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6.大賢者、ボクシングの練習相手になる

今日も目覚ましも無しに朝6時半には目が覚める。

軽く朝食を作って食べてから、ちょっと体操をして体をほぐす。


昨日結構魔法を使ったのだが、一晩寝ると元に戻っている。

いや、実は寝る前にはもう魔力は回復していた。

転生前の世界と違い、この世界では魔力の元となる魔素が前世世界より相当濃度が高いみたいだ。


さて、今日は何をしようか考えていると、朝っぱらから電話が鳴る。

見たことのない電話番号だったが一応出てみると、先日のボクシング事務所の会長からだった。


「もしもし、井本君か? 清水ボクシングジムの会長清水だ。折り入って頼みがあるんだが……」


詳しく話を聞いてみると、今度日本チャンピオン戦に挑むシャーク正人のスパーリング相手になって欲しいとのこと。


聞けば、来週日本チャンピオン戦を控えているのだが、最終調整のスパーリング相手がケガで入院してしまい、代わりの相手が見つからないらしい。


そしてシャーク正人のたっての希望で俺に白羽の矢が立ったらしい。


「ちょ、ちょっと待ってください。俺はど素人だし、そちらには何人もボクサーが居るでしょ?」


「いやいやいや、うちはそんなに大所帯じゃないし、日本チャンピオンクラスと互角にスパーリングできる奴なんて居ないんだよ。それに君は天才的な才能があるし、前回のスパーリングでも最後の方は互角以上だったじゃないか? なんとか引き受けてくれないか?」


「いや、でも僕なんかが相手じゃシャーク正人さんが怒っちゃうんじゃないですか?」


「他でもない、その本人が是非にって言っているんだ。あ、ちょっと待ってくれ」


「もしもし、俺だ、シャーク正人だ。先日はいいスパーリングだった。どうだろう、是非俺の調整相手になってもらえないだろうか? 頼む!」


そこまで言われては断るのも申し訳ない。強化魔法の鍛錬にもなるので了承することにした。


「わかりました。でも他に人には見られたくないんで、そこの所よろしくお願いします」


「了解した。こっちこそチャンピオン戦前に中学生相手にスパーリングしてただなんて言えないから秘密にするよ。安心してくれ」


今すぐにでも来てほしいと言われ、さっそくジムまで自転車で出かけていく。


ジムについたら地下にあるリングに案内され、ワセリンを塗られ、グローブやらヘッドギアなど準備させられる。


ボクシングは先日一回基本を教えてもらって、ほんのわずかしか経験がないんだが、本当にいいのか?


まあ、身体強化Lv2の俺に、魔力の無い人間が武器無しで勝つのは至難の業だからちょうどいいのか?


せっかくなので、スパーリング前に今度の対戦相手の試合のビデオを見せてもらう。


3ラウンド分を画面越しに見ただけだが、知力強化の状態でビデオを見て、対戦相手の身体能力をや癖や弱点も含め概ね理解できた。


軽く準備運動をしてリングに上がる。

先にリングに上がっていたシャーク正人がお辞儀してくる。


「急な依頼を受けてくれて感謝する」


「いえいえ、僕でお役に立てるなら。とりあえず全力で打ってきてください。僕はとりあえず防御のみに徹します」


「わかった。よろしく頼む」


カーン


ゴングの音と共にシャーク正人がパンチを浴びせてくる。


身体強化魔法Lv2を発動しているので、正人のパンチがスローモーションの様によく見える。


身体も自在に動くのでパンチは難なく避けることができる。

避けられない場合はブロックで防ぐ。

そうしながら正人のパンチの弱点などを観察する。


カーン、ゴングが鳴り、第一ラウンド終了。


俺はマウスピースを外すと、正人に近寄りパンチを観察して得たアドバイスを言う。


「正人さん、左ジャブですが単調なのでもう少し変化をつけましょう。またフェイントですがこちらも単調なのでもう少し変化を付けた方がいいです」


など、細かく指示する。


「わ、わかった、アドバイス感謝する」


シャーク正人や見ていた会長も俺のアドバイスを聞いてびっくりしたような顔をしていた。


カーン、第二ラウンド開始。


このラウンドも防御に徹し、正人のパンチの修正点を確認する。


第二ラウンド終了後に、さらにパンチについてアドバイスを行う。


そして第三ラウンドからはこちらからも攻撃する。


既に正人のパンチは完全に見切っているので、パンチをかいくぐり、こちらのパンチを浴びせる。


この時、先ほど見た対戦相手のパンチの癖をあえて再現するようにしてみた。

正人選手は防御もうまいのだが、まだまだ改良の余地がある。


カーン、第三ラウンドの終了と共に、今度は防御に対してのアドバイス。


第四ラウンドもこちらからの攻撃メインで、さらなる防御の改良点を確認。


第四ラウンド終了で、今回のスパーリングを終了し、攻撃と防御全般に対するアドバイスを正人に伝える。

今のスパーリングのビデオを見ながら30分ほどアドバイスを実施する。


相手の癖や、正人選手の弱点なども織り交ぜてアドバイスしたが、俺のアドバイスが詳しく非常に的確なだったためか、正人選手も会長も目を丸くしながら聞き入っていた。


その後シャワーを浴びて着替えたところで、正人選手に声をかける。


「身体強化とリラックスのツボを知っているんでちょっとマッサージしても良いですか?」


と言って正人を長椅子に横になってもらった。


実はスパーリングしていて気が付いたのだが、正人は右ひじを痛めており、それ以外の関節や筋肉にも色々ダメージが蓄積していた。


このままでは試合で100%の実力を出し切れないと判断し、回復魔法をかけてみようと思ったのだ。


最初に正人の右ひじにツボ押しをするふりをしながらヒールを掛ける。


んっ?! 手ごたえあり。今まで自分にしかヒールを掛けていなかったが、この世界の人にもヒールが有効なのが分かった。


ツボ押しマッサージのまねごとをしながら各部分の疲労やダメージが蓄積されている箇所をヒールしていく。


試しに強化魔法を正人選手の身体に掛けてみる。


元の世界では強化魔法のレベルの低い戦士に対し、戦いの前に強化魔法で身体強化を掛けることは比較的一般的だった。

他者に掛けてもらった身体強化の効果はそれほど大きくはなく、効果も一時的だ。


こちらの世界の魔力を持たない人間相手でも強化魔法が有効かは分からなかったが、うまく強化できたみたいだ。


まあ、しばらくしたら元に戻るけど、練習時には強化された(とは言っても少し体力、力、持久力がアップするだけだが)身体は維持できるだろう。


ジムを出ようとしたら、会長が見送りながら「これは今回の謝礼だよ」といって封筒を手渡してきた。


「いえいえ、これはいただけませんよ」


と一旦は固辞したが、どうしても、ということでありがたく受け取っておく。


「どうだね、気が変わって我がジムに入ってくれないか?」


と、再度土下座せんばかりに頼まれたが、適当にあしらって帰途につく。


後で封筒を見たら5万円も入っていた。

うーん、こんなにもらうのも気が引けるけどどうしよう、と悩みつつもありがたくいただくことにした。


魔法での身体強化は強いですね。

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