。


「やるな。オンナにしとくのがもったいない」


「アタイはオンナで良かったと思ってるよ。もしアタイが男だったら間違いなく何人かヤッちまってるだろうから」


 自らの上腕二頭筋をアピール。これには説得力しかないです。


「で、オンナがこんなむさっ苦しい現場に何のようだ?」


「仕事がほしい。ここならアタイの力を存分に発揮できるだろう?」


「なるほど。大歓迎だ、アンタならそこいらのヒョロい野郎より動ける。で、アンタは?」


「あ、わたしですか?」


 わたしはぁ、えっとぉ。


「オトモダチになりましょう!」


「はぁ?」


 なに言ってんだこいつ? みたいな顔をされた。

グレースはお断りされました


オトモダチにはなれました

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