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異世界人の身体能力はいかほど?

ボスっぽくない。そりゃそうだ、ボスじゃないもん。まあ、ボスなんだけどね

 足場を失う。それでも彼は無防備だった。


「ティッくん!」


 ドロちんが打ち出した指向性爆弾。それが炸裂したとき、いかにもスポーツマンのような濃い顔の異世界人はすこし動揺した様子を見せていた。けどそれでおしまい。後は目を閉じたまま微動だにせず、ただ舞台の上で首をつられる瞬間を待ちわびている。


 今がその時だ。


 足場を失った身体が落下し、それによって生まれた風が彼のオールバックを乱す。そして激しい音と共に、彼の身体は宙吊りになった。


「はははははは!!」


 それを見届けた悪徳政治家が嘲笑う。


「残念だったな! どこの不届き者か知らんが、貴様らの目論見は失敗した! 後悔の念と共に死ぬがいい」

「アナタがメイスだね」


 雑兵を一掃して目前まで迫る。標的の名を確認すると、その男は唇を引きつらせた。


「そうとも! 私がメイス。この町の真の支配者だ!」


 年若く見える自信たっぷりの表情。ただ伸ばしただけの紫の髪。役人らしき衣装を着崩し、その胸元はムダにはだけてる。


 彼は腕を掲げ、首に全体重をかけ揺れる異世界人を示した。


「我に逆らうものはすべてこうなるのだ! はーっはっはっはっは!」

(ふーん、そう)


 じゃあ、わたしの敵ということでよろしいか?

 高笑いしてるトコわりーんスけど、キミ、もう間合いに入ってるよ?


(約束があるし命まではとらないけど……それはそれとして)

「いつまでそーしてるの?」


 ぷらぷらしてる身体に聞く。

 メイスは腹を抱えて笑った。


「ぐぁははは! いつまで? この状況を見てまだわからぬか! 貴様らは敗北したのだ。諦めて殺されるがいい」

(うるさいなぁ)

「ティッくんさー。もう少し計画性ってのないの?」


 周囲を示す。

 ドロちんの爆撃。

 あんずちゃんの薙ぎ払い。

 ブッちゃんの拳。

 サンダーさんはどこぞに隠れたか? まあいいや。


「どっからどー見てもひとりじゃムリでしょ」

「……ヘッ。大きなお世話だ」


 ようやく、首を括られた異世界人の目が開いた。


「ったく、ひとりで充分だつったろ?」

「ティッくんがどのくらい強いか知らないもん」

「俺か? つえーぞ。少なくとも、そこで口あんぐりしてるクソよりはな」


 へ? と思って振り向いた。


「ッ――――ぁ――? ――――ッ!」


 悪徳政治家がしちゃいけない顔してた。っつーかめんたま飛び出てね?


「おいそこのクソ役人よ。一度だけ聞くぜ」


 ティッくんはぷらぷらしたまま男に尋ねた。見栄えも何もないからさっさと降りてほしいんだけど。


「なぜ人を人とも思わぬようなことをする? 場合によっちゃこの場でテメーをぶっ殺す」

「ば、バカな!?」


 メイスは正気に戻った。


「なぜ生きてる! く、首を吊ったのだぞ!?」

「そんくらいで死ぬわけないじゃん」


 わたしたち異世界人だよ?


(あ、でもんー。戦闘経験のないチコちゃんやスティさんはわからないかも)


 試すわけにもいかんのだ。


 さて本題に戻ろう。

 ティッくんがメイスに問うて、メイスはまだまだ混乱中。このままじゃ話にならなさそーなので、こちらの疑問をインタビュー。


「この後の計画はなんか立ててた?」

「ぁあん?」


 首だけをこちらに向ける。その絵面で気味わりーな。


「計画なんてねーよ。ただこいつをぶっ飛ばすだけだ」

「その後は?」

「逃げる」

「この人数の兵士相手に?」


 何十人いると思ってるの?

 ってか百いそうじゃない?


「だからひとりで充分だって!」

「ほんとは?」

「……ま、まあ、さすがにこの人数は驚いたが」

「んもう、だから助けてあげるって言ったのに」


 一対多に勝機なし。大人しく逃げろとはオジサンのお言葉です。条件が揃えば、人混みに紛れて数十人は相手できそーだけど、隠れる場所もない広場でこの人数はムリだって。


「ふざけるな!」


 この中でもっともふざけた政治家が叫んでおります。


「舐め腐った態度を! だれか、こいつにとどめを刺してやれ!」


 すぐさま忠実なソルジャーが舞台上へ。剣に槍などを携えサンドバッグと化した異世界人に穴を開けようとしております。砂じゃなくて血が出ちゃうので回避推奨。


「めんどくせえ!」


 首を支点に体重移動。サーカスブランコの如く揺れてからの足蹴り。ものの数秒で襲い来る悪漢を退けた。


(いやいやまてまて)


 あなたの首ミチミチ言うとりません?


「おえぇ」

「ダメじゃん」


 本当の意味で自分の首締めとりますこの異世界人。


「悪あがきもそこまでだ。その手錠は我が下僕、アル特製の合金でできている。たとえ異世界人とて外せまい! おい、こいつを銃殺の刑に処せ!」

「ふーん……まあ確かに頑丈っちゃ頑丈だな」


 長筒を携えた兵士を冷静に観察しつつ、ティッくんの手首からカチャカチャ音がする。あ、言っときますけど、わたしだってこの間も一生懸命働いてますよ? ほら、今もひとり我が特製、斬られると激痛で立っていられなくなるナイフの犠牲者をですね?


「だが、それだけだ。スキル、頑強(がんきょう)!」

(あ、サっちゃんが使ってたヤツだ)


 呪文はちがうけど。

 効果は知らない。なんか筋肉がめっちゃ膨らんでた気がする。ってことはティッくんも?


「あっ」


 パリン。

 手錠が割れた。

 メイスが顔芸。

 その流れでロープも引き裂く。


「あ、アル! 貴様手を抜いたな!」

「滅相もございません!」


 段下のドワーフっぽい小男が、情けない声と共に両手を組み許しを請う。


「あれは正真正銘の特注品。異世界人といえど破壊するなど」

「安心しろ。俺のパワーが規格外ってだけだ」

「ひい!」


 壊した手錠をくるくる回しつつ、ティッくんは悪名高いお役人へと迫っていく。


「あっけねー幕引きだな」

「近寄るな! わ、私は、たかが流れ者の異世界人が口を利けるような存在ではないのだ!」

「言いたいことはそれだけか?」


 バリバリのスポーツマンな風貌。ヤンキーな態度。それ相応の筋肉。ガンギマリの黒い瞳に射抜かれ、周囲に衛兵なし。これぞ万事休すというヤツよ。


(なーんかあっけないなぁ)


 テトヴォに巣食う悪の親玉ってくらいだから、もうちょっと粘るというか、一筋縄じゃいかない相手だと思ってたんだけど。


(まいっか。それよりも、ティッくんがやり過ぎないよう見張らないとね)


 じゃなきゃヤッちゃいそうだし。きちんと命だけは助けて、ウォルターさんに引き渡さないと。


(そういやウォルターさんたちどこだ?)


 そう思った時、背後で爆発が起こった。


「ッ! いやいやドロちん!?」


 そっちまだ逃げ遅れた人いるんだけど?

 急いでやらかした魔法少女を探す。

 ちょっと待て、爆発と別方向にいる。

 彼女も驚いてる様子だ。


「どういうこと」


 また爆発。中心部にはほぼいないけど、その周辺にはまだ逃げ遅れた一般人がたくさんいる。そんなところに炸裂すればどうなるか。


「大丈夫か!」


 異変を察し、いちはやくブッちゃんが救護活動にあたった。どこぞに潜んでいたサンダーさんも異変に気づき駆け出していく。そのスキに、背を向けた異世界人を捕らえようと兵士の手が伸びていくが、それさえも爆風の中に消えていき、煙が上がり、最後には倒れたまま動かなくなる人だけが残されていく。


「ひい! おたすけぇ!」


 逃げようとする武器商人。とりあえず後ろからのしかかり取り押さえとく。存外パワーがあって暴れられたので、しびれ薬を仕込んだナイフでつんとつつき無力化した……死んでないよね?


「グレース!」


 混乱が伝播するなかブッちゃんがこちらに合流。


「ウォルター殿は何をしているのだ! これでは一般市民まで巻き込むではないか!」


 問答無用のシリアスモード。まっ黒顔面の眉間にしわ寄せ、子どもがこんな顔で寄られた日にゃあ涙不可避よ。


「そやつがメイスか」

「んーにゃ、こっちは武器商人のほう。メイスはティッくんが担当してるよ」

「ティッくん? まあいい。そいつがアルだな……ん?」


 正義感溢れる僧侶。今は険しい表情にて、しびれ薬で身動きできない小男を凝視中。


「なんだ、この男から溢れる邪悪な気配は」

「じゃあく? 言うほど悪い人じゃなさそーだったよ」

「そうではない。少し見せてくれ」


 ブッちゃんにマウントポジションを譲る。彼がのしかかったらシャレにならんので、黒い顔に青い服の僧侶はまたぐような形で気絶中の武器商人を観察した。


「……これは」

「ブッちゃん? え、ちょ」


 わたしはその場から一歩下がった。

 慈悲深き僧侶が、これまで見せたことのない激しい怒りを示していたからだ。

絞首台。ここで紹介したタイプもあれば、床が開いて落下し、頚椎骨折で逝くタイプもある。どこぞのイングランドでは首吊った後内蔵をえぐり出して四つ裂きなんつーフルコース処刑もあったんだ☆


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