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仲間からの依頼

ビーちゃんはギルドとか旅団とかそういう一般常識あるから。スッカラカンで呑気に旅してたグレースちゃんとは違うのだよ

「おしごと?」

「ああ。近くの洞窟に龍脈の泉があるらしい。私たちはその調査に向かっているのだが」


 困った風な、それでいてイジワルな顔でこちらを見る。


「前線役がいなくてね」

「おぉいいね!」


 快く返事をしたのは、我がパーティーじゃいっちばん後ろに控えるアルコールのデバフ中のヤブ医者。


「麗しいおねーさんのエスコートなら任せてくれ! 世間知らずとちんちくりんの相手ばかりで手持ち無沙汰なんだ」

「失礼な」


 あんずちゃんがボソッとつぶやきその傍では舌打ちが。

 よし、わたしは入ってないな。


「相応の報酬も支払おう。どうだ?」


 となりのアルコールをかわしつつ、ビーちゃんはこちらの面々に問いかける。とくに、リーダーと思しきまっくろ僧侶には熱烈な視線を送っていた。


 さすがエルフ仕込みの弓兵さん。カンが鋭いねぇ。して、その意図を汲み取ったブッちゃんはというと?


「人数は?」

「グレースともうひとり欲しい」

「そうか……どうだ?」


 僧侶がみんなに目配せ。

 みなさま存外渋い顔。


「困りましたわね、協力したいのはもちろんですが、先程の戦闘で刃がかけてしまって」

「確か、アンタ弓兵だったわよね。あのエルフたちもおそらくそう。魔術も心得てるはずだしウチはいらないでしょ」

「ふむ……前線の需要というのであれば、僧侶である拙者が赴く必要はないな」

「いやあるでしょ」


 ブッちゃんあなたステゴロやないかい。


「えーみんなどーしてぇ?」

「俺はいつでもいいぜ? 聞いたところによるとエルフはみーんな美人らしいな? っかぁーたまんねえ! 今すぐにでもイくとこまでイこうぜ!」

(なんだこのエロオヤジ)


 いつも以上にキャラぶっ壊れてんだけど。

 あちらのテーブルにふたりのエルフさん。

 両方こっちの様子にお気づきの様子。

 明らかな嫌悪感。


(だめだこいつ連れてけない)


 もう、こーゆーときスプリットくんが居てくれればべんりだったのに。


「仕方ない。ブッちゃんわたしだけで行くよ。ってことで料金はひとり分で――」

「ボクもいく」

「え?」


 ベリーちゃん?

 振り向けば、いちばん大きなおんなの子がいちばん小さな態度で挙手していた。


 顔の横におてて。いやーデカい手だな。


「貴方は?」

「ベリー」

「いやいやベリーちゃん!」


 わたしはベリーちゃんのもふもふにすっ飛んでいった。その間にブッちゃんがフォローにあたる。


「これは旅団宛ての依頼だ」

「でも、たすけがほしいって言うなら、たすける」

「いーのいーの! ベリーちゃんはこういうの慣れてないでしょ?」

「でもほら、こういうお仕事ってあぶないよ? もしかしたらケガしちゃうかも――」

「いいじゃない」

「ドロちん!?」


 ベリーちゃんへ思わぬ援護射撃。


「本人がやりたいってんなら好きにさせれば? っていうか、場合によっちゃグレース、アンタより役に立つかもよ?」


 それはない。

 と言おうとして蘇った先日の戦闘。


 ブッちゃんでも、たぶんサっちゃんでも苦戦したであろう大きなクマさんをおもちゃにしてた。


(よくよく思い返してみたらあのひっくり返し方ヤバくね?)


 関節極めてたやん?

 投げるとき腰入ってたやん?

 ヘタに暴れたら折れてたヤツやん?


(ベリーちゃんてもしかして)


 どこぞの妖怪兄弟の兄の如くよじのぼって肩口へ。普段なに気なくもふもふしてたけど、ちょっと押し込んでみると確かな筋肉の感触があって、わたしはベリーちゃんの顔をのぞき込んだ。


「だいじょうぶ。おっきなクマさんくらいならふつうに、できるから」

「ベリーちゃん……」

「みんなの役に立ちたい」


 アイ・コンタクト。

 これは説得できないや。


「んじゃいっしょに行こう」

「グレース」

「ビーちゃん。この子旅団に入ってないけどいい?」


 問いかけに、背筋を伸ばした弓兵は快く応えた。


「構わないさ。だが支払いはどうする?」

「ベリーちゃんに直接おねがい。グレースちゃんには指定の口座に振り込みおねがいしまーす」

「グレース、ここはカニス領だぞ?」


 ビーちゃんが呆れ顔で言った。


「役所も無ければギルド受付もないだろう?」

「あるよ」

「え?」


 ビーちゃんが振り向くと、そこにはウェイトレス魔族が両手としっぽに料理を載せていた。


「サンダーさん?」

「みんな何も注文しねーからよ。先にやっといてやったぜ」

(やったぜ、じゃねーしちゃんとおにく注文したよね?)


 チラ見。

 おにく発見。

 よし許す。


「って、ここにも人間のお役所あるの?」

「ここ以外の町にもいろいろあるよ。とくに人間と交流が深いとこはね」


 テーブルに揃えつつ笑顔で対応。さいごに食器が入った箱を置き、彼女はピンクの瞳を広げて言った。


「ギルド連中、金払いがいいそうだね。金がなんの役に立つのか知らないけど、少なくとも人間にとっては大事なんでしょ?」

(ええそりゃあもう)


 世の中金よとはスパイクさんのことばです。

 オジサンは「利権も追加しとけ」と申してました。


「それより話聞いちゃったんだけどヤバいことになってない?」


 しっぽを曲げたり伸ばしたり。ウェイトレス魔族はさも気にしてない風にだらだらした態度だ。


「さっさと魔王さまに伝えたほうがいいと思うんだけど」


 さも簡単そうに言う。

 だからブッちゃんは問う。


「できるのか?」

「あーそれはムリ」

(できないのかーい)


 できそうな風に言ったじゃん。


「魔王さまって基本ひきこもりだから滅多に人に会わないのよ」

「なによそれ」

「さいごに人前に出たのはいつだったかしら……たしか二十年くらいまえ?」

「なっが」


 ひきこもり歴なっが。


「ちょっと、アンタの領地でしょ? 龍脈がおかしくなってんだから危機感持ちなさいよ」


 事情のヤバさを知ってるらしいドロちんによる抗議の声。しかしウェイトレスは知らぬ存ぜぬって感じで背を向けバイバイスタイル。


「なるようになるでしょ? それに、なんとかしようとするアナタたちのような人が勝手にやってくれるんだからそれでいいじゃない。じゃーねー」


 言いえてもっとも? な言霊を残して去っていく。あとに残ったのはかぐわしいおにくとチーズの香りだけ。


「ってピザじゃん!」

「あ、ちょっとグレース!」


 ガシッと手づかみかぶりつく。

 チーズのびーる!

 ケチャップうめー!


「まったくもう、はしたないですわよ」

「ん、ふぁひふぁほ」

「だーしゃべるな! ウチのとこまでツバ飛んできたじゃない」

「……相変わらずだな」


 ベリーちゃんがヨダレを垂らし、サンダーさんがアルコールをぶっこみブッちゃんは厳かに目を閉じる。真っ赤に染まったわたしの口をあんずちゃんが拭き取って、それらからピーピーうるちゃいちんちくりんまで視線を巡らせ、ビーちゃんは呆れの壁を越え尊敬の念さえ入り混じった吐息を漏らす。


 彼女のつぶやきは、店の喧騒に霞んで消えた。

魔族は人間よりフリーダム。それは彼らの設定にあるけどそれは後々の話


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