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ポールダンス

薄着でやる必要ある? 実はあるんです

 サーカスの人たちはとても親切にしてくれた。


 あいさつ代わりにイッパツ芸を披露してくれたり、おいしいおやつをくれたり、興行中の体験談をおしえてくれたり、おいしいおやつをくれたりした。


 みんな気さくなひとたちで、たのしくて、いい人たちばかりだったんだけど。


(うーん……なんだろ、この違和感)


 さいごの最後に壁があるっていうか。


 みんな笑顔で接してくれるんだけど、そこからオトモダチのラインまで隔たりがあるっていうか。


(うーん、わかんない。でもみんないい人なのは間違いないし、うーん)


 なんてことを、ステージの脇にヒジつきながら考える。そこでは今、おおきめな剣を五本もったおにーさんがいる。


 オジサンとスプリットくんの中間くらいの年かな。サっちゃんほどじゃないけど分厚い胸板をしてて、上半身が裸になったままそれらの剣を投げてはキャッチして、投げてはキャッチしてを繰り返してる。


 それをダンスしながらやってるのだ。


(すごいなぁ、わたしもできるかなぁ)


 なんでそんなコトを考えちゃうのか? それは――。


(あのオニーサン、なんとなくわたしに似てる(暗殺者スタイル)んだよなぁ)


 動きにムダがないというか、身体をうごかしながらも、いつでも相手の急所を狙えそうというか。


「ここにいたのか」


 振り返ると、我がパーティー最年長者が関心あり気な視線をステージ上に向けていた。


「オーナーが特別ショーを観せてくれるそうだ。新しい演目をいちはやく紹介してくれるそうだぞ?」


「ほんとに? みるみる! どこでやるの?」


「このステージの上でですよ」


 こんどはステージ奥にある垂れ幕から声が聞こえた。そこから姿を見せたのはまっくろなシルクハットをかぶった高齢の紳士。さっきよりも柔和で晴れやかな笑顔を向け、すでにスイッチが入ってるような感じだった。


 その姿を見て、練習していたオニーサンは投擲をやめすべての剣を回収する。この時もまったくミスなくすべてキャッチしてみてさ。いっぽんの手でそんな掴めるの? すごいなー。


 オニーサンが撤収して、ほかのみんなが見物にやってくるのを確認すると、ちょび髭ダンディなおじいさんはステージの中心で恭しく一例をした。


「では楽園へご招待いたしましょう。我がサーカスいちばんの花形、カニシュの艶やかなダンスをご照覧あれ」


 彼がその宣言をした時、上から一本の棒がぶら下がってきた。


 たくさんのスポットライトに照らされるまっしろなポール。その途中、命綱もなにもなしに、自分の手ひとつで身体をささえるひとりの女性の姿が見えた。


(あ、あの人だ)


「戯曲プードル・スプリングスとともに」


 おじいさんが軽快にステッキを振り回す。やがて、ポールが地面につくほどになると、彼はそっと舞台から姿を消した。そして、ステージに残されたのはカニシュ――彼女だけだ。


(うわぁすっご)


 なんていうか、薄着レベルマックスみたいな?


 肌がほとんど露出してて、服というより隠すとこだけ隠す布みたいな。そのどれにもフリフリやひもみたいなのが垂れ下がって、赤くてピンクでとてもキラキラしてる。


 光のあたりかたのせいか、今の彼女はとても輝いて見えた。髪の色がやや赤みがかったアプリコットになり、ウェーブがかっていた髪は、今はまっすぐ垂れている。ツヤツヤでサラサラで、身体がゆれるたびに艶やかに散り踊った。


「……ッフ」


 おおきなピンク色の唇。こんなたとえでいーのかわからないけど、なんかアヒルさんみたいに大きい。ヒミツを隠すように口元に指を添えた、そんなおねえさんと目があった。


 深いブラウンの瞳がわたしを射抜く。ほとんど裸にちかい彼女に見つめられて、なんだか逆にわたしのほうが恥ずかしくなっちゃう。


「おどりましょう?」


 まるで空を飛んでいるように、彼女は両手を手放し、両足を大股に開いた。


(ええ! うそ)


 落ちない。頭を下に、ほんとうならそのまま真っ逆さまに落ちていきそうな姿勢なのに。


「うっわ、マジか」


「どーなってんだい?」


 ポールで身体を支えてる素振りが見られず、驚いたのはわたしだけじゃなかった。なにも言わなくても色白長身おねーさんは目を見開いてるし、ちっちゃいグウェンちゃんも口をあんぐりと開けている。


「あぶないのでは?」


「そういう演目だ。しかしなるほどぉ、腰を巻き付けて摩擦で身体を支えるのか……イタそうだな」


 オジサンはしごく冷静のようで。ンもう、つまんないの。


 言ってることはわかるけど、じゃあわかった上でそれ見て「あぁ~摩擦ねまさつ、うんうん確かに」とはならないです。だって、ポールに身体を寄せたあの女性は、まるで重力がないかのようにその棒を登っていって、まわって、うわ、また大股開いたよなんかわたしのほーが恥ずかしくなってくる。


「これは……完全にオトコ向けの演目のようだな」


 はい、うちの弓兵が眉間にシワよせて一定の方向を見やっております。その先には興味深そうに彼女の演技を眺めるオジサンと、あとひとり。


「…………」


(気づいてねーし!)


 ガン見だよスプリットくん!


「ふんっ」


「あー、まあいいじゃねーかよビシェル。オトコってのはこういうの(・・・・・)に弱いもんさ」


「そうだな」


「何のはなしをしてるのですか?」


「オトコは単純だなーって話だよ」


 サっちゃんに肩をたたかれうなずくビーちゃん。とはいえ、彼女の蔑むような視線はおかわりありませんでしたが。


「よそ見をすると見逃しちゃうわよ?」


「え?」


 そんな声が、カニシュさんの声が聞こえた気がした。でもなんで? あんなに高く上り詰めてるのに声なんか届くはずが。


 その時だった。


「あッ!!」


 彼女の身体が重力を取り戻した。


(あぶない!)


 頭が地面に近づく。だめ、今からスキルを使っても間に合わない!


 ぶつかる。そう思った時彼女の身体が止まった。


(え?)


 ほんのちょっとした、小指がギリギリ入りそうなスキマだけを残して、彼女の頭と地面の距離がピッタリ止まったのだ。


「この程度で腰を抜かさないでちょうだい。公演はまだ始まったばかりよ?」


 こんどはハッキリと、妖艶な女性の囁きが聞こえてきた。

皮すっごい剥けそう

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