66.大賢者、3回目のクリスマスを過ごす
高校に入って2回目、前世の記憶が戻ってからの3回目のクリスマスシーズンとなった。
俺もだんだんわかってきたぞ。この世界ではクリスマスは親しい異性にプレゼンを渡す必要があるみたいだ。
プレゼントにはクリスマスカードは必須で、会社経費で仕事に必要な物をプレゼントとして渡すのはNG。
俺からすると、親しい異性っていうと、さやかと恵さんと金井さんかな?
しかし、相変わらず何を渡せばいいかが不明だ。
前世での100年の記憶があるって言っても、前世での異性への贈り物って、この世界とは全然違うし、そもそも前世では女性と近しい関係になった記憶が無い。
ずっと独身だったし。
今年も24日に、新しい会社の事務所でクリスマスパーティーをやることになったので、その時までにプレゼントを準備しないとな。
今年も近藤先輩に頼ることにした。
「近藤先輩。今年もクリスマスプレゼントを準備したいんですが、アドバイスお願いできませんか?」
「去年色々教えてあげたでしょ。自分で考えなさいよ」
「そうはいっても、去年と同じものじゃ良くなさそうだし、何を選んでいいか皆目見当がつかなくって」
「井本君は会社経営や株価の予想に関してはピカイチだけど、女性に関してはからっきしね。まあいいわ、今年も一緒に買い物に付き合ってあげるわ」
そう言って近藤先輩は笑顔で了承してくれた。
「ありがとうございます。助かります」
「代わりに、ショッピングモールの人気カフェでケーキセットをおごってよね」
「は、はい」
という訳で、今年も近藤先輩の助けを借りて、皆のプレゼントは準備できた。
カードも忘れずに書かないとね。
カードの内容は……、いつもの通り、ネットで調べた定型文でいいよね。
あっという間にクリスマスパーティー当日。
今回は駅近くの会社オフィスでのパーティーとなったが、オフィスには簡単なキッチンもあるので便利だ。
もっとも今回も出来合いのオードブルとケーキで済ませたので、キッチンは使わなかった。
さやかのお父さんは税務関連の打ち合わせのため、税理士事務所に行ってるので今回は参加なし。
まあ、アルコール無しの自分の娘と同世代ばかりのパーティーは居ずらいからいいのか。
いつものように、社長である俺が乾杯の音頭をとる。
「それでは、今年一年もありがとうございました。来年も頑張りましょう。カンパーイ」
「「カンパーイ」」
今回も会社業績は良かったので、ボーナスも弾んだこともあり、皆笑顔でのパーティーとなった。
金井さんは俺の会社には所属していなかったが、1月から社員として参加が決まったので、早めの我が社の社員扱いでの参加となった。
「金井さん、来年からはよろしくね」
「こちらこそよろしくお願いします」
「まあ、冬休みの内に色々勉強しておいてね」
「はい、そういえば、隣の家の兄弟はまだ逃走中なんだ。毎日が不安で、あまり遅くまで仕事はできないんだけど。余罪も色々出てきて、どうやら両親も保険金目当てで殺されたんじゃないかって警察が再調査しているみたい」
「そうなんだ。帰る時間は大丈夫。先輩も含め、概ね学校か家でリモートで仕事しているから、仕事で帰りが遅くなることは無いよ。どうしても仕事が残ったら家でやればいいんだから」
金井さんち隣の家の家の犯罪者兄弟はまだ逃走中ってことになってるんだよな。
まさか南極に飛ばされているなんて思わないもんな。
安心させたいけど、事実を金井さんには言えないしな。
やがて、さやかたちにプレゼントを渡すことになった。
今回も近藤先輩に選んでもらったので、無難な内容になっているはずだ。
恵さんも金井さんも大喜びしていた。さやかも喜んでいるっぽかったが、さやかはあまり表情を表に出さないのでよくわからないな。
あと、近藤先輩にもお世話になったので、自分で選んだちょっとお高めのポーチをプレゼントしたよ。
近藤先輩はちょっとびっくりした顔をしていたけど、素直にうれしそうにもらってくれた。
大谷先輩は岩崎先輩とプレゼント交換をしていたし、一年生の森田君と原さんもプレゼント交換をしていた。
うん、この世界のクリスマス文化も悪くないな。
夜になるまでパーティーは楽しく進行していった。
主人公は相変わらず青春を楽しんでますね。うらやましい限りです。
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