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ケモノ

ケモ度ってあるじゃん?

 なんか知らないけど呪文っぽいものが浮かんできた。だからとりあえず叫んでみた。


 そうするとどうでしょう? ふしぎと力が湧いてきて身体から光がピカッてきたではありませんか!


 しかもですぞ? なんかピコンってアタマのなかで音がしたのです。


「ドーモ、チュートリアル、デス」


「だれ!?」


 思わず辺りを見回してもだれもいない。っていうか光っててよく見えない。どーやらこれがウワサに聞く「アナタの脳にちょくせつ呼びかけてます」だ。


「イッカイ、シカ、説明シマセン。シッカリ、聞イテクダサイ」


(あ、はい)


「スキル:トランスファー、ハ、プレイヤー、ノ、ステータスヲ超絶強化シ、固有ノスキル、ヲ、追加シマス」


 やったサイキョーじゃん。


「ナオ外部ルックスニモ影響ヲ及ボシソレニ伴ウ戦闘感覚ノ乖離ナドガアリマスガ身体能力強化ニヨル運動神経ノ伝達速度上昇ニヨリ違和感ナク動作デキサラニチョウゼツスキルハパーティーメンバーニモエイキョウヲオヨボスタイプモアリヤクワリブンタンガジュウヨウニナリマスガ」


「えっ」


 ちょっとまっていきなり早口にならないで追いつけないから。


「イジョウ、ガ、トランスファーノ、概要トナリマス。詳シク、ハ、ヘルプヲ、ゴ参照クダサイ」


「へるぷ」


 どこ? 今すぐほしいんだけど?


「グレース様ヘノ特別メッセージ、ヲ、預カッテイマス」


「まだあるの?」


「アナタノ、タメニ、用意シタノダケド、ナンカ、カッコイイノデ、コノセカイノ、基本設定、ニ、追加スルコトニナリマシタ」


「ちょっと待て」


 わたしだけのチートスキルじゃねーのかよ。


「条件、ヲ、クリアスルト、イセカイ、ジンハ、トランスファーヲ、習得デキマス」


「あースマホゲーでよくあるヤツ? よくわかんないけど誰かがよくやってた気がする」


 わたしじゃないけど。


 じゃあだれだ?


「ソレデハ、ゴ健闘ヲ祈リマス」


 やたら無機質で事務的な声が消え、まぶしい世界にいろんな色が戻ってくる。


 ふと気がつけばもとの場所。オジサンたちは変わらず地面に突っ伏してて、必死の形相でこちらを――見てるけど必死じゃないっぽい。


 なんか口をあんぐり空けてるのですが?


「グレース、なんだソレは」


「なんだって、なにが?」


 っていうかスプリットくんもこっち見てるし。え、サっちゃんビーちゃんも?


(なに? どゆこと?)


 わたしの顔にナニかついてる? ――ん?


「あれ」


 なんかモコモコする。っていうか手にも柔らかい感触が――これって。


「け?」


 ケ。


 毛。


「へ? へ? へ?」


 耳がある! いやあるけど上にあるっていうかなんていうか!


 手がパンパンしてる。これってにくきゅー?


 全身をまさぐる。あっちにも毛、こっちにも毛、いやここには元からほんのりあったけどそーじゃなくて!


「なんですとおおおおおおおお!!」


 ケモノじゃん!


 特殊な方々が愛好するジャンルじゃん!


「って、あ」


 わたしは叫んだ。空へ轟かんとばかりに叫んだ。


 ってことでみんなの視線を独り占めした。みんなってのはマモノ含めてでございます。


「ヒィ!」


 みんなイッセーに飛びかかってきた!


(あれ?)


 なんかみんなスローモーションに見える。


 マモノの突進を避けて、そのまま短剣を突き立てる。さっきまで見えないバリアに守られていたマモノたちは、わたしが繰り出した短剣を深々と受け止めた。


「攻撃が通った!」


「グレースうしろだ!」


(うん、わかってる)


 なんだろう? 見えなくても気配でわかる。どこから仕掛けてきて、それをどう捌けばいいのか。


(はえ)ぇ、いったいどうしちまったんだ?」


「みんなだいじょーぶだよ! だってチートスキルだもん!」


「チートだぁ?」


 サッちゃんが大きな身体を起こす。そうやってる間に、わたしは四体めのマモノを消滅させ、最後のヒト型をしたマモノへと突き進んでいた。


「気をつけろ! ヤツは魔法を――マジか」


 オジサンが言い切る前に貫く。それは自身が持っていた杖を落とし闇となって虚空へ散った。

グレースは"2"です

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