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異世界人救出計画

モブっぽいキャラもモデルがあるのです

「気に病むことはない。メイスとアルの件は、すべてキミに任せると言ったはずだ。責任は私が引き受けよう」


 沈痛な面持ちになった女性の顔。

 そんな彼女に、彼は威厳あるやさしさで包みこんだ。


「今回は、そこの魔法使いが優秀だった。名前は確か、ドロシーと言ったな」


 その問いに沈黙と勝ち誇った表情で応える。

 挑戦的な態度に、ウォルターさんはただ笑った。


「本来であれば、異世界人の処刑は一週間後のはずだった。しかし昨晩、その異世界人が騒いだらしくてな。急遽、明後日に変更になったらしい」

(あっ)


 わたし、やっちゃいました?


「なるほど、そのままそっちの要求を呑んでたら異世界人は助からなかったのね」

「こちらとしても想定外だった。申し訳なく思う」


 彼はただ謝罪のことばを述べる。

 本当にそう思ってるかはわからなかった。

 状況を整理するため、今まで黙っていた黒人僧侶が対面に質問を投げかける。


「明後日に異世界人ティトの処刑。その(かん)メイスの行方は?」

「明日は評議会がある。そして教会連中と会合と、よくつるむ連中との晩餐会。どのタイミングでもヤツの協力者がいる。逮捕しようにも、何かと物言いをつけ拒否したり、側近のアルと共に武力を用いて対抗されるのが落ちだろう」

「打つ手なしか……あるいは、こちらも武力で対抗するしかない」


 その時、彼の目が光った。


「まさにそれを頼みたい」

「それとは?」

「兵を動かすとなると、ヤツの仲間に反対されるでしょう」


 ブッちゃんがまさかって顔をした。


「テトヴォの兵を使えないと?」

「手続き上どうしても。まったく、首長でありながら情けない話だ。代わりに私兵なら動かせるが数が足らない――だからこそ、レブリエーロで活躍した手腕をこちらでも発揮していただきたいのだ」


 んー、それってつまり。


「処刑場で大暴れ?」

「もうちょっと言い方ありませんの?」

「同じことよ。ウチは爆弾の実験ができれば上々だし。それにそっちだって、悪人を逮捕できるなら多少の犠牲は仕方ないって顔よ?」

(え?)

「……なるほど」


 ウォルターさんは表情を変えず、そのことばを受け止めた。


「報酬についても話さなければな」


 言って、彼はいちど姿勢を崩した。

 話題を変えるよという意思表示。

 そして、堅苦しい話はやめようという意思表示。

 ドロちんもそれを飲み、後は任せたとブッちゃんに振る。


「聞けば、貴方方は貧相なところで宿泊してるとのことだが」

(ひんそー)


 まあ、そうだけど。

 泊まれる場所がそこしかなかったからだし?

 つまりはそっちのせいだし?

 なんか納得いかないなー。


「それでは寝苦しいでしょう。こちらで別途ホテルを手配しましょう」

「それは、ありがたいですわ」


 あんずちゃんに同意見。

 ブッちゃんの活躍? もあり、確かにいくぶん快適にはなりましたが、それでもやっぱり気力体力全回復! とはならなかったのです。


「信頼関係向上に努め、こちらが提示できる情報はなんでも提供しましょう。更に」


 ダンディツヤツヤオールバック軍服オジサンがとなりに目配せし、それを受け取ったスタイリッシュ軍服レディが妙な木箱をぽんとテーブルに置いた。


 ぱかっ。

 じゃらっ。


「おぉぉ……」


 金貨だ。

 箱いっぱいの金貨だ。


 これにはグレースちゃんはもちろん、あんずちゃんブッちゃんドロちんみんなビックリだぜ。


「あのクソ犬め、これでお礼のつもり?」

「ん? ドロちんなんか言った?」

「なんでもないわ」

「今回の報酬です。別途成功報酬もございますが、不足ですか?」


 気を取り直したルディさん。

 ドロちんにややケンカ目線でそれをご提示。

 熱視線を冷ややかに受け止めつつ、うちの魔女っ子は満更でもないご様子。


「こ、これだけあればあの鎧も」


 あんずちゃんが生唾飲みつつそんなつぶやき。

 ごくり。そんな音がこちらまで聞こえるようだ。

 ただね、我がパーティーには百八どころか八百万(やおよろず)の数まで煩悩退散させた子がいるんですわ。


「このような額、受け取れん」

「ブッちゃん!」


 それはもったいないよ!

 もらっちゃいなよ!

 声を大にして言いたい!

 けど、なんか人として大事な何かを失いそうな気がする!


「どうぞご遠慮なく。報酬を受け取ったからと言って、他に無理難題を強いることはしない」

「……わかった。しかし今は保留にしておこう。そちらで預かっていてほしい」

「そういうことなら。ルディ」

「はい」


 言われたルディさん。まばゆいコインが入った箱を閉じ、テーブルを離れ隠してしまった。

 それから、ウォルターさんはこちらの面々を見渡して、はじめて会った時と同じ仮面をつくった。


「交渉成立と受け取ってよろしいか?」


 ブッちゃんが代表としてみんなの顔色を伺い、問題ないことを確認した後に肯定の姿勢を示す。


「テトヴォ首長としてできうる限りの援助をさせていただく。さしあたっては今後の方針についてだが――」


 それから、長い作戦会議が始まった。

 ウォルターさんが提供してくれるホテルの場所、ティっくんの処刑会場、当日の双方の動きと準備。


 見せしめ、あるいは娯楽として。処刑場にはメイスと武器商人のアルも姿を見せる。わたしは生きるために、あるいは自己防衛のためにたくさんの命を奪ってきた。だけどこんな下らない理由で人を殺すなんて許したくない。


「決行は明後日の昼。我々は表立った動きができない故、異世界人の命はそちらの活躍にかかっていることをお忘れなきように」

「むしろ好都合よ。っふふ、腕がなるわ」

「ドロシーさん。あまりムリしないでくださいな」


 すべての話を終えることには、陽が完全に登りきり窓の向こうから暑い日差しが降り注いでいた。


 ウォルターさんは他に用事があるみたい。ホテルの紹介状をもらい、わたしたちは彼らより早く部屋を出る。


「次に合う時は、おそらく戦場でしょう。市民を巻き込むことは心苦しいが、互いの目的達成を祈る」


 最後まで本心が読めなかった。そして案内された道順と逆に進みエントランスルームへ戻っていく。その途中で、わたしはひとつの疑問をぶつけてみた。


「ねえドロちん、その爆弾ほんとーにダイジョブ?」

「ウチが今まで失敗したことある?」


 階段を降りつつ、パーティーの魔法担当がない胸を張った。


(失敗したこと)


 たとえば野宿中に炎魔法が暴発炎上したアレとか?

 風魔法で洗濯物を乾かそうとして、服ごと吹き飛ばしちゃったこととか?

 そもそも、さくらとの一件は失敗なのではなかろうか?


「信じなさいよ」

「えへへー」

「それにしても、ドロシーさん今回はなんかアクティブでしたわね」

「だってイベントだし。逃げようとしてもムダだったわよ」

「イベント?」


 なんでもないわ。ドロちんはそう言ってはぐらかした。


「今後の方針が決まったな。計画決行日までは各々で過ごすことになるが、何かあるか?」

「何かって言われてもなー。ふつーにお仕事して、武器のお手入れして待ってればいいんじゃない?」

「同感ですわ。結局のところ、いつでもどこでも戦う準備はできてますもの」

「なら、俺の仕入れた話を聞くつもりはないか?」

「サンダーさん!」


 よれよれの緑コート。

 ボサッとした白髪混じりの髪。

 無精髭に頭をぽりぽり。


 エントランスホールの一角にて、イケオジとも枯れてるとも何とも言えない、ただ一言で言えば侘しい淋しい中年男性がそこに立っていた。

モブキャラにも設定や人生がある。けどそこに介入できるとしたら?


★★★★★で評価するとグレースちゃんが何でもしちゃうよ!

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