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73.大賢者、呪いの家を解析する

原さんの視点:


私は富士フリーダム高校の2年、原裕子。

経済研究部に所属していて、i経済研究所の社員でもある。

親の仕事の関係で東京から引っ越してきて、1年前から高校近くの家に住んでいる。


親の仕事の関係っていうと聞こえはいいけど、要するに父親の商売がうまくいかず、夜逃げ同然でこっちへ逃げてきたってのが正しいわね。

それでも高校に行かせてもらえるだけマシか。


東京では志望の高校に合格していたのに、親の事業失敗で泣く泣く引っ越しさせられ、知り合いの誰も居ないこの高校にようやく入れたんだけど、1年前は世界で一番不幸なんじゃないかって落ち込んでいたわ。


しかし、経済研究部に入部して、先輩の進めるままにi経済研究所のお仕事を手伝うようにしてから一挙に人生が変わったわ。


仕事は楽だし、株投資の勉強にはなるし、給料は下手したら大卒の初任給より上だし。

なにより先輩に勧められて開始した株投資が面白いように当たり、楽しくて仕方がない。

高校の授業料も、高校生活に色々必要な費用も、全部自分で捻出できるようになったし。


不幸のどん底から一挙に楽しい高校生活!、かと思ったけど、引っ越ししてきた家が問題だった。

知り合いの伝手で安い一戸建ての住宅に引っ越しできたんだけど、安い割には綺麗で大きい家なので不思議だったが、やはり安いのには理由があったみたい。


引っ越ししてしばらくしたらこの家のうわさを近所のおばさんから色々耳にするようになった。

この家に住んだ人は以下の怪現象に耐え切れず、半年もたたずに引っ越していくんだとか。


 ・原因不明で体調を崩してしまう。

 ・風もないのに夜中に家の中で変な音がする。

 ・閉めたはずの部屋の戸がいつの間にか開いている。

 ・棚に置いてある置物がいつの間にか移動している。


私は体調は悪くないけど、父も母も弟も引っ越ししてから体調が悪いとぼやいていた。

夜逃げ同然に逃げてきたストレスが影響しているって思っていたけど、違うのかも。


そして、ドアや襖がいつの間にか開いていたり、誰もいない部屋から音がしたり、置物が移動したりは日常茶飯事。


大家さんに依頼して専門家に建物を調べてもらったが、特に異常なしとのこと。

家族はだいぶ参っていて、引っ越したがっていたが、家にお金が無いので、そう簡単に引っ越せない。


どうしようかと悩んでいたら、学校のカフェテリアで井本先輩が話しかけてきた。


「原さん、どうしたの? 元気ないけど」


井本先輩って不思議なのよね。

高校生なのに、ずっと年上の人の様な落ち着きがあるし。

そうだ、井本先輩に相談してみよう。


◇◇◇

主人公視点:


午前中の授業が終わり、さやかとカフェテリアに行くと、後輩の原さんが一人で居た。

なんか元気が無かったので話しかけてみる。


「原さん、どうしたの?元気ないけど」


原さんはしばらく黙っていたが、意を決したように話し始めた。

今住んでいる自宅で怪現象が発生していること、私は大丈夫だが、両親と弟が体調を崩していること、専門家に見てもらったが、家に異常は無いと言われていること。


俺は京都での呪いの人形を連想し、さやかと顔を見合わせる。

魔力と関係あるかもしれないし、興味あるな。


「調べてみたいから、今度行ってみてもいい?」


「えっ!いいんですか? だったら今夜にでも来てもらえないでしょうか? いつも怪奇現象は夜に発生するんですよ。しかもここ数日は毎日発生してます。だから今日も多分」


「うん、今夜は特に予定は無いし、いいよ。さやかと一緒に行くね」


こうして、俺とさやかは原さんの家にお邪魔することになった。

午後の授業も終わり、いったん家に帰ってから原さんの家に向かう。


怪奇現象に興味はあるが、今回の目的の一つがメーティスがどう判断するか見てみたかったからだ。

メーティスとは近くにネット回線があるだけで念話で話をすることが可能だし、携帯電話を通じてもアクセスが可能だ。

ここ数日で、急速に色々なことを学習している。


怪奇現象は概ね18時ぐらいから始まることが多いということで、その時間にお邪魔することになった。

原さんの家に着くと、彼女が出迎えてくれた。


「いらっしゃい。今日はよろしくお願いします。両親はまだ仕事でいないけど、弟が居ます。体調崩して寝込んでいるけど」


「お邪魔します」


俺とさやかは現象が一番出ているというリビングに向かう。

南側に大きな窓があり、窓の向こうは小さな庭とその先に田んぼが広がっている。

リビングを見回すが、特に異常はないような気がする。


原さんが黙って棚の上の木でできた置物を指さす。

置物はカタカタと小さく振動していて、その振動で少し動いているように見える。


「今日も現象は始まっているわ」


「なるほど。確かに動いているね」


俺とさやかは顔を見合わせる。

魔力探知をしても、特に魔力は感じられない。

呪いの人形の様な、魔力に関係した現象では無いようだな。

探知魔法を使っても、特に危険を感じさせるものは感じられなかった。


「さやかはどう思う?」


「うーん、魔力は関係なさそうだけど、原因はこれだけでは分からないわね。メーティスの判断を聞きたいわね」


俺は念話でメーティスに話しかける。


『メーティスも見ていたか? お前はどう思う?』


『携帯電話のビデオ通話で私と接続してください』


俺は携帯を取り出すと、メーティスのシステムに接続し、携帯カメラの動画をライブで送信する。


『置物を拡大して映してください』

『窓に携帯を押し付けてみてください』

『窓に携帯を押し付けた状態で、強めに足踏みしてください。』

『リビングの窓を開けて、携帯を東方向から西方向にゆっくり動かしてみてください』


良くわからない指示をメーティスから受けてその通りにした。


『原因がほぼ分かりました。南側100mほど離れた場所にある工場が発生源の超低周波が原因です。周波数は約10Hzです』


あ、やっぱり魔力とかは関係なかったか。

京都の呪いの人形の件もあったから、ちょっと期待したんだけどなぁ。

っていうか、超低周波ってなんだ?


『超低周波は、人間に聞こえないぐらいの低い音です。レベルが大きな超低周波では、健康被害が発生する場合もあるようです。調査会社もあるようなのでそのURLを送ります。ここに依頼すれば原因特定と対応を行ってもらえます』


俺はメーティスの言った通りのことを原さんに伝える。

ちょうど、原さんの両親も帰ってきたので、ご両親にも再度話しておく。


メーティスからスマートホン用、オシロスコープ機能のアプリをダウンロードするように勧められ、それを使って超低周波の波形を両親に表示して見せた。


原さんの両親は俺の説明には半信半疑だったみたいだったが、俺がメモして渡した調査会社のURLを受け取り、明日にでも連絡してみるとのこと。

調査会社の調査結果次第だけど、一件落着かな?


魔力は関係なかったけど、メーティスの優秀さが分かったからいいや。


◇◇◇


数日後、原さんから問題が解決したと報告があった。

調査会社に依頼して調べてもらったところ、やはり工場から発生していた超低周波が原因だったようだ。


工場は食品会社で、夜の間に生産用の機械類を乾燥させるために、巨大な送風機で風を送って機器を乾燥させていた。

その送風機の空気の出口が田んぼを隔てて原さんの家の方向を向いていた様だ。

その送風機から超低周波が発生して、原さんの家を直撃していたらしい。


工場側で対策をした後では怪現象は一切発生せず、家族の体長も元に戻ったとの事。

家族の中で原さんだけ健康被害が出なかったのは、魔石ネックレスのヒール効果の影響だろうな。


怪現象が無くなり、原さんのご家族にはとっても感謝されてしまった。

人工知能、というか、ネットワーク上の従魔のメーティスはとっても優秀ですね。

励みになりますので、面白いと思った方、ブックマーク、ポイントをつけていただけると嬉しいです。

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