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石の街

隠しボスって燃えない?

「すっごーい! あっちこっち石だよ!」


 地面をこんこん鳴らしつつ、わたしは目の前に広がる大通りにくりだした。


「地面も石だ!」


「どこもそうでしょう」


 マイベストフレンドが呆れ顔。


「ほら、通行のジャマになってしまいますわよ」


「っと、ごめんなさい」


 自ら人混みにつっこんで謝罪するスタイル。彼らもまた硬い地面の上で音をたてる。


「立派なものだろう。さすが国内有数の都市といったところか」


「殺風景なだけでつまんないわ」


 黒くてでっかいのが感慨深くつぶやいて、白くてちっちゃいのが正面にひろがる建築物にぶつくさ言った。少女が言うように、そびえる家屋はものの見事に白みがちであり、たまに茶色っぽいのや赤っぽいのがある程度。


「あ、黄色い壁発見」


 石にもいろいろあるんだなぁ。


(そーいえばおうちの壁もこんなんだったっけ)


 ちょっぴりホームシックの気配をかもしつつ、こんどは人波に視線を向ける。人口密度こそフラーに劣るものの、どことなく笑顔がたくさんあるように感じるし、総じて薄着の人が多い気がする。


 そういえば、すこし寒いかも。そんなことを感じていると、いつも同じカッコの僧侶さんがあごに指を当てていた。


「早速宿の確保といいたいが、まずはグレースの装備をみつくろったほうが良いか」


「そんなのいつでもできるじゃない。それよりも食事に行かない? いいトコ知ってるんだけど」


「あら珍しいですわね。ドロシーさん自ら提案だなんて」


 うんうん、ドロちんいっつも文句ばっか言ってるよね。


「いい店知ってるだけよ。うちがおすすめするレベルなんだから間違いないでしょ」


(その自信はどこから来るんだ?)


 ある意味うらやましいドロちんの性格である。えーっとあのワンちゃんはなんて言ってたっけ。


(照り焼き?)


 ちがった、えーっと……まあいっか。


「では行くとするか」


 その後はドロちんのすすめのままお食事どころへと足をはこびました。その道すがらレブリエーロの街並みを見渡してみたけどほんっとに石ばっかりだった。ほんとだよ? ぜんぶ叩いて確かめたもん。


「グレース……」


 そのたびにあんずちゃんから悩ましい視線を浴びることになりましたが。


 叩いてみてわかったこと。ひと言で石の家といっても、そこにはいろんな種類があることがわかった。材質の重さ、軽さ、頑丈さ。よく見ると色もぜんぜんちがうしノックしたときの音さえ違う。もしかしたら吸水性も多種多様だったりするかも。


 なんて感慨にふけっていると、ドロちんはそそくさと裏通りのさらに奥へと歩いていく。入り組んだ石段を渡ったところにひとつの家屋があった。


「ここよ」


 周囲に溶け込むようなふつーのおうち。他と違うのは、入口にぶら下がってる看板だけ。そんな見え方だから気づかず素通りしちゃう人もいるんじゃなかろうか。


「おじゃましまーす」


 内装もふつうのおうちと変わらない。違いといえば、大きな空間にテーブルと椅子が並んでいることと、敷居を隔てた先にカウンターや料理台が置かれていること。


「いらっしゃい」


 落ち着いた声でわたしたちを迎えるのは、ガラリーの牧場で見たような柔和な笑顔を携えた老夫婦だった。


「好きなところに座って、まあくつろいでくれ。注文はそのメニューからな」


 ぶっきらぼうなおじちゃんが、テーブルに備え付けられたメニュー表を指さした。接客業らしくなく、ただし無礼じゃない自然体のままでそこにいる。ある意味いちばん気楽なレストランだ。


「ピザ、パスタ、パン……なるほど洋風か」


 腰掛けたブッちゃんがそれらを見て感想を添える。


「見た目のイメージ通りですわね」


「ねえねえおにくある?」


「グレース、たまには野菜中心の食事にしなさいな。ブーラーさんみたいに」


「えーヤダよおにくがいいの!」


 結局おにくになりました。それぞれ個性マッシブルな料理を求めておりまして、えーわたしは当然おにく。あんずちゃんはお魚さん。ブッちゃんは野菜中心の、えーっとコントルノ? っていうのだけを注文してた。


「久しぶりにアレコレ頼む客だった」


「すまぬ、手間を取らせた」


「なぁに、久しぶりに楽しませてもらったよ。メッタに注文されない料理だったからな」


 と言ってドロちんの前に料理をはこぶ。そこには、おおよそこのレストランの雰囲気に似合わぬ料理が提出されていた。


(なんで和食があるの?)


 左側にライス、右側にミソスープ、奥に野菜のお漬物がありまして、サイドメニューに焼き魚とささやかな厚焼き玉子。


(ここだけ世界観ヘンじゃない?)


「おてもと」


 二本の木の棒が紙に包まれている。これは食器だ。これを使って食べ物を挟んで食べるのだ。ジャパニーズ・スピリット・カラトリー。


「なによ」


 ロリ魔法少女がこっちの視線に気付いた。


「あげないわよ?」


「ちぇ」


 洋風な石造りのレストランにて、ドロちんはたったひとり和食を堪能するという異世界文化を堪能。その後は各自デザートまで頼んじゃって久しぶりに甘いものでお腹を膨らませた。


 ショートカットの道のりを歩んできたおかげで、本日夜までまだまだ時間が余っております。そんな事情もあり、わたしたちはお店のおじちゃんおばちゃんに情報を提供してもらったりなんだったりして、この日は自由時間ということになった。


 宿の確保をブッちゃんに任せ、あとはレブリエーロ入口に集合ということになっている。せっかくの機会なので石の街を探検しつつ、わたしは新しい装備を求め市場を練り歩いていた。


「およ?」


 人混みに紛れ見覚えのあるキャラクターを発見した。


 絹のようなきめ細やかな長い黒髪。頭頂部から額の上部分までが白く染め上げられ、冒険者のようなエネルギッシュな雰囲気をもっている。


「さくら!」


「あん?」


 呼ばれ、振り向いた彼女は、鋭く茶色い瞳でわたしを射抜いた。

この街にはヒミツが隠されている

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