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異世界言うたら収納魔法やアイテムボックスは必須だよね

スレイプニールを荷車引き用のウマに……いやさすがにリアル志向すぎか

 憩いの牧場に水しぶきが立つ。下から巻き上げる風圧で、でもここには自然の風もなければ山から吹き下ろす風もなかった。


「なんじゃ?」


 ティベリアさんが年の重みを感じる色で感嘆をあらわす。見れば、草場に逆巻く水がゆがみ、その空間に亀裂がはいった。気配なく現れたそれに、わたしは反射的に腰の短剣へ手を伸ばすが、やがて亀裂が広がり現れた影を確認し、敵でないことを確認する。


「スレイプニール? ――そうか、おまえはそうやって」


 唖然とするパーティーのなか、はじめに声をかけたのはやっぱりティベリアさんだった。それに応えるようにはっぽんの足で地下より頭をこすりつけるおうまさん。


 とても大きな愛情を感じた。


「異空間!? まさか、このウマ自力で空間を斬ったの?」


「すごいのか?」


 驚愕に目を見開くドロちんに、同じく驚いた様子のブッちゃんが問いかける。みんなもそれに興味津々みたいだ。


「本で読んだことがあるわ。この世界は表と裏が存在し、裏の世界は表の世界のどこにでもつながるって。そして、人間の寿命程度ではその呪文を習得する時間が圧倒的に足りないとも。ウチも練習したけど、けっきょく空間を圧縮するレベルで留まったわ」


「では、スレイプニールは空間に裂け目をつくって裏の世界とやらに行けるということですの?」


「そうみたいね」


 空間にあった裂け目が修復されていき、ドロちんはそれをまじまじと見つめながらつぶやいた。


「はい?」


 そんなトボけた呆けた上ずった声を出したのはあんずちゃんだ。はっぽんあしのうまがブルルと鼻を鳴らし、振り向いた先にあんずちゃんがいて、迫られて、顔と顔が本一冊ぶんくらいの距離になった。


「な、なんですの?」


「……」


 緊張に眉をピクつかせる。こころとからだの距離感を求めたいっていうか実際に一歩下がったあんずちゃん。しかし残念。スレイプニールは足がはっぽんもあるのだ。


「で、ですからなんですの!?」


「……」


 うま、なにも語らず。いんや、はっぽんあしに加えていきなり「やあ! ボクと契約して姫騎士になってよ!」なんておしゃべりスキルアピールされた日にゃあ属性てんこ盛りすぎてお腹いっぱいになってしまう。


 うまはまたブルルと唸った。で、なんか口から出した。


(すず?)


 まぁるい鈴だ。りんりん鳴るやつ。スキマが笑顔に見えるやつ。ちっちゃな鈴を器用に口に咥えてあんずに見せつける。芸のつもりか?


(あっ)


 ぺってした。


「あぅ」


 あんずちゃんのほっぺたにぶつかった。


「きたないですわ!!」


 あんずちゃんは飛び上がった。ほっぺたに落ちた鈴は、そのまま重力にしたがってあんずちゃんの手に落ちる。


 口から吐き出されたことで、そのすずの全容が明らかになる。さくらんぼみたいにヒモがついてて、先端は他のヒモや装備に取り付けられるようジョイント的な何かがある。おうまさんの態度からして、それを持っていて欲しいのかも。


「うぇぇなんですのこれ」


「それは、呼び出し用の鈴ですね」


「ジェネザレスさん?」


 あんずの返し。おばあちゃんはやわらかい笑顔とともに教えてくれた。


「いつでもスレイプニールを呼び出すことができますよ。だけど、場所によっては呼び出せないから注意してね」


(ジェネザレスさん?)


 なんでそんなこと知ってるの?


 そんな疑問は、スレイプニールが時空の裂け目をつくり、そこから出てきたモノに意識を奪われ忘れてしまった。


「ちょ、それウチの荷物!」


 裂け目からにゅにゅにゅってかんじで出てきたのは、ドロちんが大事に抱えてた茶色いポシェット。


 大型のうまであるスレイプニール。そやつが空間に裂け目を生み出す魔法を使ったものですから、えー裂け目はそれ相応の位置に形成されるわけでして。


「あ、ちょっと!」


 ボトッ。


「せめてもっと低い位置から落としなさいよ!」


(それでいいんだ)


 駆け寄り中身の無事を確認する魔法少女。中身は例の男性がすっぱだかで抱き合ってる本だろうか?


「ねードロちん」


「なに」


 ゴソゴソ。こっちに目もくれず中身の無事を確認することに集中してる。例のブツについて聞いてみようかと思ったけど、訝しむような周囲の視線と本能に訴えかけるなにかがノドを押さえていて、結局それについて問うことはできなかった。


「……なんでもない」


「そう」


 とんがり帽子のドロちんは、ポシェットの大きさに似合わないほど腕を奥まで突っ込んで中身の無事を確認してた。


 空間を圧縮するスキルだったっけ? わたしも使えたら、いちいち懐に暗器詰め込む必要もないんだけどなー。


「まて」


 傍観してた僧侶が何かに気づきうまを凝視した。それに対し「気付いたか?」みたいな顔ではっぽんあしが見返す。


「まさか、そういうことか?」


「どういうことですの」


 うぇぇって顔で鈴を手のひらの鈴を眺めるあんずちゃん。ブッちゃんは青いローブを揺らしてスレイプニールに近寄った。


「こやつ、我らの荷物を預かってくれるようだ」


 わかってるじゃねーか。そんなかんじでうまがブルルと鳴きぶっちゃんのデカい腹にごっつんこした。


 で、またペッてした。こんどはこっちのほうに。


(むむっ!)


 細長く白いもの。まさかクギか!


 そう思ってとっさに横から掴む。クシャッとした感触で、これが紙だということがわかった。


「えっ」


 若干湿り気。思わず手放したくなる衝動をおさえ、わたしはその紙を開き中身をチェックする。


「しすてむぶん?」


 でかでかとそう書いてあり、えーっとなになに?


「こんごはスレイプニールからちからをさずかり、えーアイテムはスキルをつかってレジストリからちょくせつとりだすことができます……なにこれ」


 そう思った瞬間だった。


「ビビッときたぁ!!」


 全身に衝撃がはしる。わたしの知らない知識が勝手にアタマの中にはいってくる。


 壁の向こうにある食べ物に届かなくて、必死にぴょんぴょんしてたらとなりの子が柵をまわりこんで食べてたのを観て一瞬で理解できたように、わたしはそれ(・・)が使えることを学習した。


「――スキル、在庫(インベントリ)


 右肩のすぐそこに亀裂がはいる。わたしはそこに手をのばし、まさぐり、何かをつかみ手を引き抜いた。


(これ)


 狩猟用のナタだ。たしかおうちに置いてきたはずじゃ……。


 ふしぎだけどふしぎじゃなかった。わたしはいまはじめて知り、はじめて使ったこのスキルをすべて理解していた。


「ヒヒーン!」


 はっぽんあしのおうまさんが嘶き、駆け出し、かわいいポニーテールを見せて彼方へと去っていく。空間の狭間に消えたその姿を見送り、わたしたちは互いに目を合わせた。


「スレイプニールからの贈り物でしょうか?」


「さぁね。けど使えるならなんだって使うわ」


「試してみたが、どうやら自身のもの(・・・・・)と認識してるものであればなんでも取り出せるようだ」


「そうね。クロん坊主のサイフをイメージしたけど何も引き出せなかったわ」


「このたわけが」


 ブッちゃんが拳をつくった。


 ゴンって音がした。

ジーニアス「もっと自然な演出があればと思ったんだけど、めんどくさくなってね」


学習にはいろいろ種類があるんだ。そのなかでも社会を形成するどうぶつは観察学習を使う。そうやって、彼らは世界を学んでいくんだ

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