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爆発オチは何が何でも諸行無常

さぁてだれの差し金ですかねぇ

「およ?」


 だれかの視線を感じ、わたしはその方向へ振り返った。


「なんですの? 急に足を止めて」


 あんずちゃんがいた。


(ん?)


 デジャヴかな?


(ぃやでも問わずにはいられない)


「見てた?」


「見てたって、まあ」


「後ろにいるんだから当たり前でしょ」


 ロリ魔術師の人を小バカにしたような鋭い視線が降り掛かった。


「っていうか来た時と同じこと繰り返さないでよね」


 場所もまた同じである。


 青い空、清らかな水、そして舗装されてるのかされてないのかビミョーな(わだち)。変化といえば陽の光が真上から差し込むようになったこと。そのおかげで今は木々が生み出す木陰も最低限になっている。


 来る時はまだ森林に入り込む暗闇を思わせる情景だった。今はあっちこっちに光が浸透し、どこにだれが隠れられることも無さそうだけど……。


「うーん」


 同じ展開になってく前にロリ魔術師がジーニアスな頭脳を発揮して歯止めにかかる。


「また気のせいでしょ。さっさと行くわよ」


「んーにゃ、今回はマジマジ」


 いるわ。ハッキリと気配を感じますもの。


「ふざけてるの? 何もないじゃない」


 そうは言うけどねドロちん。わたしのアサシンとしての勘が黄色信号を発しておりますねん。


(気配がある。けど姿がどこにもない……なーんかヤな予感がする)


 この条件に見合う存在ってひとつじゃね?


「影より生まれ、影になって消える」


 唐突なテノールボイスが開けた空間にこだました。


「なに詩人みたいなことを……って、アレはなんですの?」


 ツッコミ役を買って出たものの、その役割を遂行する直前に、あんずちゃんのことばは別のニュアンスに差し替わる。


 その理由は僧侶が目を向けていた方向にあった。


「こんなところにマモノ!?」


 いちばん小柄なオンナの子が魔女っ子ぼうしに手をかけ杖を取り出す。中空に水滴の如くあらわれた黒い塊。それが世界を侵食し広がっていく。


「こっちもか!」


 マモノに負けず劣らずの肌をもつブッちゃんが別の方向へ振り向いた。気づけば周囲に同じような黒い影が立ち込めており、それらが徐々に合成されひとつの形を成していく。


 前方のマモノ、後方のマモノ。太陽さんさんな真っ昼間だってのに雰囲気暗くない?


(ってかコレやっばくね?)


 いち、にーさんしー……すくなくとも十以上。とにかくいっぱいです。


「せ、拙者かこまれたでござる!」


 さんびゃくろくじゅうどどこにもいる。


「拙者はそのようなセリフ吐かん」


「冗談言ってる場合ですの!?」


「アンタらぼーっとしてんじゃないわよ!」


 ヤギ、イノシシ、クマ、そして鋭いキバをもつ大型の四つ足動物――ドロちんのことばを合図に、マモノたちは一斉に動き出した。


(オオカミさんがいる!)


 伝説のマモノだ。こいつらはモデルになった動物たちの修正を引き継いでいる。ヤギやイノシシであれば素早く強靭。クマは力が強い。そしてオオカミは――。


(やっぱり、まだ積極的にしかけてこない)


 オオカミは集団でエモノを狩るタイプだ。だから周りと協力しあって、タイミングを見計らってチャンスを伺う。


 スキは見せられない。わたしは接近してきたマモノから対応していきつつオオカミの動向を探っていたけど、それが難しくなってる。


 それはなぜか? それは肌の黒い僧侶と肌の白い魔術師が教えてくれた。


「くっ、数が多い」


「それだけじゃない。ウチらの攻撃が通じてない?」


「うん、そうかも。さっきイノシシさんの喉首掻っ切ったけどいちどじゃダメだったよ!」


「それ詳細に伝える必要ありましたの!?」


 兜をかぶった女騎士がイヤな顔をした。え? なんで顔見てないのにわかるんだって?


 わかるんだなぁコレが。


「耐久力が上がったということか。うむ、あんずよ。おぬしは素早いイノシシタイプよりクマを狙え。拙者が援護する」


「わかりましたわ」


「ドロシーは魔術で素早いマモノを取り込め」


「勝手に仕切るんじゃないわよ」


 文句を言いつつも、ドロちんは身の丈ほどある木製の杖を正面に掲げた。いい感じにまとまってるみたいだし、こっちもブッちゃんのリクエストに応えてみますかね。


「グレースは場を荒らしてマモノの自由にさせるな」


「はーい!」


 じゃあ、ヤりますかね。


(ちゃんと見てるからね?)


 一歩離れてこちらを観察してる毛むくじゃらを目で牽制しつつ、わたしは木陰に隠れ行動を開始した。


「スキル、アイシクル()!」


(おわ、すご!)


 ドロちんの杖先に鋭い氷が数本生み出され、それが前方にいたマモノの身体を貫いた。


「なるほど、耐久性は三割増しってところかしら」


 マモノの消滅を確認する一方、積極的に攻め込んでくあんずちゃんは攻撃を受け流していた。


「あんず右だ!」


「はい!」


 ブッちゃんのアシストのもとで甲冑が舞う。彼女は他のマモノに目もくれず、その足は一直線にクマのほうへ向かって走っている。


「スキル、(ストーム)!」


 加えて大剣で周囲の空間ごと薙ぎ払っていく。クマ型マモノとの距離を詰めていき、太陽の光を浴びた鎧はいっそう白銀に輝いていた。


「はあ!」


 少女の身体には重すぎる大剣を振りかざす。体重を乗せた一撃は、それでもクマ型マモノを落とすには至らなかった。


「くぅ!」


 鋭いツメが眼前を襲うが、あんずちゃんは鋭い身のこなしで、それを鎧で受け止めることをしなかった。


(マジか当たると思ったのに)


「やはり通常攻撃ではダメージを与えられませんわね」


「あんず! 援護する」


「不要ですわ!」


 僧侶の進言を無視して再度突進する。と思いきや。


「いきますわよ!」


 叫んで、翔んだ。そしてスキルを唱える。


「スキル、雪崩(アバランチ)!」


 空中で剣を前方にかかげると、あんずちゃんのまわりに白いオーラが生まれる。それまで自由落下だった軌道がにわかに直線的になって、加速して、彼女は身体ごとクマ型マモノに激突した。


(ちょ、マジで!?)


 めっさ土埃。その白煙が晴れた後、そこに立っていたのは白銀の鎧に身を包んだ女騎士だけだった。


「この程度造作もないですわ」


(あんずちゃんやっるぅー!)


「油断するな、次が来るぞ」


「わかってますわよ!」


 一匹倒してもまた次がくる。けど着実に数は減らしてるし、こっちも忍んでこっそり貢献しております。ここまでのキル数は三ですが、このままでは数に押されて疲れちまうですよ。


 なんかいい手ないかな――およ?


(ドロちん何してんだろ)


 身体はちっこい態度はデカい魔法少女。もそっと懐から取り出したのは小瓶。えむぴー回復薬かな?


「まだ試作品だけど、これならどうかしら!」


 そんなことを口にして、彼女はそれを地面に叩きつけた。


 もこっと濁った茶色い煙。それから、魔法使いはその煙に杖を差し込み不敵な笑みを浮かべる。


「死にたくなかったら伏せなさい!」


「え?」


 そのことばに呆けた顔であんずちゃんが答えて、


「むっ」


「キャッ!」


 状況を察したブッちゃんが戸惑う女騎士にかぶさって、


「あ、やばっ」


 イヤな予感がしたので、グレースちゃんは木の上にジャンピング。ちょうどそのタイミングで、ロリっ子のきゃん高い声が轟いたのです。


「スキル、爆発(エクスプローション)!!」


 言霊に魔力が宿り、粉塵に爆炎の力が伝わった。


 茶色から赤。赤がさらに強力な光を発し、いつしかすべてが白に変化していく。


(うわ――)


 上空から見下ろすわたしの視界がすべてが白く染まった。それから爆発音がとどろき、続いてけたたましい破壊の音がつづく。


 木々がなぎ倒される音、爆風で枝葉が吹き飛ばされる音、あと「こんなの聞いてませんわよお!」って泣きそうな声で叫んでるの。それらがおわって、世界に色が戻ってきて、はじめてこの空間に新しい広場が生まれたことを知った。


「……うっわー」


 全滅だ。だーれもいない。


「ぬうぅぅたわけが! 仲間を殺す気か!!」


 ブッちゃん、逞しくもあんずちゃんをかばって上に覆いかぶさったらしい。その上にさらに飛び散った草や枝が乗っかってて、それらを振り払いつつ立ち上がり、その原因をつくったロリ魔法少女に抗議の意思というかガッツリ怒ってらっしゃいます。


「生きてるじゃない」


「死んだかと思いましたの!」


 加えてあんずちゃんも猛抗議。そんなふたりを素知らぬ顔で、大規模な破壊の跡をつくったドロちんはパタパタと服のススを払っている。


(そりゃあ、火元にいたんだからススだらけになるか)


「威力過多か。調整が必要そうね」


「それは錬金術の類か」


 まだプンスカしてるまっくろ坊主に、色白ロリ魔術師は頷いて肯定の意志を示す。


「賢者の石まで課題は山積みだけど、魔法の威力を底上げする程度なら楽勝ね」


「はえー……よくわかんないけどすごいんだね」


 華麗に着地して破壊の残滓を確認する。スキル名から察するに爆発を引き起こすものだったっぽいけど、これはキャンプファイヤーどころかおうち一軒まるごとこんがりレベルだね。


「んー」


 無惨に引きちぎられた切り株もどきを眺めつつ、わたしはあるマモノへ思いを馳せていた。


(オオカミさんも消えちゃったのかな)


 いや――なんとなく、生きてる気がする。根拠なんてないただの勘だけど。


 それでも、まだどこかでこちらを観察してるように思っちゃうんだ。


(なんだったんだろう? そもそもあのオオカミさんってマモノさんだったのかな?)


「なにしてんの? さっさと行くわよ」


「行くって、どこにですか?」


 爆発の余波でススにまみれてしまった甲冑姿の少女に、破壊の原因をつくった少女はそそっかしくことばを荒げた。


「フラーに戻るのよ。爆発音を聞かれて雑貨屋のおっちゃんに尋ねられるのもメンドクサイでしょ」


 だれの返答も待たず、ドロちんは魔女っ子ぼうしと後ろ姿をみんなの前に晒すのだった。

力とはスカラー

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