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78.大賢者、サミーを幸せにする

サミー視点:


俺はサミー、10才だ。。

親父とお袋と8才の妹とフィリピンはセブ島で幸せに暮らしていた。

そりゃ金持ちってわけじゃないけど、親父の商売もまあまあみたいで、苦労せず暮らしていた。


不幸が訪れたのは半年前で、家族全員でセブ市の中心街まで買い物に行こうってことになり、山を越えて乗り合いバスのジプニーで移動することになったんだ。

山を下り始めたとき、ドン、と大きな音がして、見れば後ろからトラックが追突していた。

あっという間もなく、俺たちが乗っていたジプニーは谷底へ転落していった。

そこからしばらくは意識が無かったが、気が付いたら病院に居た。

左足に痛みを感じたので見てみるとギプスで固められていた。

親戚のおじさんが病室に居て、お役人みたいな人と話をしていた。


「あう、サミー、気が付いたか?」


「親父とお袋とマリカは?」


「マリカは横のベッドで寝てるだろ。お前の両親は死んだよ」


「えっ?」


俺は絶句したが、それでもマリカが心配で横のベッドを覗き込む。

マリカは体中が包帯だらけで点滴の管が付いていた。


「マリカは助かるの?」


「ああ、命に別状はないな。しかし右手と左足は切断するしかないってさ」


「そんな、何とかならないの?」


「マニラの病院までヘリで搬送すれば切らずに済むかも、ってことだが、そんな金ないしな」


「頼むよ。金なら親父の貯金とか、俺も働いて稼ぐから」


「無理無理、お前の親父は貯金は全然無かったし、ジプニーの会社からの保証金も全然出なかったしな」


結局いくらお願いしても親戚の親父はマリカをマニラの病院へ連れて行ってくれず、結局右手と左足は切断することになった。マリカ、ごめん。


2週間ぐらいで病院は退院することになったんだが、親せきのおじさんはもう連絡がつかなくなっていた。

後から分かったんだが、そのおじさんはジプニーの会社や追突したトラックの会社からの見舞金を全部くすねて、更に俺の親父の生命保険金も貯金も全部持って行ってしまったってことだった。


病院代だけは払われていたので、無事退院できたけど、俺たちは行くところが無かった。そこからしばらくは死ぬほどつらかった。

病院代のおつりとしてもらったお金はわずかで、2,3日の食事代で消えちゃった。

マリカは「お家に帰りたい」って泣くし、腹もペコペコだった。


病院からもらった粗末な車いすにマリカを乗せて、セブの街をうろついて、3日目にスラム街の住人が見かねて住むところを貸してくれた。

雨風は何とか防ぐことができるようになったけど、生きていく金は自分で稼がなくてはならなくなってしまった。


スラム街で支援してくれた人に頼み込んでお金を借りて、山を越えた向こうの自宅まで、現金や荷物を取りに行ったんだけど、すでに親戚のおじさんがすべてを奪いつくしており、現金はもちろん、家財道具も全部なくなっており、家は「住人募集」の看板が掛けられていた。


俺は泣きながらセブ市まで戻ったが、借りた金は返さなきゃいけないし、生きるためには稼がなきゃいけない。

マリカの為にも、俺が頑張らなくては。


スラム街の人に色々教わりながら、金属ゴミを集めたり、路上で車の窓ガラスを拭いてお駄賃をもらったりしながらなんとか暮らしていった。

まともに食べさせてあげられなかったからか、マリカの容態はあまり良くならなかった。

いつもつらそうにしているし、時々熱も出す。


その日も路上で車の窓ガラスを拭いていたが、その車のドライバーの虫の居所が悪かったからか、いきなりぶん殴られた。

殴られた勢いで、コンクリートの壁に頭をぶつけ、意識がもうろうとしてきた。


「おい、君、大丈夫か?」


と、知らない人に急に声を掛けられた。


「あ、ああ。大丈夫だ。頭が痛いけど、お金稼がなくっちゃ」


マリカが待ってるし、こんなところでくたばってたまるか。

俺は立ち上がろうとしたが、頭がガンガン痛んで、まともに立ち上がれない。


「俺はおまじないが使えるんだ。内緒にしてくれるんならケガを治してやるぜ」


「はぁ? あんた何言ってるんだ? 治せるんだったら治して見せろよ」


「まかせろ」


その男は俺に手をかざすと何か不思議な間隔に襲われた。

頭の痛みは急に無くなる。


あれ? 頭が痛くない。あれ? ずっと痛かった足の痛みも無くなってるぞ?


「あれ? 本当に怪我が治ってる? あ、足の痛みも無くなってる?」


「なんだ? 足もケガしてたのか?」


「そうなんだよ、あ、いや、そうなんです。半年前に事故にあって、左足がうまく動かなくなっちゃってたんです。でも、あれ? 治ってる?」


「そうか、良かったな」


俺はこの男の人が魔法使いか天使に見えた。


「兄貴、スゲーな。あんた魔法使いか何かか?」


「ハンドパワーってやつさ。内緒だぞ。誰にも言うなよ」


お駄賃を上げるからセブの街を案内してくれっていうので、色々案内してやった。

飯もおごってくれるって言うんで、前にセブ市に来た時に家族で来たレストランに案内してやった。

男は日本人で、名前は井本というらしい。

見た目は高校生っぽく見えるけど、ものすごく年上のような感じを受ける。


俺の案内で。街中のレストランに入る。

ああ、懐かしいなぁ。両親が居た頃は幸せだったな。

料理の味も全然変わっていなくておいしいし。

俺はマリカにもこの幸運を分けてあげたかった。

俺はダメもとで聞いてみた。


「あの、もしよければだけど、妹も腹をすかして家で待ってるんだけど、妹の分をテイクアウトしてもいいかな?」


あにきは直ぐにOKしてくれたので、マリカの喜ぶ顔見たさで早速テイクアウトして家に戻ることにした。


テイクアウトした食事を持ってマリカの待つ掘っ立て小屋に戻る。

マリカは相変わらず体調が悪いらしく、ぐったり寝ている。

それでも、久しぶりのごちそうを嬉しそうに食べてくれた。

ああ、マリカの嬉しそうな顔は久しぶりだな。


「俺のまじないで、マリカを治せるかもしれないが、内緒にできるならやってみるぞ」


あにきがとんでもないことを言ってきた。


「え? 治せるの? もちろん誰にも言わないって約束するけど、本当に治るの?」


あにきがどこからか小瓶を取り出してマリカに飲むように促す。


「マリカ、兄貴のまじないは本物だぜ。俺の足も治ったんだ。飲んでみろ」


マリカが小瓶の中身を飲み干してしばらくすると急にマリカの身体が光った気がした。

次の瞬間マリカの切断されていた右手と左足が元に戻っていた。


俺はマジで驚愕した。

『治る』ってのは、手足を無くしてからの体調の悪さや痛みを治す、って思っていたが、まさか手足が元に戻るなんて。

やはり兄貴は天使か魔法使いなんだ。


マリカもしばらく何が起きたのか分からない様子だったが、嬉しそうに叫んだ。


「お兄ちゃん!! 足が、手が、元に戻った。嬉しい」


おぉ!! マリカの笑顔を見るなんて事故以来だ。

嬉しそうに飛び跳ねているマリカを見て俺は幸せいっぱいだった。


しかし、俺たちの幸せはそれだけでは無かった。

よく分からないうちに、マリカが魔法を使えるようになり、仕事を紹介してもらい、住むところも与えられた。


その後、あにきは直ぐに日本に帰ってしまったけど、職場の店のオーナーの小川さんもいい人だし。従業員のジェシカさんも俺たちを大事にしてくれるし、急に降ってきた幸せに夢では無いかと思った。


マリカは魔法が使えることがうれしいらしく、こちらに住んでいる日本人を中心に、言われるがまま肩の痛みやひざの痛みなどを治していき、都度2000ペソを稼いでいる。


俺は魔法は使えるようにならなかったが、マリカが生き生きとしているから文句はないな。

マリカをサポートしながら、店の掃除とか手伝いをして、二人で小学校へ通えるようにもなった。

兄貴との約束なので、魔法の事は俺もマリカも誰にも言っていないぜ。


よし、俺は勉強を頑張って、立派になるぜ。

兄貴、見ていてくれよ。

不幸のどん底だったサミーが幸せをつかんだようですね。

きっと立派な大人になる事でしょう。

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