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94.合衆国大統領

大統領視点:


私は合衆国大統領のリチャード.B.ミラーだ。

つい先日再選が決まってあと4年は大統領でいられる。

思えばこの4年は奇跡的に世界に大きな紛争も事件もなく、比較的穏やかな時代だった。

手腕を発揮する機会は少なかったが、平和は良いことだな。


このまま後4年何事もなく行けるだろうと思っていた矢先、NSA(米国国家安全保障局)からとんでもない情報がもたらされた。


後5年で地球は滅びるとのこと。

クオーク星? 地球軌道変動? 超異常気象?

5年後は任期が切れて大統領ではなくなるが、それでも未曽有の危機に対策と準備が必要だ。


直ちに大統領補佐官に詳細情報収集をしてもらうことにする。

翌日天文学者が主催の第二回の会議が開かれるらしいので、すべての予定をキャンセルさせて、大統領補佐官を派遣した。


そして今後の対策会議は天文学者主催ではなく、新規に結成する予定の対策チームとするように命令する。


◇◇◇


第二回アバドン対策会議から戻ってきた大統領補佐官から詳細情報がもたらされ、内容を確認して愕然とした。

まさに避けようが無い世界の終わりだ。

その内容をまとめ、速やかに各国政府と協議すべく連絡を取る準備を進めることにする。

すべてに最優先で、有識者から最優秀な人材を引き抜き、対策チームの結成を命令し、ホワイトハウス内で速やかに作業が開始された。


さらに、情報統制を徹底的に行うこととし、パニック専門家の意見を取り入れ、”巨大隕石の地球接近の可能性”とのフェイクの情報を準備することにした。


CIAとNSAからの情報によると、幸いなことに一般人にはまだ情報は漏れ出ていないようだ。

そして数日のうちに大統領の直轄チームとして、各種分野の専門家が続々と集まってきた。


天文学者、気象学者、建築学専門家、地質学者、物理学者、農業専門家、経済学者、軍関係者。

少数だが精鋭を集め私は彼らに対応検討を命じた。


まだ手探りな状態だが、人類の生き残りをかけた史上最重要な作戦だ。

天文学者が開いていた第一回目の会議の場所の名前を使い、これらのプロジェクトは”スミソニアン計画”と命名された。


今まで得ているアバドンの情報をもとに、対策チームには1週間不眠不休で対策をまとめさせ、大統領を交え打ち合わせが行われた。


大統領が口火を切った。


「諸君、不眠不休での作業に感謝する。今までの検討結果と、今後の我々のなすべき行動と目標を聞かせてくれたまえ」


大統領補佐官のトニーが立ち上がる。


「では私から現在までの検討結果を報告いたします」


トニーは資料をディスプレイに表示しながら説明を始めた。


 ・アバドンの地球接近はほぼ間違いがないこと。

  そしてアバドンの軌道を変えることは不可能なこと。


 ・地球の軌道が大きく変化し、太陽に非常に接近する近日点と、遠く離れる遠日点で

  大きく気象が変わること。


 ・最初の夏、つまり近日点通過時に人類を含めた地上のほとんどの生命が

  絶滅すること。


 ・北半球が夏の時に近日点を通過するため、北半球が特に過酷な暑さになること。


 ・冬、つまり遠日点では気温が非常に低下するが、世界平均で約-40度程度に

  とどまること。

  これは海が熱を貯めこむためであるが、海から離れた内陸部は非常に寒くなる。


トニーが言葉を続ける。


「これら5年後に発生すると予想される環境変化を生き残るための提案を次に報告します」


 ・北半球の気象条件が非常に過酷なため、南半球の高緯度地域に避難所を

  建設する。


 ・北半球でもアラスカやグリーンランド、スバールバル諸島などの高緯度地域に

  避難所を設置する。


 ・小型の原子炉、もしくは原子力電池を量産し、災厄後の電力確保の準備を進める。


 ・避難所建設は大規模かつ恒久的なものとし、数百年は暮らすことができる資材を

  運び込む。


 ・地球が滅びることが知れ渡ると、全世界でパニックや暴動が広がる恐れがある

  ため、可能な限り情報制限をすること。


 ・南半球の避難所の候補地は、オーストラリア、ニュージーランドの南端、

  アルゼンチンとチリの南端、そして南極大陸であること。


 ・北半球の避難所としては、アラスカの北部の炭鉱跡地を検討する。


 ・原子力空母と原子力潜水艦の多くを避難所兼大災厄後の移動手段として確保する。

  その為の改修工事を直ぐに開始する。


そして最後にこう締めくくった。


「全力を尽くして避難所を建設しても、救えるのは合衆国全体でも10万人程度と予想されます。全世界でも100万人を超えることは無いと予想されます。それ以外の人類は最初の夏を乗り切ることはできません」


会議の前には今聞いたことは概ね把握していた会場に居たチームメンバーだったが、改めて確認して言葉を失っていた。

今から5年後発生する大災厄で、世界人口80億人の内助かるのは100万人足らず。


次にこのチームのリーダーに抜擢された、大統領のブレインの一人であり、社会学の第一人者でもあるマイケルから今後の方針を示された。


 ・パニックを防ぐため、情報統制を厳密にする。


 ・南半球の避難所候補の各国政府に土地の提供を打診する。


 ・南極の米国パーマー基地とアムンゼン・スコット基地を大規模に改築し、

  避難所とする。


 ・避難所に送り込む人員の選別方法の検討。


 ・予算の確保、少なくとも今年だけでも5000億ドルは調達する。


などなど


最後に私が大統領として発言する。


「諸君、やるべきことは山積みであるが、君たちは選ばれ抜かれたチームメンバーだ。これは人類の生き残りをかけた史上最大の作戦である。各自の任務を把握し、全力を尽くして欲しい」


こうしてアバドン対策会議は今後スミソニアン計画として本格始動することが決まり、会議は終了した。


終了後、大統領補佐官が私に近づいてきて、面会者が来ていることを告げてきた。


「アバドンの第一発見者の日本人で、井本という青年です。今回の大災厄の回避方法を提案してきました」


「回避方法だと? 太陽の1.5倍の質量の星を消し去るとでも言うのかね?」


「それに近い提案で、にわかには信じられない内容でしたが、デモとして巨大な岩山を移動している動画を提示されたこと、彼らがアバドンの第一発見者であること、わが国のロケット会社のスペースZ社の大口出資者であること、今回発見に至ったIZUMO宇宙望遠鏡の会社の49%の株主であることなどを考慮すると、会って内容だけでも確認すべきかと思います」


「ふむ、まだ次の会議まで時間の余裕はあるな。よし10分だけだ」


「ではこちらへ」


補佐官に案内され、ホワイトハウス内でも小さ目な会議室に入る。

そこには小柄な東洋人の男性1名と女性二名が待っていた。

私を見るとさっと立ち上がる。


「君がアバドンの第一発見者のミスターイモトかね? 私が合衆国大統領のミラーだ」


「はい、初めまして、井本です。こちらは共同発見者の佐藤さやかと橋本沙織です」


「「初めまして」」


「時間が無い、早速本題に入ろう。アバドンを排除する方法があるとか?」


「その前に、今からお見せする内容をできるだけ人に見せたくないので、ドアの所にいるSPをドアの外に移動していただけませんか?」


私は補佐官を見る。


補佐官は、


「彼らは武器は持っていません。大丈夫かと思います」


「分かった、おい、君たち少し外に出て行ってくれ」


SP2名は少し躊躇したが、黙ってドアの外に出る。


「アバドンは、一種のテレポートを様な空間移動で、太陽系をパスさせる事が可能です」


それを聞いて私はがっかりしてしまった。こんな世迷言を聞くために時間を割いたのではない。


「ああ、分かった。そんなことが出来るはずがないだろう? 私は忙しいんだ。これで失礼するよ」


その時、橋本と紹介された女性が口を開く。


「あと30秒時間をください。好きな数字を何桁でもいいんで頭に思い浮かべてください」


私はややうんざりしながらも少し興味を持って、ある10桁の数字を思い浮かべた。


「5821345690、ですね」


「なっ!!」


私は驚愕して彼女を顔をまじまじと見た。

私が思わず思い浮かべた数字は「核のボタン」と呼ばれる、核攻撃命令を下すための10桁の暗証番号なのだ。


大統領就任早々に、自分で決めて、誰にも告げることなく、絶対に忘れてはいけないため、必死に覚えた数字だ。

この少女が知っているはずがない。それどころか私が核ボタンの暗証番号を思い浮かべるなんて分かるはずもない。


数字を言い当てた少女は涼しい顔で言葉を続けた。


「少しは私たちを信じていただけたでしょうか?」


「わ、分かった。ではもう少しだけ話を聞こう」


ミスターイモトが話を続ける。


「ありがとうございます。アバドンを太陽系の中に入る前に空間移動で太陽系の外に転移させ、太陽系に影響を与えない方法があります」


「だから、そんなことが出来るはずがないだろう? どうやってやるんだね?」


「論より証拠ですから、実演して見せましょう。ここで待っている間にこの部屋の床に仕掛けを作っておきました。みなさん、部屋の中央に来ていただけますか?」


部屋を見回すと、普段は中央に位置しているテーブルや椅子が部屋の端に移動されている。

私と補佐官は中央に移動する。

次の瞬間、我々は屋外に立っていた。

周囲を見渡すとどこかの公園の様だ。遠くでジョギングしている人たちが見える。


「なっ何が起きた? ここはどこだ?」


「ニューヨークのセントラルパークです」


「た、たしかにエンパイヤステートビルが見える」


一緒に移動してきたトニーもびっくりして口をパクパク開け閉めしている。


「地面の草を毟ってもらえますか? そうそう、では戻ります」


私が言われた通り、地面の雑草を引き抜いた瞬間、元の会議室に戻っていた。


「今のような移動手段を大規模に展開して、アバドンが太陽系に入る前に迎え撃ち、太陽系に入り込まないようにします」


私は呆然としてしまった。夢でも見ていたのか? 彼らが何らかのトリックを使ったのか? 手元を見ると、さっき引き抜いた雑草を握りしめている。


「トニー、君も今の現象は確認できたか?」


「はい。確かに瞬間移動ができたように感じました。そしてあそこは確かにセントラルパークでした」


「分かった、君たちを信用しよう。トニー、対策チームから何人か厳選して参加させ、彼らから詳しい話を聞いてくれ。私は次の会議に行く。何としてもアバドン対策用の緊急予算を確保しなければならないからな」


そう言って大統領は草を手にもったまま会議室を出て行った。

どうやら、アバドン対策の予算確保の重要な会議があるらしい。


補佐官から、


「まだホワイトハウス内に対策チームの主要メンバーが残っている。具体的な対応について打合せをしているはずだ。大至急集必要なメンバーを集めるので、再度説明してもらえないだろうか?」


「もちろん大丈夫です」


補佐官のトニーはあたふたと会議室を後にした。

残された俺たちはさやかと橋本さんとで話し合う。


「橋本さん、大統領は信じてくれたと思う?」


「大統領は柔軟に物事をとらえることができる人みたいですね。意外と信じてくれているみたいです」


「そうか。橋本さんのあの数字当てが利いたな」


「あの数字は核発射ボタンの暗証番号だったみたいですよ」


「あ? そうなのか? よくそんな数字を思い浮かべたな。まあまさか心を読まれるなんて思ってなかっただろうからな」


とりあえず俺たちは部屋で待つことにした。

お茶くらい出して欲しいな。


ついに合衆国大統領に魔法を信じてもらえましたね。

位置決め問題など未解決問題もありますが、アバドン迎撃対策は加速していきます。

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