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58.大賢者、エリクサーを作る

色々なことがひと段落したところで、俺は以前から試してみたかったことを実行することにした。

それは、エリクサーを作ることだ。


以前試しにハイポーションを漢方薬を元に作成したことがあった。

ハイポーションはそれほど苦労せずに作ることはできた。

ハイポーション、2度ほど狙撃されたときに使用し、非常に有効で助かったが、あくまでもポーションであり、怪我を直すことしかできない。


俺は前世でも伝説級の薬だったエリクサーを作ってみたかった。

エリクサーは作ることが非常に難しく、材料も入手しにくいため、前世でエリクサーは国宝級とされていた。

万が一のために、国が厳重に管理していたが、大国ですら1,2本しかストックがなく、手に入れるために戦争が起きることもあるほどの薬なのである。


死んでしまった人でも、死亡してから15分程度なら生き返らせることができると言われているし、手足の欠損も元に戻すことができる。

ポーションでは死者を生き返らせることはできないし、手足の欠損も直すことはできない。


過去二回の銃撃の時は運も良かったのでハイポーションで助かったが、今後もっとひどいことに遭遇する可能性もゼロではない。

エリクサーさえあれば、非常に心強い。


前世ではエリクサーの材料を入手することすら困難で、それを加工してエリクサーを作り出すことはさらに困難だった。


俺も前世では何度も製造にトライしていたのだが、一度も成功しなかった。


まず、高品質の材料が入手困難だった。さらに加工する場合に不純物が混じったり、温度の調整が困難であったり、混ぜ合わせる分量を正確に計量することも難しかった。


しかし、この世界では、全世界から生薬や薬品を入手できるし、それらの品質は非常に高い。

更には温度や湿度を自動調節できる機械や、分量をmg単位に計測できる精密な秤や、高純度の水やアルコールも入手が容易である。


材料に関しては、各種漢方薬や化学薬品の詳細の効能や効果に関しての情報はネットで調べれば簡単に分かるし、入手もパソコンから発注するだけで容易だ。


俺はさっそく材料集めから始めた。

前世では何度も制作にトライしたエリクサーなので、必要な材料とその特性は分かっている。

必要な材料のうち、純粋なエチルアルコールとか、カリウムやマグネシウムなどの化学薬品系の素材はすぐに手に入る。


調査に時間がかかったのは生薬系の素材だ。

前世での知識から、必要な効用と合致する生薬や薬品を調べて購入してみる。


いくつかの薬は日本では入手困難(医者の処方が必要)なので、海外から個人輸入という形になったが、2週間もしないうちにすべて入手できた。


材料が届くまでに、プレハブ小屋を発注し、庭の一角に設置して電気も引き込む。

さらに特注で、外気取入れ口に、何重もの空気フィルターを付けてもらう。

埃や虫はもちろん、花粉やカビの胞子まで完全にシャットダウンする優れ物だ。


プレハブ小屋の隙間はすべてダクトテープで塞ぎ、埃が入り込まないようにした。

入口の扉部分は特注で小さなプレハブ小屋を接続し、一種の二重扉とした。

ここにも外気処理フィルターを取り付け、エアー噴射で、衣服の埃を吹き飛ばす設備まで設置した。


さらに、空気清浄機と紫外線殺菌灯も複数台設置して、埃や花粉、細菌、カビの胞子などが入り込んでも全てシャットダウンできるようにした。

もうここまでくると半導体製造工場のクリーンルームだな。

防塵服も購入しておく。


前世でのエリクサー制作失敗の要因はいくつかあるが、そのうちの一つが製造過程で不純物が混じってしまうことだった。

完成してしまえば安定的に常温でも保管できるのだが、製造途中では埃一つ入っても駄目になることが多く、前世では埃対策で挫折することが多かった。


製造に必要な各種機材も届いた。

温度管理を厳密に行える恒温槽インキュベータや、真空凍結乾燥機などだ。精密秤も購入しておく。


前世でのエリクサー制作失敗のもう一つの要因が、温度管理の厳密さや、製作途中で薬品を乾燥させることの難しさだった。

一定の温度で、薬品を混ぜ合わせて反応をさせないといけないのに、前世では温度を一定に保ってくれる装置などは無かった。


常に人を配置して、温度を管理していたのだが、何日もかかるので、ミスが発生しやすかった。

しかも一定に保っている温度は細菌やカビが一番発生しやすい温度だったため、この工程で腐ってしまったり、カビにより駄目になってしまうことが多かった。


さらに、完成間近のエリクサーを完全に乾燥しなければならないのだが、ここが一番難しかった。

熱を加えると、材料の質が変化してしまうため、低温で乾燥させる必要があるのだが、水分だけ取り除く魔法などないため、乾燥した砂漠地帯まで行って、水分を飛ばそうとしたり、色々試行錯誤したが、この工程でも腐ってしまったりで、製造途中の薬が駄目になってしまうことが多かった。


最終工程である、乾燥工程が一番難しかったな。

低温で水分を飛ばさないといけないのに、温度が低いとなかなか乾燥しないし、乾燥に時間がかかると細菌やカビが繁殖してしまい、大抵は乾燥前に腐ってしまったのである。


しかし、この世界には「真空凍結乾燥機」なるものがある。

これを使えば材料を変質させずに短時間に乾燥させることができ、エリクサーの最終工程が完了するのだ。


ようやく製造関係の場所や装置が一通りそろったが、建物はプレハブとはいえ特注部分も多かったので、2000万円近くの費用が掛かってしまった。


やがて材料もすべて届いた。


届いた素材を探知魔法の一つである鑑定魔法で詳細を調べる。

いくつかの素材はエリクサーの材料としては使えないことが判明したが、色々買い集めた素材で使えるものを選別した結果、必要な素材はすべてそろったのである。

信頼できるメーカーから購入した素材なので、品質も十分だった。(これは鑑定魔法でも確認した。)


さて、準備はすべて整った。

前世では成功しなかったエリクサーの製造を、この世界の科学技術を使って挑戦しよう。


俺は防塵服に着替え、二重扉の部屋で埃を吹き飛ばし、エリクサー製造部屋へと入る。


エリクサーの製造工程自体は前世で何度も行っているため、迷うことなくできた。

材料に魔力を加えながら細かく砕き、アルコールや純水で成分を抽出したり、溶かしたりして混合する。


混ぜ合わせた材料を、インキュベータで一定温度に保ち、材料が相互反応を起こしすのを待つ。

ここまでは1日程度で終わった。

あとはインキュベータ内で化学反応が完了するのを待つだけだ。


3日ほどこの状態で、放置し、鑑定魔法で最終工程状態まで完成したことを確認する。

後は最終工程である乾燥だけだ。


真空凍結乾燥機に最終工程まで終わった液体を入れて、後は乾燥を待つだけだ。

一般的にはフリーズドライ方式と言えば聞いたことがあるかもしてない。

数時間で乾燥が終わり、エリクサー粉末が完成した。


鑑定魔法で確認すると、高品質のエリクサーだとわかる。

日数は掛かったし、準備にかなりの金額がかかったが、一発で成功できた。


事前に万端に準備したから製造に成功したが、前世のあの苦労は何だったんだろうと思う。

前世では10年以上の歳月をかけて、100回以上はトライしただろう。

前世では俺は世界最高位の魔力を持つ大賢者であり、金と人を湯水のように投入してもエリクサー製造にトライしていたが、一度も成功しなかった。

しかし、この世界では大した手間もかけずに(費用は掛かったが)、一発でエリクサーの製造に成功してしまった。

この世界の科学技術は恐るべし。


俺は完成したエリクサーの粉末をいくつかの小瓶に分けてストレージに入れておいた。

万が一のことも考え、さやかにも渡しておく。


今回のエリクサーの製造には、埃や不純物の混入の可能性を少しでも下げるため、俺一人で作業を行っていたのだが、完成を知らせたらさやかもびっくりしていた。

彼女もまさか一回でエリクサーが完成するとは思っていなかったようだ。

それほどまでに、エリクサーの製造は前世では難しかったのだ。


とにかく、エリクサーも完成し、これでさらなる保険を持つことになったな。


しかしエリクサーの効果をどうやって確認しようかな?

怪我を治せることは自分で試してみたが、それはハイポーションでも同じ効果があるんだから。エリクサーの効果の確認には程遠い。

まさか自分の手足を切断して効果を試すわけにもいかないし。


主人公は、前世では製造がほぼ不可能だったエリクサーを、21世紀の地球の科学技術で難なく作れてしまいました。

これからも魔法と科学技術を融合させて色々な革新を起こしていきそうですね。

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