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修羅場はとっくに越えてきた

ホンキ出されたら詰みな状況、あるよね

「まずは耐久力だ」

「ッ!」


 消えた。

 目の前にいた。

 頬に赤い筋ができた。


「ほう、躱したか。当てるつもりだったんだがな」


 鋭い爪に残った皮膚片を舐め取る。気持ち悪い。ううん、それよりもこいつの素早さに警戒しなきゃいけない。


「そうだな、まずは身体能力を把握しておかなければなるまい」


 ヤツが身構え、わたしは反射的に俊足(すごくはやい)を発動させる。

 直進する初撃。

 次は右と見せかけ下からの加撃。

 フェイントを織り交ぜつつ三、四、見えない。


「いいぞ! 今までの異世界人とは別格だ」

(いままでの?)


 スキを見極めて反撃する。

 悪魔のような姿に変貌したメイスは飛び退いた。

 ううん、ちがう。


「いいぞ、いいぞ! しっかりレベルアップしてきたようだな」

「あんただれ?」


 こいつはメイスじゃない。

 姿形が変わっただけじゃない。

 中身もちがう。

 誰かの意識がそこにある。

 メイスだったモノはニヤリと笑った。


「カンも鋭い。まるであの女を見てるかのようだ」


 他人を実験動物としてしか見てないような口ぶり。


 こちらに対して、人との会話でなくデータをとるようなしゃべり方をする。あの猫背白髪ガリガリ男とはまた違った気持ち悪さを感じる。


「では、次に耐久テストだ」

「ッ! ガハッ!」


 気付いた時、わたしは空中へふっとばされていた。すぐに腹部の痛みに気づき、地上にいるヤツの大勢から、腹を蹴り飛ばされたのだと気づく。


「この程度で両断されては困るぞ! 頑強スキル程度は備えておきたまえ」

(くっそ!)


 こいつ分身の術でも使えるの!?


「へあッ!」


 目にも止まらぬ連撃に襲われる。まるでオジサンの、いやそれ以上に素早い。とにかく急所だけをガードしつつ攻勢が止むのを待つ。


 待つ。

 耐える。

 止まらないッ!?


「落ちろ!」

「ギャンッ!」


 後頭部に一撃をくらい、わたしの身体は地面に激突した。


(ぅ……ぅぅ)


 いてえ。

 この痛み、いつぶりだろう。

 オジサンとはじめて遊んだ、いんや訓練したとき?

 スプリットくんが手に持ってた剣をすべらたとき?

 サっちゃんにあたまゴッツンコされたとき?


(歴代ベストファイブくらいかな)

「すまない、久しぶりの運動で手加減を忘れてしまった。立てるかね?」


 地面に降り立った悪魔。その背には翼が生えており、風もないのに紫の髪があっちこっち。


(だれかは知らないけど、こいつすごく強い)


 口ぶりからして、こいつは異世界人のことを知ってる。そもそも異世界人の可能性? だとしたらどうやってメイスを操って……そういうスキルがあるのかな。


(わからない)


 どっちにしろ、ここで倒れるわけにはいかない。


「素晴らしい! 大してダメージも受けてないようだな」

(どこがだ)


 ボロボロだよ。

 あちこち擦り切れてるし肌露出してるし。

 っていうか下着も切れちゃってない?

 あーもうサイアク。


(ったく、新しい装備買うのもタダじゃないんだからね)

「さて、盛り上がってきたところ悪いが実験終了だ。時間切れに近づいているのでね」


 声色がにわかに低くなる。今まで以上に殺意がこもった視線。悪魔は空間からひと振りのナイフを取り出した。


「これは特殊な武器でね。これでダメージを与えると異世界人のステータスに直接介入できる。たとえば死に戻りプロテクトを解除してしまったり……言ってる意味はわかるかい?」

(しにもどり)


 なんだかよくわかんないけど、とりあえず当たったらヤバいのね。


「死ぬのは怖いかね?」

「……」


 怖いかって?

 こえーよ。

 自分自身の死も。

 他人の死も。

 けど死をバックに脅されたってムダだよ。


(こちとら経験済みなんだわ)


 死の恐怖を体験した。

 それと同時に仲間の死も体験した。

 もうあんな経験はこりごりだ。

 だから、もう死なん。


「死んでやるものか」

「死ね」


 眼前に。

 わたしは呪文を唱えた。


「スキル、変身(トランスファー)

「なにッ!」


 にくきゅう。

 あんどつめ。

 攻防一体型のハンドに武器は不要。

 ナイフだってガッチリ掴んじゃうぜ!


「わん!」


 そのまま腹パン。爪を立ててるのでパンチというよりひっかき? クリーンヒットしたら胴体まっぷたつのイメージだったんだけど受け身とられた。


変身(トランスファー)か。まったくやってくれるな」


 腹部に裂傷をつくりつつ、悪魔はしかめっ面で不快感を演出。


「まったく、異世界人限定スキルとほざくなら我々も使用可にすれば良いものを……時間か」


 マモノが手首の内側を確認した。何かの前兆? 身構えるわたしに対し、悪魔は悠然とした佇まいで言葉を放った。


「その状態でどの程度の力を発揮するか見てみたかったが、残念ながら叶わぬようだ。その代わりといってはなんだが、ちょっとした置き土産を残していこう」


 ふと、目の前の異形から何かが抜けていく気配を感じた。

 終わった?

 いいえ、第二形態です。


「グボォア!」

「ちょっ」


 メイスが膨らんだ!


「いやいやいやいやいらないッスそんなイベント!」


 巨大化。

 凶暴化。


「わひゃあ!」


 ストンピング攻撃。ドラゴンとほぼ同じサイズだってのにムダに素早い。周囲のマモノも巻き込んで大暴れ。気付いた時にゃ手に巨大な金棒まで装備しとりましたよ。


「グレース!」


 金棒は、ブッちゃんが担当していたマモノを一掃してくれた。よって僧侶がこちらに合流しつつ、ひとり安全圏から遠距離爆破してたドロちんにも援護をお頼み申す。


「ドロちん!」

「わかってるわよ!」


 巨大化の前には飛行魔法さえ無力なり。

 むしろ眼前にある故タゲ取りやすいみたいな?


 もう片方の手に迫られつつ、ドロちんは伸びる腕を逃れるため地上に降り立った。そこへマモノがなだれ込むも、か弱い魔法使いの前に女騎士が立ちふさがった。


「手出しさせませんわ!」


 あんずちゃんはスレイプニールに騎乗していた。こうなったらもうあんずちゃん無双。迫りくるマモノをちぎっては投げちぎっては投げ、地上戦と違い、馬上のあんずちゃんは別人のように鬼神なのです。


「はう! ――はい?」


 突然、あんずちゃんがそんな吐息と共に胸を抑えた。後方支援する魔女っ子、股下のスレイプニールも心配そうに彼女の様子を確かめる。


「じょうけんがととのいましたって、なんですの?」

(じょうけん? あっ)


 あんずちゃんがまぶしい。


 甲冑のお手入れを欠かさないあんずちゃん。そんな彼女の身体から淡い光が溢れ出し、それが反射板みたいな鎧に乱反射して明るさ五割増みたいな?


 これってもしかしてアレじゃね? いまわたしがなってるヤツ。


(ってことは、あんずちゃんのモフモフが見られる!)


 こーしちゃいらんねえ!


「あんずちゃん! 変身できるよ呪文唱えて!」


 わたしは声高らかにシャウトした。

メイスに乗り移ってたヤツ、端的に書けばラスボスです


あとグレースちゃん、武器を素手で掴んだ時点で死に戻りプロテクトが解除されてます。だからわりかしピンチな状況だったりするんだよね


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