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魔族、まぞく、MAZOKU

ワンパターンすぎ? ええねんええねんそういうもんや。

「わざわざ見送りに来てくれてありがとね! ビーちゃん」


 町の入口にて、わたしは旧友に感謝のことばを述べた。


 いりぐちって言っても、ここはグレースちゃん一行がさいしょに訪れた場所じゃなくて反対側のほう。魔王城へ向かうための旅路、カニスのさらに奥へと進む門の下にいた。


「この先に大きな町があるはずだ。バーグと同じように、人間が滞在するため作られたと聞いてるから過ごしやすいだろう」

「わかった。ところでエルフさんたちは?」

「ちょっと確認したいことがあるらしくてな。例の洞窟に再調査へ向かっているんだ」

(えっ)


 ビーちゃんここにいていいの?


 わたしがそんな気持ちになってると、察しが良い弓兵はその心配を振り払うように言葉を重ねた。


「マモノも討伐したし、あの洞窟はもう安全だろう。それに、旧友と積もる話もあるだろうと言ってくれたしな」

「マジで! さんきゅーエルフさん!」


 わたしは洞窟の方に向かって叫んだ。

 あんずちゃんの耳が近くにあった。

 あんずちゃんの目がバツになった。


「んにゃー! う、うるさいですわよグレース!」

「えへへ、ごめーん」

「まったく、元気なガキどもだ」


 などとおじちゃんっぽいことを言いつつ、しょぼくれたヤブ医者は改めて町並みに視線を泳がせていく。


「しかしなんだ、魔族ってのはその日暮らしで物々交換が主流だと聞いてたが、少しは文化的な暮らしにシフトしてんだな」

「サンダーさん、それは偏見というものでは?」

「そうだそうだ!」


 うちのヤブ医者が魔族に対ししつれーなこと言ってます。っていうかみんないい人ばかりだったよ?


 あのウェイトレスさんは「これ好きだろ?」っておにくサービスしてくれたし。

 宿屋の管理人さんも「うめーから食ってみろ」っておにくくれたし。

 市場ですれ違った魔族さんから「よっ。これやるよ」っておにくくれたし。


(あれ)


 プレゼントに隔たりがあるような。


「ふむ……魔族はエルフのような生活様式を好んでると聞いたことはあるが」


 町並みを見渡し、ブッちゃんが少し考え込むような仕草をした。それに対し、ドロちんが追加情報を進言。


「魔族は世界に満ちるマナを吸収できるから、ウチらが食べるような普通の食事はいらないのよ」

「そうなのですか?」

「少なくとも数カ月は生きられるわ」

「そりゃすげぇ」


 サンダーさんの感嘆符。ひとつ気になったので博識ドロちんに聞いてみる。


「結局食べなきゃなんないの?」

「まあね」

「何を食べるの? やっぱおにく?」

「知らないわよ。そんなに気になるなら聞いてみればいいじゃない」


 言って、魔法少女はある方向に目配せ。その先にはさんざんお世話になりっぱなしだった例のウェイトレスさんがいた。


「なんでいるの?」


 ドロちんの辛辣口撃。

 しかし効果はいまひとつのようだ。


「かわいい子ほど崖から突き落としたくなるって言うでしょ?」

「答えになってないわよ」

「うふっ、それより見てよコレ」


 ウェイトレスさんは自分のしっぽを持ち上げかわいくフリフリ。より詳しく言うと、しっぽの先にくくりつけたリボンを示している。


「おめかししてみたの。どう? 似合う?」

「うん、すっごくよく似合うよ!」


 わたしは笑顔で答えた。その勢いのままオトモダチになれるかどうかアプローチ。


「ねえねえ、お名前はなんていうの? オトモダチにならない? わたしグレース! よろしくね!」


 よし、これで魔族オトモダチ初ゲットだぜ! と思いきや。


「あら、かわいいわね。でも、うーんそうねぇ……名前はこんど会ったときに教えるわ」


 軽く受け流された。


(くそう、やるな魔性の女魔族め)


「それより気を付けてね。これから先何が待ち受けてるかわからないから、うふふ!」


 堪えきれず、といった形の笑み。それに不信感を顕にしたドロちんがまた毒づいてみる。


「まるで何が待ち受けてるか知ってるような口ぶりね。しかもそれを楽しんでる」

「どうかしら……それに感謝してるのは本当よ? だってこの子たちをくれるんだもの」


 言いつつ、デーモンウェイトレスはそちらの方向に腕を広げる。ベリーちゃんとハインくんはノーリアクションで佇んでいた。


「くれるって、こいつらはモノじゃねーよ」


 最年長おじちゃんによる窘めのことば。それに対し、ウェイトレスデーモンは謝罪とも挑発ともとれるようなウインクを返した。


「こいつらの意思よ。ウチらには関係ないことだわ」

「ベリー、ハインよ。本当にここに留まるつもりか?」


 ブッちゃんが問いかける。それは最終的な確認とも、離れ離れになってしまう気遣いとも言えないようなセリフ。いつも冷静沈着な彼だからこそ生み出せる音色だった。


「うん」


 ベリーちゃんが、連日の暴飲暴食によりふっくらしてきたハインくんの腕をつかんだ。


「……」


 きゅっと締め付けられて、ハインくんは顔を赤らめ視線を遠くへ外す。そんな姿がかわいらしくて、わたしはいても立ってもいられず身体を動かした。


「ゲンキでね!」


 ベリーちゃんの手はご利用中なので、わたしはエンプティーあんどフリーなハインくんの手をゲッチュ。そのまま手元に引き寄せブンブンしてみる。


 やっぱでけえ。

 わたしの両手とハインくんの片手でセイムサイズみたいな?


「ずるい」


 それを見ていたベリーちゃん。はっと自分の片手をリリースしつつ、そのままお手漉きになったハインくんの手へ伸ばす。


「ボクも」

「あ、ああ」


 両手であくしゅ。よし、これでわたしたちはトライアングルフレンズだ!


「なにバカなことやってんの」

「ドロちんもやらない?」

「バカ言わないの。そんなことしてると、本当に名残惜しくなって別れられなくなっちゃうわよ」

「彼女の言う通りだな」


 発言者はビーちゃんだ。ちょっとだけ寂しそうな顔をして、それにつられてわたしも寂しくなって、そんなわたしの顔を見て、ビーちゃんは苦笑した。


「同じ空の下にいるんだ。また会えるさ」

「ゼッタイだよ! ゼッタイゼッタイぜーったいだよ! 約束だかんね!」

「ああ」


 わたしはビーちゃんに抱きついた。

 ビーちゃんは苦笑しつつもそれを受け止めてくれた。

 頭でおっぱいたゆんたゆんしたらグーで叩かれた。


「ベリーちゃんもハインくんもだよ! ゼッタイまた会おうね!」

「うん。ボクたちは、いつでもここにいるから」

「……また会おう」

「うん!」


 あたまにおっきなたんこぶ乗せて、グレースちゃんはバーグの町に背を向けた。背中にたくさんの笑顔を感じながら。


 ただ。


「魔王さま目当てねぇ……っふふ、これからおもしろくなりそう」


 そのなかのひとつは、とても邪悪な笑みをしていた。

『イングリッシュ・ポインター』English Pointer

 イギリス原産の大型犬。鳥猟犬として活躍し、獲物を探す役割を担う〇〇・ポインターの代表格。ポインターの由来は、飼い主に獲物の場所を伝える際、片前足を上げ"指差し = ポインティング"で示すことから。

 白地に茶、黒の短毛。引き締まった身体、長い四肢としっぽ、たれ耳で穏やかな性格をしてる。運動量が多く、訓練次第では万能犬として活躍できる。


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