53.大賢者、宇宙望遠鏡打ち上げを見学する
2月に入り、スペーステレスコープX社の望遠鏡が完成し、最終確認も終わったとの連絡が入った。
スペースZ社のエンジェル氏へ確認してみると、ロケットの打ち上げ準備も完了し、政府の許可も下りたとのこと。
よし、いよいよ打ち上げだな。
望遠鏡はすぐにでもチャーター航空機でアメリカに移送されるらしい。
発射ロケットはアメリカのカリフォルニア州のモハーヴェ砂漠にあるモハーヴェ宇宙港空港から発射されるとのことで、すでに発射準備を整えつつあるとのこと。
望遠鏡は2台を同時に打ち上げるとのことだ。
移動や設置はすべて順調に推移し、2月末日に打ち上げが実施される見込みとなった。
ん? モハーヴェ宇宙空港は移動魔法陣を設置してあるロサンゼルスに近いな。
打ち上げを見学に行こうかな?
俺とさやかはスペースZ社のエンジェル氏へ連絡し、見学が可能か打診してみた。
今回の打ち上げに際しては、i経済研究所が多額の融資をしている関係もあり、見学はすぐに了承された。
というより、招待状は発送済みだとのこと。
ちょっとわくわくするな。
そして打ち上げ前日。
俺とさやかはロサンゼルスの魔法陣へ転移し、スペースZ社の本社へ向かう。
本社でエンジェル氏と落ちあい、CEO自らがモハーベ空港のロケット発射場と発射管制室の見学に同行してくれた。
最初にロケット発射場に向かう。
近くで見る打ち上げ前ロケットはなかなかカッコよかった。
俺は予知魔法でロケットの打ち上げに関して予知してみた。
あれ?発射直後に姿勢が崩れ爆発?ヤバくない?
かといって、「予知魔法を使ったら、この打ち上げ失敗が予知できました」なんて言えないし、どうしよう。
次に管制室の見学に行った。
明日のロケットの打ち上げの為に最終確認中だった。
俺はここでも探知魔法と予知魔法を使って、何か異常が見つからないか調べた。
すると、一部端末の表示が探知魔法に引っ掛かった。
管制室の責任者に、管制制端末の近くまで行く許可をもらって、その端末の前まで自然な態度で近づいた。
表示される数値を見てもチンプンカンプンだったが、一部表示に赤い文字で”warning”というメッセージが表示されていることに気が付いた。
俺は一緒に回ってくれていた説明員に聞いてみた。
「ディスプレイのここに表示されているwarningって問題ないんですか?」
説明員は笑顔で答えた。
「大丈夫ですよ。この打ち上げ制御システムは全自動で、問題があればアラーム通知が鳴り響きますからね。」
そう言いながらも、俺が指さした箇所を見てみる。
次の瞬間、説明員の顔が真っ青になり、責任者の所に駆けていく。
責任者はも慌てて、技術関係と思われる人物を連れて、例の端末までやってきた。
その後、関係者でごにょごにょ話をしていたが、不具合が見つかったことは明らかだ。
やがて対処するためか、何人かのメンバーが足早に管制室から出て行った。
俺は、管制室から出て、もう一度ロケットを眺めながら発射を予知してみる。
さっきと打って変わり、今回は順調に打ちあがっていることが予知できな。
ふー、良かった。
その時さっきの説明員が現れ、
「先ほどは失礼しました。warningの表示は、ちょっとした地上側のセンサーの異常で、打ち上げには何ら支障のないマイナーな事象でした。念のため、修正しておいたので大丈夫です。打ち上げ予定にも変更はありません」
嘘だな。かなり深刻な問題だったんだろう。
まあ、少しの時間で修正できたんだから、良かったな。
その日の見学は終わり、俺たちは予約しておいたホテルで一休みした。
ホテルではスペーステレスコープX社の谷口社長と会った。
今までビデオ会議では何度も顔を合わせていたが、実際に会うのは初めてだな。
谷口社長は初めて俺を直接見て、あまりに若いので驚いていたようだったが、特に突っ込んでは来なかった。
明日は一緒に行動しよう。
◇◇◇
翌日、発射見学のため、ホテルからスペーステレスコープX社の谷口社長と共に、見学指定場所に行き、発射を待つ。
ファイナルカウントダウンも滞りなく始まり、予定時刻通りロケットは発射された。
その後、俺たちは管制室の見学エリアに移動し、衛星の切り離しまでをリアルタイムに映像で確認した。
そこにはスペースZ社の社長、エンゼル氏もいて、固唾を飲んで見守っていた。
スペーステレスコープX社の谷口社長も同じような表情で大画面を注視している。
そりゃそうだよな。保険が掛けてあるとはいえ、両社の社運が掛かっている打ち上げだもんな。i経済研究所も、両方の会社に少なくない金額を融資しているので、他人事ではないのだが。
しばらく注視していたが、やがて衛星は予定通り切り離されたみたいだ。
切り離し成功のアナウンスがされると、管制室は歓声にあふれた。
少なくともスペースZ社の社長は安堵の表情を浮かべた。
スペーステレスコープX社の谷口社長は少し安心した表情を見せたが、宇宙望遠鏡が予定通り宇宙空間で稼働が開始されるまでは気が気ではないだろう。
その日は打ち上げ成功を祝うパーティーが宇宙空港の会議室で行われた。
パーティーの最中、日本のスペーステレスコープX社の宇宙望遠鏡管制制御室から連絡があり、打ち上げられた2台の望遠鏡は両方とも稼働開始が確認できたとのこと。
谷口社長はようやく安堵の表情を浮かべたのである。
この後は、数か月の調整の後、本格運用が開始される予定だ。
主人公が出資した宇宙望遠鏡がいよいよ打ち上げられました。
この望遠鏡は後々役に立ちます。




