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あたらしい技、あたらしい町

ふつーに考えて貫通された腕で生活するのムリそう

「これが、新しいスキル(トランスファー)?」


 ふさふさになった自分の身体を見る。指先から鋭利な刃物と化した爪が伸びて、ただザ・ケモノじゃなくて人間みたいにグーパーできる。


 だから短剣を握ることができたけど、こんなに鋭いツメならそのまま武器になりそう。


(あ、そうだ顔はどうなってるんだろ)


 ペタペタ、つんつん。


(お鼻のあたりがちょっととがってる? 近くに水たまりないかなぁ)


「大丈夫か!」


 マモノが消えたおかげで、重力から逃れたオジサンが駆け寄ってくる。マモノたちはまっくろい塊だけど、消滅したあとはほんとうに跡形もなくなくなってしまう。


 だから、今ここには激しい戦いの跡がない。


「うん、わたしはヘーキだよ! ねえねえこれ見て!」


 その場でくるりとまわって決めポーズ。黒っぽい服装が地味だけど、身体じゅうに生えた毛並みがふさふさ明るくていいコントラストになってる。


 欲を言うならもうちょっち暖色系が良かったなぁ、だって茶色って地味じゃない? まあライトブラウン系で明るいからいーんだけど黄色味があればもう少しおシャレだったんじゃないなかなーって。


「カッコよくなっちゃった!」


「あ、ああ。それよりも助かった」


「グレース!」


 スプリットくん、サっちゃん、ビーちゃんが駆け寄ってくる。みんなしてわたしの姿をまじまじと見つめてくる。


「本当にグレースなのか?」


「シツレーな。ちゃんとグレースちゃんだよ」


「これも異世界人のスキルだと言うのか」


「うーん、わかんないけどなんかスキルなんだって。異世界人だったらだれでも使えるらしいよ?」


「なんと……しかし、私はそんなスキル覚えてないが」


「ああ、ちがうのビーちゃん。ええと、なんか条件をクリアすると使えるようになるらしくて、身体能力がつよくなるとかなんか言ってたっていうかコレもどるの?」


 まさかの永続効果? いやさすがにソレは困る。まいにち毛の処理とかタイヘンそーだし。


「あっ」


 身体の内側に熱を感じる。それがだんだんと表面に伝わってきて、それが光になって、わたしの身体を包んで、はじけた。


「もとにもどった」


 全身の毛がなくなってる。ちゃんとしろい肌と人の顔。もとの自分に戻ってる。


変身(トランスファー)か……異世界人のことはよく知らんが、まさか人ならざる存在にまでなれるとは」


「わたしもよくわかんない。なんかアタマの中で声が聞こえて、気づいたらこんなんなっちゃったし」


「普段のグレースと動きがまるで別人だったな……アタイはパワーはあるけど、さっきのグレースを捕まえられる気がしないね」


「かんっぜんに犬っぽかったもんな」


「なんか褒めてないっぽいんだけど?」


「ほめてねーもん」


「スプリットくんひどい!」


「ほんとに何ともないのか? 身体に違和感は?」


 心配そうな目でオジサンがこちらの様子を伺う。あのヘンな人にヘンなものを飲まされてから、オジサンの過保護レベルが倍くらいになった気がする。ささいなことでも気にかけてくれて、たまーに気にしすぎな感じもする今日このごろ。


 でも、ふしぎとイヤじゃない。


「このとーりバッチリ元気だよ! だから安心して」


「グレースがそう言うのなら良いが……」


「まあ、なんにしても無事ならいーんじゃねえの? それよりなんか食おうぜ。オレ腹減っちまった」


「あっ」


 スプリットくんの提案に呼応するように、わたしのおなかが鳴き声をあげた。数人の苦笑を誘いつつ、わたしたちはそれぞれやるべきことを選んでいく。


 おいしいごはんを食べて、おばあちゃんから処方された薬を飲んで、わたしたちはまた次の町に向けて足を進めていった。






 旅の途中で別の旅人とすれ違ったり、商人と鉢合わせて買い物してみたりして、次の町までの旅はけっこー刺激にあふれていた。


 それもこれも首都に近づいてる証らしい。王都フラー周辺はいつも人が溢れているってオジサンが言ってた。今回到達した町も例外なく賑わっていて、この辺りだといちばん大きな町だそうです。


 じょーかくとし? って言うらしいんだけど、大きな町や都はまわりにグルーっと壁をつくるみたい。大昔、人が争っていた時代があったり、マモノたちが暴れないよう壁で囲うのだけど、ここは都会のように石造りの頑丈なものでなく、大きな木を並べて壁に見立ててる。


 オジサンやスプリットくん曰く「壁があるだけでもかなり文化的だ」らしいんだけど、わたし異世界初心者だしよくわかんないや。まあでもこれだけご立派な町ですからさぞかしご立派な名前なのだろうと思いきやですよ?


「この町の名前はヒガシミョーだ」


 オジサンがRPGの町の入口にいる人みたいなセリフを告げた。


(それって日本語では?)


「日本語?」


「ビーちゃんもそう思うよね!?」


「アタイもそう思ったよ」


「オレも初めてここに来たときはそう思った」


 先行するオジサンの背を追って、わたしたちはヒソヒソと日本人トークをくり広げる。


「ヒガシミョー……漢字だとどう書くんだろう?」


「ヒガシっつーんだから"東"だろ?」


「じゃあミョーは?」


「そんなの知るかよ」


「いや、もしかしたらヒガシでひとつの意味をもつのかもしれないぞ」


「たとえば?」


「"比嘉市"とか」


「だから"ミョー"ってなんだよ」


「それは私にもわからないが、たとえばネコの鳴き声とか」


「ブッ! なにその発想ビーちゃんかわいい」


「わ、私はいたってマジメにだな!」


「オイオイ、そうこうしてる内に行っちまうよ」


 サっちゃんがおっきな手でみんなの背中を押す。重厚な衝撃を受けつつ、ひとまず異世界トークはおあずけとなりました。


 で、オジサンの足は表通りから離れて細い道へ。名前は日本っぽくて、行き交う人が身につけてる服はヨーロッパ風味、だけどおうちはなんかヨーロッパっぽくないというか、なんだろ? 土を固めて四角くととのえましたよ的なかんじ。それがフクザツに入り組んでいる。


「オッサンどこ行くんだよ?」


 細い道のウラのウラまで入り込んでいく。なかなか止まらないオジサンに焦れたスプリットくんが声をかけ、オジサンはそれに返事をするように立ち止まった。


「情報収集といえば酒場だろ」


 言って、見上げた先にはジョッキみたいな看板があった。


「情報収集ってなんのだよ?」


 オジサンは少年の右腕に巻かれた包帯を一瞥して言った。


「仲間集めだ」

知力アタッカーとヒーラーはどんなゲームにも必須よね

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