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弓兵のたたかいかた

近づかれたらオワリ

 せっかく起こしたのに消しちゃうっていうね。まあ火起こしくらいならいつでもできるけど、どうせなら炭にしておいたほうが良かったなぁと思いつつ、オジサンの先導でビーちゃんが戦いやすい場所を選んでくれました。


 大小さまざまな木。ちょっと起伏があって、大きな木の枝に乗り射撃を行うこともできそう。


 わたしにとっても絶好の戦場だ。


「ずぅっとあのチョーシだな」


 スプリットくんのつぶやきが、しんと静まり返った空気を震わせた。


 オジサンが「よし、ここでいいだろう」と宣言したとき、すでにビーちゃんの影はどこかに隠れてしまっていた。それからわたしたちを下がらせて、ひとり広くなった場所に立って、目を閉じている。


 自分は()だから。ビーちゃんに仕留めるべき点を晒して、ただじっとそこで待つ。


「アタイはパワーに自信はあるが、それも相手をぶちかます距離にいればの話だ。ビシェルだったらその気になればいちキロ先のエモノになって当てられるんじゃないか?」


「まさかとは思うがビシェルの腕はホンモノだからなぁ」


 弓兵の基本は遠距離からの一撃。相手に反撃や近づくようなスキを与えず、ただ一方的に相手を封殺する。そのために必要な要素はふたつ。近づかせる時間を与えぬ連射スキルと、ただのイッパツで相手の命を奪う狙いの正確さ。


 その点に関してエルフの横にならぶ者はいないそう。オジサンが言うには、エルフたちは森に生き、必要最低限の狩猟をすることでそのスキルを極限まで高めた。


 最低限の狩りしかしないなら、むしろ経験値は少ないほうじゃない? って思ったから聞いてみた。そしたらこんな答えがかえってきた。


 彼らは森に生きる動物たちを尊敬する。だから最低限の狩りにするため、相手が苦しむことなく一瞬で逝けるために究極的な領域まで達するのだ。


 そんなエルフ仕込みのビーちゃんである。たったひと月だと謙遜してた彼女ですが、その腕はとうにオジサンの免許皆伝をいただいてるようで。


「たいしたもんだ……もはや違和感すら感じない。以前はまだかすかな足音をくれたものだが、これではいつどこから矢がくるか――ぬッ!」


 とつぜんしゃがむ。その瞬間、鋭いなにかがその空間を通り抜け、その先の木にあたり、おちた。


「あいさつがわりってトコだな」


 それを見たスプリットくんがイタズラっぽく笑う。訓練用の矢は先端がまるくなってるけど、やわっこい素材じゃないので当たると痛い。ほんっとに痛いこれは経験談です。


「あと九本!」


 こんどはジャンプ。足元に白い筋がはしり、続けて空中にいるオジサンへ同じような筋が伸びていく。


 人は足で動くもの。だから足が地面に立ってないと動くことはできない。


 って、思ってたんだけどオジサンなんか空中で軌道変えてない? 身体をねじって次の矢を難なくかわしてくれました。


「あと五本!」


 叫んだときには次の一本が左から、そして一泊おいて右の茂みからも襲ってきた!


「時間差攻撃か、やるねぇ」


「スプリットだったらどうする?」


「あのくらいラクにかわせるさ。そっちはどうだ? まさか、先端がするどく尖った矢でもカラダで受け止めるとか言わねーよな?」


「はン! アタイの筋肉をそこらの有象無象といっしょにするんじゃないよ」


(んー、確かにサっちゃんの筋肉だったら受け止められそう)


 見たことないけど。でもどうなんだろ? こんどビーちゃんに聞いてみよっと。


「あと三本だぞ! どうしたこれで降参か?」


「そう思いますか?」


 頭上から声。みんなの視線を浴びて、ビーちゃんは次の一射を構える。


「スキル、一斉射撃(ボレーファイア)


 弓に二本の矢をつがえ、射出した。それは自分の意志をもつかのように左右へわかれ、そしてそれぞれがオジサンを目指し方向転換する。


「ふん!」


 標的となりつつも、冷静に剣を構え左右に振る。円を描くような軌道。そしてそれぞれの矢が両断された。


「危ないあぶない、もう少しでヒザに矢を受けるとこだった……さてあと一本だぞ。どうした、撃たないのか?」


「すでに撃ってあります。そして、すでにアナタのことは討ってあります」


「なに?」


 言い終わる前に、彼の足元から弓矢がせり上がる。


「うおッ!」


 全員が"まさか"って感じ。とくにターゲットにされたオジサンは反射的に身体をのけぞらせて、おっもしろいくらい自分のお腹を矢に晒した。結果として、それはオジサンのおなかにクリーンヒットいたしました。


「なんと、地面から矢が飛んでくるとは」


「スキル、根茎(ライゾーム)。先の戦いで会得した技です」


「地面に向かって弓を撃つとはおもしろい発想だな。それはどうやって?」


「わかりません。ですがなぜか、気づいたら"撃てる"ような気がして、それでマモノに有効打を与えたこともあります」


「完全に不意を突かれたな……この分なら、あと数年あれば本気の私ですら蜂の巣になってしまうだろう。よし、ビシェルの訓練はこれで終了として、残るはおまえだけだな」


「はい、わたしだけです!」


「ビシェルと同じように隠れて、お前の獲物で私の喉首を掻っ切ってみせろ」


 ジョーダンじゃないジョーダンを言って、それを耳にしたグウェンちゃんが顔を青くした。

「グウェンちゃんもそのうち慣れるよ」


「慣れたくありません」

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