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50.大賢者、南極に行く

冬休みに入り、俺は兼ねてから計画していた南極旅行へ行くことにした。

ネットで調べてみると、南極への旅行ツアーはいくつか見つかった。

俺は事前に良さそうなツアーに申し込みをしていた。


ツアーは南アフリカのケープタウン経由で、そこから小型ジェット機で南極の氷上滑走路に行くツアーだ。

俺はさらにそこからセスナ機をチャーターして南極大陸内陸部まで行けるように予約しておいた。

ツアー自体も高額だったが、南極でのセスナ機貸し切りもとてつもなく高額だった。


ケープタウンは以前行ったときに転移魔法陣を準備していたので、そこまでは一瞬だ。

俺は南極旅行の装備一式をストレージに入れて、ケーブタウンまで自宅庭からジャンプする。

タクシーを拾って、ツアー会社が準備していたホテルに宿泊した。


翌日、午前中にツアー会社から参加者全員への南極ツアーの説明会が開催される。

その後バスで空港に向かい、小型ジェット機で5時間かけて南極のウルフズファン氷上滑走路へ到着。


そこの近くのベースキャンプに一泊し、ツアー客の多くはそこからペンギン見学ツアーに行ったり、ベースキャンプ周辺の散策ツアーに参加したりしていた。

一部メンバーはさらにジェット機で南極点へのツアーに出かけて行った。


俺はそんなツアー客から離れて、チャーターしたセスナ機で南極大陸の内陸部へ出かけた。

事前に、各国の基地から200km以上は離れている地点を目的地としていた。

目的地周辺でセスナ機が着陸可能な場所を見繕っておくように運営会社に事前に依頼していたため、パイロットとは簡単な打ち合わせだけで直ぐに出発できた。


もっとも、各国の南極基地は概ね海岸線上に位置しているため、ちょっと南極大陸の内部に入れば基地まで200kmぐらい離れた場所はいくらでもある。


この日は天候も上々だったので、1時間のフライトで目的地についた。

セスナが着陸できるだけあって、広々とした氷原が見渡す限り広がっている雄大な景色だな。


俺はセスナのパイロットに、

「30分ぐらいしたら戻るから待っていて欲しい」

と告げて氷原をしばらく歩く。


セスナ機が見えなくなった辺りで、土魔法で氷上を30cm位の深さで10m程の円形に削り、削った後を平らにする。

さすが南極だけあって、真夏だというのに削った氷の面はカチカチの硬い氷だ。

俺はそこに魔力を使って魔法陣を10分ほどで描き上げる。

魔法陣の上に水魔法で水を灌ぐと、水はすぐに凍り付く、しばらくする魔法陣は完全に氷の下に消え、他の氷原と区別がつかなくなった。


魔法陣に問題が無いことを確認してから、俺はセスナ機に戻った。

今回はサハラ砂漠のようなトラブルには見舞われなかったな。

もっとも、ツアー客なんだから、行方不明になったら大騒ぎだしな。

セスナ機で元のベースキャンプまで戻る。


その日は特にやることも無いので、夕食を食べた後、ベースキャンプ周辺を散策してみる。

南極の夏は日が沈まないので、何時になっても明るい。

1時間ほど散策したら飽きてしまったので、早々にキャンプに戻り、寝てしまった。


翌日はウルフズファン氷上滑走路からケープタウンへ5時間かけて戻る。

ツアーが用意したホテルへ行き、一泊する。


翌日朝、ホテルをチェックアウト後、以前作った魔法陣を使って自宅の庭までジャンプする。


「さやか、ただいま。帰ったよ」


「井本君、お帰り。南極はどうだった?」


「論より証拠。今から行ってみよう」


俺たちは防寒着を着込んで先日作った南極の魔法陣へジャンプする。

日本は真冬で寒かったが、ジャンプした南極は、真夏なのに、日本の冬より寒さを感じる。

南極大陸も海岸線近くなら気温は高いが、ここまで内陸部に入ると真夏でも-20度位の気温だ。


俺は先日見たばかりの風景だったが、さやかにとっては見渡す限りの氷原が新鮮だったようだ。

前世の世界でも、冬に雪に覆われる地方は有ったのだが、俺たちが暮らしていた国の王都近くでは雪は降らなかったし、あまり旅行に行くという習慣もなかったので、見渡す限りの氷原は初めてだった。


俺たちは氷原を歩き回ったりして、南極の風景を楽しんだ。

もっとも景色が単調で、ペンギンも居ないので1時間もしないうちに飽きてしまい、寒かったので、すぐに引き上げた。


よし、これですべての大陸に転移魔法陣を設置出来たな。

南極の魔法陣は、サハラ砂漠の魔法陣と共に、よからぬ輩や危険な物を転送する先として使用する予定だ。

南極大陸の内陸部にも転移魔法陣を作りましたが、ここはサハラ砂漠の魔法陣と同様な使い方をする予定です。

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