名探偵へ至る道
「殺害されて発見された死体。それとは別に偽装工作のために最低でも見つかっていない2体の死体があるはずだよ。パーツを得るために殺されているはずだ。1件の分かりやすい殺人とミスリードさせるための、他2件の見つかっていない殺人があるんだ。」
「でもそんなの司法解剖したら一発で判るんじゃないのか?」
「馬鹿だなぁ…脳筋は。だからその司法解剖をする人物。もしくはその人物の弱みを握っている人物に犯人が絞られるんじゃないか。死体発見の場所と時間を特定しやすい状況を生み出したのは当然犯人。だから司法解剖を行なう医師も当然。犯人と同じ思考を辿るんだよ。これが死体が隣県で発見された謎さ。」
「ほえ~。やっぱ圭太すげぇな。」
俺の名前は嘉永理路。保育園の年中から柔道を始める。中学では県大会で優勝。高校1年の時には関東大会でベスト3の成績を残した。高校3年で部活が終わり進路を考える。柔道を活かせる仕事に就こうと考え、警察官採用試験を受けるも不採用。高校を卒業してからは町の道場でちびっ子達に柔道を教えつつ毎年、警察官採用試験を受けるも6年連続で不採用。頭の出来が悪いのだ。
それもこれも元を正せば柔道のせいなんじゃないかと思い始めている。休日・平日問わず毎日のように柔道の練習をし、体を動かす事を好きになる反面、頭を使う勉強は苦手に。柔道の練習では頭を何度も打ち記憶が飛ぶこともしばしば。利き腕の筋を痛め、文字が書けない期間もあった。俺は柔道を活かす仕事…の選択肢を考えていたが、俺の仕事の選択肢を狭めたのは柔道なのではなかろうか。…とは言え柔道という競技そのものは好きであり、保育園から出会った柔道仲間は今でも掛け替えのないヤツらなのである。
町の柔道道場の隣。ビル2Fでやっていた事務所が廃業するという話を噂で聞き、直接ビルのオーナーに話を聞きに行く。
「使ってた棚とか、デスクとか居抜きで使ってもらっても良いよ」
と言われ一念発起。警察は俺の頭では無理だと見切りをつけ、探偵業を始める事にする。友人にその話をしたところ、、、
「居抜きで得だったからって?いや、居抜きってメリットが大きいのは工場とか飲食とか設備投資にお金がかかる業界でしょ?理路ほんと馬鹿なw」
言われてみれば確かに。騙されたとまでは言わないが棚とかデスクこそ自分好みのものを買った方が良かった。とまぁ、頭の回転が遅い俺ではあるが探偵としての勝ち筋は見えている。すでに柔道仲間の中で警官になったやつらが数多くいるので警察とのパイプが繋がっているからである。
「いや、まだ交番勤務のペーペーだけど」
「巡査長の昇任試験の勉強してるからこの時期だと捜査協力難しいかな」
「警察の柔道関連の仕事?いや、外部に依頼しなくても警察官は全員が柔剣道やってるし」
こちらの勝ち筋は潰れたようだ。まずは探偵業にこだわらずに、何でも屋のような事をして近隣住人に認知してもらうと同時に信頼関係・実績を作っていこう。別の勝ち筋は…きっとある。
それからは足で住宅を回り、チラシを配ったり直接話しかけたりし、慣れない営業をする。するとちょこちょこ知り合いや知り合いの知り合いから引っ越しの手伝いや犬の散歩、買い物代行など、何でも屋として仕事が入ってくるようになる。少しずつ認知度も上がってきたのでは無いだろうか。浮気調査のような探偵ぽい仕事が来ると思っていたが、ごつい体・いかつい顔なので尾行や調査に向かないようだ。依頼そのものが全く無い。棚やデスクは結局自分好みに買い替えたが事務所にいても今のところやることが無い。
ある日、道場で柔道を教えていると小学生ガキンチョ3人組が
「嘉永先生の探偵事務所行ってみた~い」
と言うので、柔道の練習終わりに隣のビル2Fに3人を連れて来る。少し嬉しく思うが面白いものがある訳でも無い。1冊しか無い仕事のファイルケースは個人情報を含むので見せるわけにもいかない。子供達もすぐ飽きたようで、なせかデスクを陣取って宿題を始めている。しばらくして3人の内で一番小さい小学4年の圭知が近寄って来て
「圭太お兄ちゃんの事で相談があるんだけど」
と声を掛けてくる。他の2人に聞かれたくない話のようだったので、明日の練習後に相談に乗ることに。
3人が事務所を出た後に、俺は脳内会議を行う。
「何の相談だと思う?弟の圭知は運動神経抜群。柔道では軽量級ながら、この地区の中学年で1位の実力。対して兄の圭太は有名私立中学で成績トップクラスって言ってたか。」
「だね。あの子の兄ちゃんは運動はからっきしだって話だよ。」
「んー。いじめか何かの相談?どっちにしろ理路じゃ、勉強の相談に乗れねーよ。」
「うるせー。でもまぁ確かにそうなんだよな。柔道教えて欲しいとかなら良いけど、そんな訳ないし。」
「ま、出たとこ勝負じゃね。ここで話し合ってても分かんねーし。」
「確かに。俺は難しいことは分かんねーや。何か気づいたことがあったら教えて。」
「りょー。」
「はい。」
翌日、練習後にまさかの兄弟が一緒に事務所にやってきた。兄の圭太と会うのはもう少し後かと思っていたので話が早い。
「さぁ、特に何もない部屋だけど入って入って。」
「「お邪魔します」」
3人共通の話題も無いのでその相談とやらを聞く。
「で、さっそくだけど、お兄ちゃんはどんな相談事があるのかな?」
「えっと、、圭知の兄の未来圭太と言います!実は……、、、僕、探偵になる事が夢なんです!なので、この探偵事務所で働かせてください!」
これは想定外。弟の圭知は驚いていなかったのですでに兄の圭太の相談内容を事前に聞いていたのだろう。
「ちょっと待って、、圭太君。まだ君は中学生だろう?働くと言ってもこちらはおいそれと雇うわけにもいかないし、親御さんが賛成する訳も無いだろう。」
「もちろん給料なんていりません!親には大学を出るまでは学業を優先させなさいとは言われてますけど、成績が落ちなければ基本は好きなようにして良いと言われています。お手伝いでも小間使いでも何でもしますので!」
「うーん、、、そう言われてもなぁ」
「お兄ちゃんはね、家に名探偵〇ナンが全巻3冊ずつあって、それから最近は推理小説とか買い漁ってたり、あと学校の知識も探偵に活きるからって理由で勉強も頑張ってるんだよ」
これは筋金入りだ。まさか将来の仕事を漫画で決めるとは…。いや、しかしこれは柔道経験があるから警察をと安易に選んだ俺と大きな差は無いのではないかと考え直し、とたんに応援したくなった。
「ご両親が構わないなら、手伝ってくれると助かるは助かる。お駄賃程度ならあげることも約束しよう。ただ、条件は柔道の道場にも通う事。悪漢を制圧する目的というよりは体力作りだな。運動はそこまで得意じゃないんだろう?」
「わぁ、ありがとうございます!はい…、確かに張り込みで1日中立ち続けたり、犯人を追いかけたり、体力が必要な場面は多々ありますよね。それでは弟と合わせて柔道の稽古もよろしくお願いします!」
「圭太お兄ちゃん良かったね。」
こうして、俺の寂しい探偵稼業に1人の中学生助手がついたのであった。
とは言っても圭太は平日には学校。夕方から行なう依頼のようなものは無く、柔道の道場に顔を出しているので手伝ってもらえるのは主に土日の一部の時間のみである。仕事としてはハチの巣を駆除したり、部屋の掃除をしたり、ペットの捜索など。時々弟も一緒に交ざりながら何でも屋のようなことをしている。探偵業とかけ離れたことばかりしているので不満が出てすぐ音を上げるかと思っていたのだが、存外に体と頭を動かせ、人のためになるということが楽しめているようだった。
~半年程経ち~
「もう高校受験まであと少しだろ?こんな事務所に入り浸ってて良いのか?」
「うーん、ちょっとこの事務所のホームページを作ってるから脳筋のおっちゃんは話しかけないで」
「ふふーん。脳筋なんて褒められてもな~。まぁインターネットはよく分からんから、契約からして任せてたけど…仕事に繋がるものなのかね?」
「脳筋は褒め言葉じゃないけどね…。いや、むしろ探偵という職種で事務所のホームページも無いってどうかしてるし。機密保持のためにもSNSからの依頼にも応えられるように整えておかないと。」
ここ半年で2人の距離は随分縮んだ。俺は体育会系のノリではあるが学生時代から年下がタメ口を使ってくることが多く親しみやすい性格なんだと自負している。
「仕事のファイルケースも2冊目に入ったし、このまま軌道に乗るといいな。」
「だね。まぁ、話を戻すと高校はもう模試でもA判定っていうか、学年でトップだから入試の当日に誘拐でもされない限り問題はないよ。」
「はは。そのトラブルの例えが誘拐なのはお前らしいな。そん時は俺が救い出してやるよ。」
「おっちゃんじゃそんな複雑な犯罪の対応は無理でしょ。まぁ一人で何とか切り抜けて通報するよ。僕は将来の名探偵だしそれくらい出来ないとね。」
当然、受験当日に誘拐…なんて起きるはずもなく県内の一番の進学校に入学。とはいえ中学と学校の距離も、部活に入っていない事も同じなので生活リズムに変化は無かった。土日に探偵の仕事…、まぁほぼ何でも屋…、いや全部何でも屋の仕事なのだが。
探偵の看板を降ろして【嘉永何でも屋】に変えようかと半分冗談で圭太に相談するも却下される。14歳から探偵業をしているという実績が欲しいとのことだ。こだわることは悪い事ではない。俺も中学の時に柔道で県大会優勝したとかそういう小さなプライドが辛い練習や、怪我した自分を支えてくれていたので良く分かる。
そんなある日、高校の柔道仲間で警察に入った友人から連絡が来る。珍しく大学から警察に入ったエリートですでに警部補である。
「事件捜査の手が足りないので臨時で柔道仲間に声をかけてくれ」
と上から言われて、真っ先に俺が浮かび連絡したとのこと。俺も探偵ぽい依頼&警察からの要請に非常にテンションが上がる。蜂にブスブス刺されるよりこれぞ探偵!ちなみに内容はオレオレ詐欺の容疑者宅6軒に20~30人の容疑者が分散しているので同時摘発するというもの。その日の夕方に事務所で圭太に相談する。
「証拠隠滅されちゃうから同時に摘発して、ブツを押さえないといけないんだね。脳筋はどこに配置されるんだって?」
「この地図で言うとこの6つ赤色が犯人のアジトで、俺はこの路地に出てきた犯人を通さないように任されたな。もう一人ここに警官が就くようだけど当日に顔合わせだからまだ会ってない。犯人との遭遇率はかなり低いようだから大丈夫だろうだとさ。」
「…。ねぇ脳筋。ここ相当に重要な地点だよ。赤色の点が犯人のアジトだとすると犯人はここの空き家を把握してると思うから、道路を使わずここを突っ切って来て、すぐ人通りの多い道路に逃げれるよね。まさに任されてるのその道路じゃん。」
「え。この家空き家なの?どこにそんな情報が書いてあるんだ?」
「ふふん。探偵なるもの地域を歩く時には観察と洞察を繰り返して知識を増やしていくのさ。」
「ほえ~。圭太すげぇな。」
そして、朝5:30。まずは車両の中でペアを組む捜査員と挨拶。そして圭太のしていた分析を共有する。
「空き家だと言う情報は把握していませんでした。でも確かに道路だけでなく、空き家や人のいる民家を突っ切ってくる可能性はあまり練られていませんでしたね。他のメンバーにも注意を促します。」
朝6:00。捜査員がカウントダウンをし同時に踏み込む。少し離れた路地のこの地点までも捜査員と容疑者の怒鳴り声が聞こえる。圭太の読み通りに窓から逃げた5人の犯人。4人は窓の付近にいた捜査員に取り押さえられるが1人が振り切り逃げ出す。空き家を突っ切って、俺のいる路地に。俺は迷わず突っ込み、抱き着き、投げ飛ばす。袈裟固めをかけたところで、ペアの捜査員が手錠をかける。無事このアジトの容疑者達の制圧は完了したようだ。
圭太に運動をし体力をつけるように言った。そして圭太は休まずにあれからずっと柔道を続けている。それに対して俺はどうだ。せっかくこのように警察の応援に呼ばれ犯人を拘束できた栄誉は得たが頭の方はからっきし訓練できていない。圭太すげぇ、じゃねぇ。俺も頑張れよ!勉強するぞ!と決意を新たにするのだった。ただ圭太は俺が犯人に組みつき投げ飛ばしたと聞きコゴ〇ウのおっちゃんみたいだ!と感動をしていた。
それからそういった荒事がある度に俺は警察から捜査協力として呼ばれるようになる。何度も警察官採用試験に落ちたという鉄板のネタがあるからか他の捜査官・警察官と非常に仲良くなった。さすがに圭太は連れて行く事はできないが、圭太も高校を卒業したら僕も捜査に協力するぞと意気込んでいる。土日の仕事は相変わらず何でも屋なのだが。
そんなこんなで3年近い月日が経ち圭太も高校を卒業を控えた1月。圭太の親は圭太に大学へ進学してもらいたいようだが、圭太は本格的に探偵という仕事に就きたいようだ。親を説得してこの嘉永探偵社に就職すると言い出している。
「探偵やると言っても何もこの探偵事務所への就職じゃなくてもいいんだぞ。圭太が個人で事務所を開いた方が繁盛しそうな気がするんだが。」
「何言ってるんだか。脳筋のこれまで積み上げてきたものは、僕が10年、20年かかっても得られないものだよ。それに僕に柔道を教えてくれて、踏み台にもなってくれるなんて最高じゃないか。」
「まー。褒めても屁しか出ないぞ。」
俺は照れ隠しに冗談を言う。自分自身をしょうもない人間だと思っていたのだが、圭太のような秀才が価値を見出してくれ、なおここで働きたいと言われ俺は正直言えば非常に嬉しかったのだ。
「お昼のニュースです。〇〇県××市で若い女性ばかりを狙った連続殺人事件が発生しています。犯人が現場に…。犯行時刻は…。目撃者の証言では…。」
土曜の昼に事務所で圭太と一緒に連続殺人事件のニュースを見ながら話す。
「これまだ犯人捕まってないんだな。隣の県とは言え、直線距離で言うと20kmぐらいしか離れてないから怖いな。」
「脳筋は若い女性じゃないじゃん。…ん~。現場の状況とか、犯行時刻とかそういうのから考えると犯人のおおよその潜伏先が分かったかも知れない。」
「え”!?マジ?それ警察に通報しようぜ。」
「いやいや。確証みたいなのは全然ないから!」
「でもそういう情報提供は警察にとってありがたいと思うぞ。」
「うーん。でもまぁ…ね。」
「確かめようとしてるんじゃないだろうな?行くなよ。行くとしても俺と一緒にしろよな。」
「うん。分かってるよ。犯人は単独犯だろうけど、協力者はいる可能性があるし。それに…僕一人じゃ取り押さえられないだろうしね。」
「ならいいけどな。」
そう会話していた。そう会話していたはずなのに、圭太はその日、事務所から自宅に帰らなかった。警察に失踪届が出される。翌日の日曜日も事務所・自宅・学校のどこにも姿を現さなかったのである。
圭太が見つかったのは4日後。明らかに連続殺人犯の潜伏先として使われていた痕跡のある山間の小屋で首を絞められ殺害されていた。犯人はすでに逃亡後。ニュースには連続殺人事件の新たな犠牲者として報道された。
俺は後悔した。柔道を教えていたことで、圭太に自信を持たせたことが間違いなく裏目に出た。頭の良い圭太は犯人が単独犯であることが分かっていた。春から探偵になるために自身に試練を課し一人で捕まえに行ったのだ。そして俺なんかより何十倍も価値ある命を散らしてしまった。完全に俺のせいだ。もう探偵業は辞めよう。弟の圭知やご両親にしっかり経緯を説明して謝り、そしてこの町を去ろう。
「はーっ。脳筋は気にする事無いよ。明らかに僕の準備が足りなかったんだ。手作りだけど防刃シャツと警棒を身に着けて拘束できると思ったから。甘かったか~。あ、そうそう。犯人。きっと柔道の有段者だよ。簡単に組み伏せられて逃げれなかった。」
すまない。圭太。辛い思いをさせちまったな。俺は探偵を続ける気力を完全に失っちまったよ。
「いや。脳筋は僕の事を止めてたじゃん。100:0で僕のミス。それよりも脳筋。何で僕は死んでしまってるのに脳筋と話せてるの?視界も脳筋と共有しているし。そちらの方が死んだことよりも衝撃的だよ。」
あぁ。俺は近しい人物が死ぬと俺の中に入る体質なんだ。だから今の俺の中には他にも病死した同級生と死んだおじいちゃんが入ってるんだ。
【やっほー。】
【理路がお世話んなっとります。】
「うわ。本当だ。別の声が聞こえる。同級生さんとおじいちゃんさん、こんにちは。」
まぁ時々脳内であれやこれやうるさいけどな。俺のためを思って色々言ってくれてるんだけど。
「脳筋が時々だけど発言がおかしいのに行動が正しい時があったのは、脳内アドバイスを聞いてたから?」
ま、そういう事だな。こんな事、普通に相談しても誰も信じてくれないだろう?だからちっちゃい頃から誰にも言ってなかったんだよ。
「なるほどね。じゃ早速だけど、犯人捕まえてきてよ。」
圭太の仇を討ちたいのはやまやまだけどな。もう犯人はあの小屋からいなくなっていて手がかりも無いんだ。
「じゃ脳筋は何で犯人があんな辺鄙な山小屋を拠点にしてたかは分かる?」
そりゃ誰からも顔を見られないためなんじゃないのか?
「半分正解。もう半分は犯人には持ち家があり家庭もある。連続殺人を犯すようなシリアルキラーとしては自宅にそういった犯罪の証拠を置いておきたくないんだ。でも夜中に犯罪の証拠がある小屋でうろうろしてるのを通報されて職務質問でもされたら一発アウトだろ?」
なるほど。でもなんでそんなリスクを犯して小屋を使っているんだ?
「だからリスクがリスクじゃないんだよ。犯人は警察官だから。」
そう…なのか?
「古典的な話だけど警察官なら内部の情報も知れて、捜査網を搔い潜る事は容易い。何が証拠として機能するか知っているから、それを残さなければ良いだけだしね。同時に証拠になりそうな関係の無いもの、今回は小屋に当たる訳だけど、これはどれだけ調べても痕跡は髪の毛一本出てこないよ。だけど一度警察官を疑ってみると一気に犯人に辿り着ける。連続殺人のような大きな事件が起こると捜査員がいつどこに配属されるのか、いつ休んだのかの情報が管理されるからね。過去の殺人の日時と僕が絞め殺された日時に小屋に寄れそうな位置に配属されているかもしくは休みで、持ち家とマイカー、柔道有段者、この辺りに絞ればきっと捕まえられるよ。」
分かった!今、俺は猛烈にやる気が出てきたぞ。さっき0だったのに今は120だ!ありがとう、圭太!必ず仇は取ってやる!!
翌日、俺は柔道仲間の警察官…もちろん独身の知り合いにこの事を打ち明けその上司と一緒に出勤表を閲覧する。過去の殺人事件と圭太の事件、それらから該当する人物を絞る。その人物の仕事帰りに待ち伏せし突撃。締め上げ、半殺しにする。自宅に乗り込みガレージに隠してあった犯罪の証拠を発見。警察に通報する。証拠品の中に圭太の高校の学生手帳があった。中を覗くと小さな文字でみっちり考察や理論が書き込まれており、圭太の頭の良さの一旦を知る。
「恥ずかしいから脳筋、見ないでよ。」
俺はこれからは頭脳派としての活動もするんだから勉強させてくれよ。
「…」
犯人をボコボコにしたことでそれなりに苦言を呈されてしまう。とはいえ、連続殺人の凶悪犯の逮捕。しかもまだ数人を殺す計画があったことが判明したので一転ヒーロー扱いされる。犯人が警察官だったので大々的にならないと思いきや、そんなことは無く多くの警察官仲間から賞賛を受け、さらに警視総監から感謝状を受け取る。
嘉永探偵社のドアを開けると正面の上、最も目立つ位置にその感謝状が飾られている。それは俺の物ではなく。間違いなく圭太が名探偵である証として飾ってあるのだ。今後もそっち方面は頼むぜ圭太。