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依頼の依頼

少年は大切なものを盗られた

「練習じゃちゃんとできたんだから」


「それさっき聞いたし」


 隕石暴発魔の主張は露と消え、さくらは少年イギーが捕まえてきた虫っぽいのをひょいと取り上げ、そのまま窓の外へ放りだした。実際の現場は見てないけど、きっとドロちんも同じ感じで放り出されたのだろう。


「ああ!」


 少年が必死に飛び跳ね取り返そうとする。そのたびに真っ白でぷよぷよなおなかとおへそがチラリと伺えて、小動物のようなかわいさを演出していた。


「それで思い出したわ! あの時あんたヘンなスキル使ったでしょ」


「はあ?」


 当時を思い出し、恥ずかしさに手をワナワナするドロちん。しかしすぐに態勢を立て直し、なんとか一矢報いてやるといった気概で窓際のさくらをビシッっと指さした。


 視線だけで相手を制圧できるさくらのそれに、ドロちんは真正面から立ち向かっていった。


「うちの魔法ぜんぜん効かないし瞬間移動するし、いったい何なの?」


「ヒミツだ」


 納得できないドロちんが何か言おうとして、それを遮ってさくらは周りを見渡した。


「つーか場所変えね? 居心地わりーんだけど」


(あー)


 さくらに習って周囲の様子を見てみましょう。こんだけ騒いでくれたもんだから周囲の視線を浴びまくってちゃいましてね、好奇の視線やケンカかやれやれムードのそれならまだ良いのですが、中にはめーわくそうに眉をひそめたり冷ややかな視線をくれたり、ギルドの受け付けさんまでこちらに無言の笑顔という威圧感。


「……居心地悪いですわね」


 乾いた笑いと共に、今は甲冑を脱ぎ捨てた姿の女騎士がつぶやいた。


「ったく、クソガキふたりのお守りとかやってらんねーぜ。来い」


「あ、さくら!」


 さくらが背を向け、上階につながる階段へと足を運んでいった。






「それで、その子は今回の件とどう関係するのですか?」


 石壁に囲われた空間にあんずちゃんの声が響く。暖かい外と比べ、石のおうちはひんやりした空気を内包していた。


「大切なものを盗られたらしい。バッジだかネックレスだか」


 石でできた建物にもいろんな種類があるんだなぁ。以前お世話になったティベリアさんちは、暖炉のまわりだけデコボコした石でつくられていた。けどこっちはほんとうに壁ってかんじの平らさで、石と石の間は接着剤のような白い境界線に彩られている。


 うろ覚えだったらしいさくらは、説明の続きを視線で求める。パスされたイギー少年は首を横に振った。


「ブローチ」


「ブローチってあのブローチ?」


 服とかに取り付けるおしゃれアイテム?


「他に何があるのよ」


 黒歴史が判明したロリっ子がまだ何か言ってるけどここはスルーの方向で。


「つまり、イギーくんはブローチを取り戻したいのですね」


 キネレットちゃんいしたように、あんずちゃんはいたわるようなやさしい口調と眼差しを少年に向けた。まっさらな瞳で見据えられ、少年は顔を赤くしてうつむいた。


「うん」


「話がよく見えないのだが」


 難しい表情を真っ黒な顔に張り付かせ、ブッちゃんは顎に指を当てていた。


「数ある被害者のひとりであることは間違いないだろうが、なぜさくら殿が保護している? ギルドが認知してない件ということは、まさかこの少年より個人的な以来を受けているのか?」


「それこそまさかだ」


 さくらは前髪の白い部分だけを弄り、となりに座る少年の背中をポンと叩いた。


「あう」


「このガキ頼んだ」


 この場にいる全員が「え?」って顔した。


「盗賊のアジトの場所を知ってるんだと。おれはそういうの興味ないから、盗賊退治がんばってくれ」


 あんずちゃんは口をあんぐりと開け、ブッちゃんは彼女の意図を探るように目を細める。わたしもビックリというか、困惑と驚愕の堺を行ったり来たり的なかんじ。


 少年は何か言いたそうにおねーちゃんへ視線を向ける。そんな中すかさず抗議の声をあげたは、我らがパーティーもっとも短気でケンカっぱやいロリっ子魔法少女でした。


「はあ? こっちだって願い下げよ」


「まあ聞けよ。実はな、このガキと約束しちまったんだ」


 言って、こんどは少年を抱き寄せみんなの前に猛プッシュ。


「おれが信頼できる人たちに盗賊退治を頼むって。ほら、おれって一匹狼だろ? か弱い女の子独りで盗賊のアジトのど真ん中に突っ込んだらいろいろとまずいじゃん?」


(それはない)


 むしろ盗賊たちが裸足で逃げ出すと思う。


「頼むよ、こいつおれが行かないって言い出したらグズり出してさ……だから、今言った内容ならおっけーって取り付けたんだよ」


「そんな勝手な」


 困惑気味なあんずちゃん。ブッちゃんに至ってはガッツリ腕組みの上目を閉じてしまった。では、我らがコンクルージョン団長とツンツン魔法少女のやりあいをお楽しみください。


「ワケもわからずはいそうですかなんて受けるはずないじゃない。それとも、それなりの報酬を用意してくれてるのかしら?」


「おれの依頼じゃないし。どーしてもってんなら旅団に問い合わせとけ」


「ざけんな! アンタが請け負った仕事をこっちに投げてるだけでしょ!」


「細かいことはそっちで聞き取ってくれ。そんじゃ」


「あ、こら待ちなさいよ!」


 さくらは一方的に宣言し席を立った。そのまま部屋の出入り口へと足先を向けようとして、彼女の細腕を、おなじく華奢な子どもの手が掴む。


「ヤだ」


「……」


 さくらは無言のまま、こっちからはその表情を見て取れないけど、その背中が、さくらの目が棒になってることを教えてくれる。


「この人ヤだ。おねーちゃんがいい」


 この人とはだれか? 少年の目は耳をキーンとさせるような高音で喚いてたドロちんのほうをタゲってます。ドロちん、すかさず抗議かと思いきや存外メンタルダメージを負ったらしく眉がお下がり気味。さくらおねーさんは、イヤイヤ期の子どもをあやすようにしゃがみ込み、視線を合わせた。


「なあ、おれは忙しいんだ。団長ってすごいんだぞ? やらなきゃいけない仕事がたくさんあるんだ」


「ヤだ! おねーちゃんが行かないならだれにも教えない!」


「あーもうめんどくせぇ」


 イライラと悶々がカオスに入り乱れ、かんっぜんにグズる親戚の子に戸惑うおねーさんの図である。さくらは説得できるワードを探してるようですが、これはもうダメかもしれないね。


「イギー」


 と、これまで黙っていたブッちゃんが静かに喋りかけました。少年から見て、テーブルを挟んだ向こう側にブッちゃんがいる。背後には窓ガラスからの光が差しており、少年は彼に視線をよこすと共に、すこし眩しそうに目を細めた。


「さくらが同行すれば良いのだな?」


 こんどはさくらが抗議の声を上げたかったっぽいが残念。反射神経は少年に軍配でした。


「うん!」


「なっ! おいブーラー!」


「どうせ面倒事に巻き込まれたくなかっただけであろう。それに他者の依頼を肩代わりしようと言うのだ、文句あるまい?」


「うっ」


 図星と正論のダブルパンチ。からの無邪気な眼差し攻撃が控えておりますわよ。


「おねーちゃん!」


「……」


「おねがい」


 まんまるでくりっとした眼差し。上目遣いに、思わず頭をぽんぽんしたくなる少年のいじらしさに、とうとうさくらのほうが根負けした。


「…………ったくめんどくせーなぁ」


 頭かきかき。口は悪いけど、なんやかんやでうちの団長は義理人情タイプなのですよ。

旅団員内で仕事の交換や分担などはたまーにありますけどね、基本請け負った人が完遂せなアカンのです


だれがどの仕事やったのかとか、どこまで関係したのかとかいろいろな問題が発生しちゃうからね

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