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74.大賢者、大災厄調査を更に行う

11月に入った。未だに大災厄の詳細がつかめない。俺とさやかは大災厄が何なのかを再度調査してみることにした。


巨大隕石の落下なのは確実かと思うが、隕石の落下地点が全くつかめていない。

北半球での被害が大きいとは予知出来ているので、北半球でまだ探査していない場所で予知してみようとさやかに提案してみたが、さやかの意見は別だった。


「地球全てが影響を受ける様な隕石落下なら、北半球でも地域差はかなりあると思う。でも実際は北半球のすべての地域での被害予知は似たようなものだったわ。南半球でも地域差は見られなかった。今回は赤道付近に行ってみない? なにか分かるかも。」


なるほど。さやかの言うことにも一理あるな。

北半球では大災厄の被害の差は感じられなかった。

南半球は北半球よりは被害が少ないように見えたが、赤道付近の国々は確かに確認してなかったな。


11月に連休が有ったので、その連休中に1週間で赤道付近の各国を探ろうということになった。

今回は二手に分かれての調査とすることにした。


俺の調査地区は、スリランカのコロンボとフィリピン セブ島とした。

さやかは、ハワイとエクアドルのキトとした。


11月1日に俺たちは成田空港経由で出発した。

i経済研究所の仕事関係は、恵さんの親父さんと、他のメンバーに丸投げだ。

高校の授業は……、まあ何とかなるだろう。


なお、チケットやホテルの予約は全てメーティスにやってもらった。

全てインターネットで予約できるので、メーティスにやってもらうのが間違いが無くて良い。


◇◇◇

さやか視点:


成田からハワイは便が多くて便利ね。

今回はユナイテッド航空のフライトでホノルルに向かう。

待ち時間が少なくって良かったわね。

お金には不自由しない状態なので、今回からは全てファーストクラスで行くことにした。

7時間のフライトはうんざりだけど、ファーストクラスは良いわね。ゆったりできる。


特に問題もなくホノルルに到着し、タクシーでワイキキビーチ近くのホテルに移動。

早速、ワイキキビーチ近くの公園の一角に転移の魔法陣を描く。

一応予知魔法を使って大災厄の影響を確認してみるが、私の予知能力は井本君よりは劣るので、はっきりしないわね。


そもそも予知能力は危険を察知する能力であり、通常は数分先の危険を察知するための魔法である。

上位者でも数日先が予知できる程度だ。

基本的に数年単位での危険を察知できる能力ではないので、私のレベルでは大きな危機が迫っていること程度しかわからなくても仕方がない。


とりあえず、今日はやることが無いからホテルで休みましょう。

メーティスが予約してくれたホテルはなかなかいいホテルで、ディナーも部屋も満足だった。

フライトの疲れはいやされたわね。


翌日、朝食をホテルて食べながら、今日の予定を確認する。

次の目的地へのフライトは夕方なので、少し時間の余裕はある。

折角来たんだからワイキキビーチで南国気分をちょっと味わいましょう。


海に入る気も、水着に着替える気もしなかったけど、ビーチサイドのカフェで、冷たい飲み物を飲みながらのんびりする。

しばらくビーチの人々をのんびり眺めていると、現地人と思われる男性二人組が声をかけてきた。


「お嬢さん日本人?一人なの?もしよければ案内してあげるよ。俺はジェームスでこいつがロバートだ」


うーん、めんどくさい。放っておいて欲しいな。


「ノーサンキュー」


「そんなこと言わずに、さっきから見てたけど、ずっとひとりじゃん。寂しいでしょ?」


「邪魔だからどこかに行って!」


せっかくのんびりしていた気分を邪魔されたので不機嫌になり、つっけんどんに返事した。

その態度が気にいらなかったらしく、いきなり腕を掴まれた。


「いいから、俺たちの家においで。悪いようにはしないから」


腕を掴まれたので、ついでに探知魔法でこいつの思考を探知してみる。

以前は頭部に触れないと思考を探知できなかったが、Lvが上がったので、身体のどこかが触れていれば相手の思考が探知できるようになってきている。


そういうことね。こいつらは睡眠薬強盗だわ。

一人や二人組の日本人女性を狙って、言葉巧みに声をかけて睡眠薬入りの飲み物を飲ませて、レイプしてから金品を奪うやり方ね。

今までも何人も犠牲にしているみたいね。

警察に突き出したいけど、証拠が無いし、どうしましょうかね?


考えを巡らしていると、男たちは私が委縮していると勘違いしたらしく、強引に腕を引っ張って歩き始めた。

まあ、家まで行ってから制裁しましょう。


歩いて10分ほどで彼らの住んでいるコンドミニアムの部屋に到着した。


「ここが俺たちの住んでいる家だ。逆らったら生きて帰れると思うなよ」


はい、有罪確定。


私は電撃魔法で二人を気絶させる。

二人とも自分に何が起こったか感じる間も無く床に崩れ落ちる。


二人の額に手を当てて探知してみると、何人もの女性に乱暴して金品を巻き上げている記憶が大量に出てくる。

どうやら何年も前から女性一人や女性だけの日本人観光客をターゲットにしていたようだ。

今までに20人以上は犠牲者が居るわね。


さて、どうやって罪を償わせましょうかね。

とりあえず家探ししてみましょ。


こいつらの財布の中身や、家を家探しして、身分証明書や銀行のキャッシュカード、クレジットカードを押収する。


罪を償わせるために、汚れたお金は慈善事業団体に寄付しましょうね。

パソコンが有ったので電源を入れ、この二人の銀行口座にアクセスする。


ユーザーIDやパスワードはこいつらの記憶からゲットできるしね。


『メーティス。こいつらの銀行に入っているお金を全部慈善事業のサイトに寄付してあげて』


『了解しました。……完了しました。全部で3万ドルです』


『クレジットカードでキャッシングして、それもすべて寄付してあげて』


『了解しました。……完了しました。クレジットカード5枚で、それぞれ最大限をキャッシングして寄付しました。総額5万ドルです。』


『ネット上で銀行から借り入れできる? できるなら限度枠いっぱいまで借り入れして、寄付してあげて』


『了解しました。 それぞれ2万ドルの借用が可能で、借用手続きは完了しました。入金次第寄付を自動で行う手続きも完了しました』


『他にこいつらに資産はある?』


『パソコンのデータを調べたところ、証券口座で株を保有していることが分かりました。総額3万ドルです』


『それは現金化して寄付できる?』


『現金化することは可能ですが、株を売却後、現金として寄付可能になるまで2営業日必要です』


『じゃあ、その保有株を全額売っぱらって、数日後に暴落する株に買い替えはできる?』


『可能です。ベータ石油という会社が明日にでも破綻する予想なので、3万ドルすべてをこの株に買い替えを実施します。……完了しました』


よし、多額のお金を慈善事業に寄付できたから、こいつらも少しは世の中の為に役に立ったわね。


こいつらは無一文になっただけじゃなく、借金まで背負っちゃったけど、悪いことをいっぱいしてきたんだからいいわよね。

これ以上ここにいても意味ないから空港に移動しましょう。


その日の夕方のフライトで、エクアドルのキトに向かう。直行便は無いからロスアンジェルス経由だ。


◇◇◇


睡眠薬強盗ジェームスの視点:


今日もロバートと共に、獲物を探してワイキキビーチを散策する。

おっ! 若くて綺麗な女の子がさっきから一人でお茶しているな。

たぶん日本人で、日焼けしていないからハワイに来たばかりだろう。チャンスだ。


俺はロバートを促して、彼女に声をかける。

しかし、折角案内してあげよう、と声を掛けたのにつっけんどんな態度で頭にきた。

女の腕を掴んで強引に俺たちのコンドミニアムに連行する。


俺たちに恐れをなしたのか、おとなしく引っ張られてくる。

日本人女性はちょろいわ。レイプしても、金を巻き上げても泣き寝入りするからな。

この女はずいぶん若く見えるが、すごい美人なので、楽しめそうだ。


部屋に連れ込んだところまでは覚えていたのだが、そこからの記憶が無くなっていた。

気がついたらもう夜で、ロバートも横で倒れている。


「おい、ロバート起きろ。何があったんだ?」


「うーん。あ? もう夜? 何があったんだ?」


どうやらロバートも何があったのか覚えていないようだ。

どうやらあの女には連れが居て、後をつけられて後ろから殴られた、ってとこか?


まあ、長い間こんなことをやっていたらこういう事もあるだろう。

警察沙汰にならなくて良かったと思おう。


夜も遅い時間だったので、この日はシャワーを浴びて寝ることにした。


翌日も午前中から獲物を探してビーチをうろつくが、なかなかいい獲物が居ないな。

いつものレストランで飯でも食うか。

ランチを食って支払いをしようとすると、クレジットカードが使えなくなっている。

いくつか持っているカードを試すが、すべて使えない。

ロバートのカードも全部使えなかった。

バックやポケットをひっくり返して出てきた札や小銭で料金を何とか払い、慌てて家に帰りパソコンでクレジットカードの確認をする。


なんだ? 利用限度枠がいっぱい? 昨日慈善事業団体に寄付してるじゃねえか!!


「おい、ロバート。お前のカードはどうだ?」


「俺の方も限度枠いっぱいでキャッシングされて寄付されてるぜ。何が起こってるんだ?」


「どう考えても昨日の女だ。あいつが何かしたに違いない」


やられた。俺たちが獲物の女どものクレジットカードでキャッシングして金を分捕っていた様に、昨日の女が何かしたに違いない。

絶対見つけ出してぶっ殺してやる。


とりあえず当面の生活費が必要だから、ATMで金を引き出すか。

俺とロバートはトボトボと近くのATM機まで行って、金を降ろそうとしたが引き出せない。


あ?口座残高がゼロ?

俺たちは慌てて家に引き返し、パソコンで銀行口座を確認する。

こちらも昨日の内に慈善事業団体と思われる口座に全額送金されていた。


銀行からの通知が有ったので確認してみると、無審査で借り入れできる限度額いっぱいに貸し出されており、その金も慈善事業団体に送金されていた。


冗談じゃねえぞ! 無一文になっただけじゃなく、借金を抱えてるのかよ?

と、とりあえず有価証券を売っぱらって現金を準備しないと、クレジットカードが停止される。


俺たちは慌てて証券口座にアクセスして、保有株の一部を現金に換えることにした。

ん? なんだ? なんで保有株が全部聞いたことのない銘柄に代わっているんだ?

ベータ石油? 聞いた事ねえぞ?

何が起きているのかわからず、とりあえず訳の分からない会社の株はうっぱらうことにした。


……、売れねえじゃねえか!


パソコンの画面上に赤いマークが点滅していて、ベータ石油は取引注意銘柄となっていた。

え? 本日破綻確定? 売買停止?


ロバートの証券口座もやられていた。

俺たちはパソコンの画面を眺めたまま、いつまでも動けないでいた。

今回はさやかさんが悪を懲らしめましたね。

奴らは無一文になってしまい、ざまあ、ですね。

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