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ワンだふるワンだーらんど ~異世界でトモダチ100人めざします~  作者: 犬物語
10:好き勝手生きたいと思います
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世話をするには理由がある

ちょいキャラにもある程度設定を盛らなアカンよね

「そんな目で見つめないでくれ、いつも世間話をする仲じゃないか。それとも、その視線でこころを縛り付けることがキミの求愛行動なのかな?」


「その目の貴様が用事がある時は決まって悪いことが起こる」


 戦士のようなメイドさんはしずかに空気を揺らした。余計な雑音がなく、ただ声だけを届かせる最低限の涼しい声だった。


「失礼、貴方は戦士ではないのですか?」


 訝しげにうしろの弓手が尋ねる。同じ疑問をみんな思っていたらしく、とくにバトル漫画好きそうな背の高い少年はメイドさんの上から下までをジロジロ眺めてこのヘンタイ野郎。


「いいえ。ですがその真似事は得意でございます」


 裾をもち恭しく膝を折る。済ました顔で行われるそれは、どこか油断ならない雰囲気をもっていた。


「その態度に当時の私も勘違いさせられた」


「チャールズ様、長くお目にかかりませんでした」


「引退するつもりだったからな」


 その言葉に彼女のまゆがぴくりと動く。


「だった、とは」


「そちらの話次第だ」


 メイドは静かな目でスパイクに視線をもどす。こんどはどっちもシリアス顔だ。


「率直に聞こう。王の容態は?」


「しょーじきダメね」


(ちょっきゅー!)


「隣国の情勢は」


「戦争起こるわもームリ」


(はっきりいう!)


「そうなったらこの国は」


「地図から消えるわね」


(この国オワタ!)


「……どういうことだい?」


 影面積がいちばん大きいサっちゃんの言葉。同じ疑問をもつのはわたしたち異世界人だけだった。


 部外者のことを気に留めず、この世界の人たちは自分たちの会話を繰り広げるのだった。


「ヴィクトリア、キミと意見が合うようで助かった。」


「同じ意見をもつ人間がもっといればよかったんだけどね。残念ながらこの危機感をもつ人数は限られているの」


「それでもいるにはいるんだろ?」


「少なすぎる。水面下で動く人はいれど仮初の和平や同盟すら結べていない。関連ギルドのトップ連中とかごく限られた人にだけ情報が共有されてるけど、本当なら現時点で戦力増強の手立てを打っておかなきゃ、我が国の戦力では手遅れになる」


「安心しろ、こっちには異世界人がいる」


「えっ?」


(オジサン、それってどういうこと?)


 奇妙な感覚がわたしのなかで渦を巻いた。


「表向きは平和を装い、その下ではいつ崩れるとも知らぬほどの軋轢となっていた。詩としては魅力的だが実際に起こってほしくはないね」


「起こるわよ確実に。北方の国々ではここ数年の寒波で不作が続いてるわ。とくにラズボイ連邦はそのダブルパンチで死者続出。侵略戦争秒読みってとこね」


「その矛先は資源豊かな南の国ということになるね。たとえばアイン・マラハなどいい的だろう」


「ラズボイか……以前行ったことがあるが、よほど人が住めるような土地ではなかったな」


「厳しい環境だ。だからこそ人は鍛えられ、その軍事力は大陸でも有数を誇る。それにあたって、我が国に優秀な人材がいれば頼もしいのだが」


 思わせぶりな彼女の視線に歴戦の勇士は無精髭をなでた。


「だからこそ引退撤回せざるを得ないというものだ」


(ちょっとまって。え? さっきからこの人たちなんの話をしているの?)


「お、おおオジサン!」


「ん?」


「わかんない。なにがどうなってるの?」


「うむ、情勢が悪化してるということだ。これまでの旅で見てきたように、ここアイン・マラハは資源豊かで平和な国だが、その資源を狙う国が出てきてもおかしくはない。北方の状態、我が国においても王の――」


「そうじゃなくて!」


 もっと、もっと別の大切なことがあるじゃん。


「わたしたちを戦争に使う(・・・・・)ってどういうこと?」


 その言葉にオジサンは目を見開く。そこにある感情は驚愕。だけどその意味に期待することは互いに乖離している。


 そんなことを言われると思っても見なかったという驚き。なぜそんなことを聞くんだという驚き。疑問にすら思われないと思っていた驚き。


「どうした? 戦いの技法はすでに習っただろう。おまえはもう一人前の暗殺者だ」


 目が笑ってない。ううん、それを冗談だとも思ってない。


 彼はまるではじめから(・・・・・・・・)そのつもりで(・・・・・・)わたしにたたかいを(・・・・・・・・・)おしえていた(・・・・・・)かのように振る舞っている。


 この場に濁った水のような雰囲気が漂った。サっちゃん、ビーちゃん、グウェンちゃん、スプリットくんはそれぞれ言葉を内に秘めた表情でオジサンを見つめ、悪い流れを察した吟遊詩人が思い出したかのようにその沈黙を切り裂く。


「そうだ、まだみんなの紹介をしてなかったね。とはいってもおいら自身昨日出会ったばかりなんだけど――紹介しよう、彼らはチャールズの従者スプリット、グレース、ビシェル、トゥーサ、そしてヒガシミョーの修道女グウェンだ」


「ヒガシミョー? 確か司教が事故死したと」


「さすが情報がはやいね。でもその実際はさらに物騒らしい。詳しくは彼女から」


「実は」


 グウェンが口を開きかけたとき、ヴィクトリアさんがそれを手で制した。


「待って、長くなりそうなら彼女たちのお世話の後でいいかしら?」


「いいとも。では客室で待っているよ」


 メイドのような服装の女性はそれきり背を向けてしまった。相変わらず足音を建てずに石畳を歩いていき、彼女の姿が遠のくのと同時に、もっと話さなきゃいけないことが霞んで消えてしまっていく焦燥感に包まれていく。


「おいらが案内するよ。こう見えて王城は我が庭のように知り尽くしているんだ」


「一般階級が許される範囲でな。まったく調子に乗る」


「……おじさん」


 話さなきゃいけない。そう感じているのに口が動かない。時間が経つほど言いようのない感情がわたしの中に落ち込んでいった。

人は彼らを利用してきた。それぞれの目的のために

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