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49.大賢者、クリスマスプレゼントに悩む

12月に入った。

巷はクリスマス一色だ。

丁度クリスマスイブの日から学校は冬休みになるので、部活のメンバー兼、会社の同僚達とクリスマスパーティーを開くことになった。

会場は無駄に広い我が家で行うこととなり、皆で準備をすることになった。

今回も会社の経費だ。


当日の買い出しの為にメモを部室で書いていると、近藤先輩が声をかけてきた。


「井本君のお宅をバーベキューに引き続きお借りしちゃって申し訳ないわね」


「いえいえ、いいんですよ。無駄に広いし、両親も居ないので気楽ですしね」


「それはそうと、井本君はさやかちゃんと恵ちゃんへのプレゼントは準備している?」


「えっ?なんですかそれ?」


俺はこの世界の歴史や風習を学んだので、クリスマスという意味は歴史を含め理解しているのだが、クリスマスにプレゼンをを渡すってイメージは無かった。


こちらの世界で幼いころ、クリスマスの朝、サンタクロースからのプレゼントが枕元に置いてあって、大喜びした記憶はあるが、後でサンタクロースは両親だと知った。


こんな程度の知識なので、なんでさやかと恵さんにプレゼンを準備しなくちゃいけないのかが理解できなかった。

そういえば、去年は恵さんとプレゼント交換をしたっけ。でもその時は恵さんから”プレゼントを渡したい”って言ってきたから準備したんだったな。


「えっ?なんでさやかと恵さんにプレゼントを渡す必要があるんでしょう? 特にプレゼント交換の話も出てないけど」


「あー、やっぱりそんな感じなのね。井本君はさやかちゃんに色々お世話になってるでしょ? 大国主AIを作ったのもさやかちゃんだし、ラ・トレル社用のソフトウェア開発も。それに恵さんは君を慕ってこの学校に転校してきたんだよ。プレゼントをあげると喜ぶと思うけど? っていうか、絶対あの二人はプレゼント準備してるわよ」


「はい、確かにさやかには世話になっているし、恵さんが俺に相談してきたことは理解してますけど……」


「あー、もう、わかってないわね。とにかくプレゼントを準備するの! 今日の放課後、私も一緒に行くからプレゼントを買いに行くわよ。何を渡すか考えておきなさいね」


なんだか強引に約束させられてしまった。


そして、授業も終わり、俺は近藤先輩に連れられて、隣町の大型ショッピングモールに連れていかれた。


「で、何をプレゼントするか考えてきた?」


「えっ、はい。さやかはプログラミング用に高速パソコンを欲しがっていたので、さやか用には会社経費でパソコンを買おうかと。恵さんには会社から高性能なノートPCを渡していたんですが、会社用の取引で平日の日中に証券会社にアクセスしてもらうことも多く、もっと使い勝手を良くするためにタブレットPCをこちらも会社経費で買って渡してあげようと考えました」


俺は得意げにどや顔でそう答えたが、それを聞いて近藤先輩は頭を抱えていた。


「どこの世界にクリスマスプレゼントとして会社経費で仕事用のパソコンを渡す奴がいるのよ!!」


いや、前世ではパソコンは無かったので、この世界でしかできないと思うんだが?


「もういいわ。私が選んであげるから、井本君は黙ってついてきなさい」


そう言って近藤先輩はずんずん前を歩いていき、おしゃれな衣料品店に入っていった。


1時間以上かけて近藤先輩が色々悩んだあげく、さやか用に手袋を、恵さん用にはマフラーを選択した。


「さやかちゃんにはこれ。彼女はこの寒空の下、手袋しているところを見たことがなかったので、これでいいわね」


いや、さやかは身体強化魔法があるので、どんなに寒くても手袋はいらないんだが。

そうは思っても口に出せなかったので、黙っていた。


「恵ちゃんはマフラーは持っているみたいだけど、小学校からずっと使ってるみたいな、子供っぽいマフラーをいつもしているから、このちょと大人っぽいマフラーの方が似合うと思うわ」


「はい、良いと思います。でも手袋とマフラーだと、会社経費で落ちないんじゃないでしょうか?」


「なんであなたはクリスマスプレゼントを会社経費で落とそうとしているの!!! ここは君のポケットマネーで払うのよ!!」


そう言われて、俺は慌てて財布からお金を出して、プレゼントを購入する。


「で、ちゃんとクリスマスカードも書いておくのよ。分かった?」


「はっはい。分かりました」


たしか去年も恵さんにクリスマスカードを渡したっけ。

その時はネットで検索して出てきた、クリスマスカード用の定型文をそのまま書いたんだよな。

今年もその手で行くか。


そして24日のクリスマスパーティー当日を迎えた。


先輩方は朝から買い出しに行って、オードブルやら飲み物やらお菓子類を大量に準備してきた。


俺は家で会場準備を、さやかと恵さんは家で簡単な料理を作った。

恵さんは去年と同じように、ケーキを自宅で作って持ってきていた。


その内、料理も出来て、先輩方も買い出しから帰ってきたので、パーティーの開始となった。

会社主催のパーティーなのか、部活のパーティーなのかがよくわからなかったが、今回は会社経費での忘年会の名目にしたので、まあ会社主催だろうな。

みんなからはちゃんと領収書を出してもらったので、後で経費で落とすぜ。


そして部長を差し置いて、俺がパーティー開催のあいさつをすることになった。


「みなさん、この一年色々ありがとうございました。おかげさまで会社の業績はうなぎ登りです」


俺はプロジェクターで資料を映しながら説明する。


「これが現在の会社資産です。株に投資されている資産額は現時点で15億円。これは来年早々には20億まで脹らむ予想になっています。また、各社に投資した資金ですが、ラ・トレル社への融資資金10億円は、ラ・トレル社の未発行株とのトレードでしたが、ご存じのように、ラ・トレル社の売り上げは予想をはるかに上回る規模となっており、来年に計画されている株式上場時には、我が社の保有する株価は投資金額の10倍、つまり100億円の資産となりそうです」


「おー!」「えぇーっ!」


i経済研究所の所有株総額は知っていても、ラ・トレル社の株の資産価値までは知らなかった皆からはどよめきが出る。


「というわけで、我が社の未来は明るいと考えます。来年以降の我々のさらなる発展を期待して、かんぱーい」


「「かんぱーい」」


その後は皆で飲んだり食べたり歌ったり。楽しく過ごす。

もちろん全員が未成年なので、飲み物はお酒ではなくジュースやお茶だけどね。

今日は仕事のことは忘れて、学校のことや、趣味の話題で盛り上がる。


俺とさやかと恵さんで同じテーブルを囲んでいるとき、恵さんが話を振ってくる。


「見て見て、大谷先輩と岩崎先輩っていい感じよね。あの二人絶対お付き合いすると思うわ」


そんなこと言われても、前世でもこの世界でも恋愛経験の無い俺にはさっぱりだ。

たしかに仲が良い感じはするが、それって近藤先輩に対しても同じ感じじゃね?


「同じなわけないでしょ。ほら、今も二人の世界に入っているじゃない」


「んー、そうかな? さやかはどう思う?」


「え? 私もわかんない」


さやかも前世では魔法副大臣を務めるほど優秀だったが、その分勉強や修行に明け暮れており、宮廷魔法使いとして城で仕事を開始してからは、仕事ばかりで全く恋愛する暇もなかったらしい。

というより、あの年でしかも女性で魔法副大臣と務めているということは、国王の側室という意味もあるので、前世のさやかは恋愛はご法度だったはずだ。


さやかはこの世界でも色々あって、恋愛どころじゃなかったし。

そんなわけでさやかも色恋沙汰に関しては全くお話にならないほどの経験不足状態だった。


「もう、二人とも鈍いわね。近藤先輩。先輩は大谷先輩と岩崎先輩って怪しいと思いますよね?」


恵さんは近藤先輩に同意を求めた。


「そんなの見ればわかるでしょ! なにを今更言ってるのよ」


近藤先輩からはそう言って笑われてしまった。


◇◇◇


そんな感じでパーティーを楽しんでいると、ピンポーン、とチャイムが鳴った。


誰か来たかな? 俺が玄関まで行ってみると、そこには委員長、~いやもう中学校は卒業したから元委員長か?~ が立っていた。


「あ、委員長……、じゃない、金井さん。どうしたの?」


「井本君、お久しぶり。メリークリスマス」


「あ、メリークリスマス」


「あれ?にぎやかだけど、クリスマスパーティー中?」


「え? ああ、会社の……、部活のクリスマスパーティーをやってるんだ」


「そうだったの?お邪魔だったかしら?」


「全然おじゃまじゃないですよ。井本君の知り合い? 美人さんだね。パーティーに参加していってよ」


大谷先輩が顔を出し、金井さんに話しかける。


「え、でもお邪魔になるから……」


俺も金井さんを促す。


「大丈夫だよ。オードブルやケーキが余りそうなんだ。是非参加していってよ。歓迎するよ。恵さんもいるし」


「えっ? 鈴木さんもいるの? なんで? 別の高校だったわよね?」


「まあまあ。その辺の積もる話もあるし、上がって上がって」


と金井さんを招き入れる。


会場となっている部屋に金井さんを招き入れると、恵さんが彼女を見てちょっと複雑そうな表情を見せる。

そういえば、中学校時代特に仲良しって感じじゃなっかたっけ。失敗したかな?


金井さんは恵さんを見るなり質問を浴びせ始めた。


「鈴木さんが何でここにいるの? 部活のクリスマスパーティーって聞いたけど、鈴木さん別の高校だったよね?」


「う、うん。そうだったんだけど、色々あって、井本君と同じ高校に9月から転校してきたの」


「そうなんだ。井本君の高校ってどうなの?」


「うん、すごく自由で楽しい。バイトもできるし」


大谷先輩も口をはさんでくる。


「そうそう、俺たちのバイト先は井本の会社なんだぜ。井本は会社を立ち上げたんで、俺たちはそこの従業員でもあるんだ」


大谷先輩、余計なことは言わないで下さいよ。おれは心の中で突っ込む。


「ふーん」


金井さんはそう言った後は、この話題には触れなかったが、何か色々考えているような感じだった。


パーティーは暗くなるまで続けられ、18時にお開きにして解散となった。


「「じゃあね」」


本来ならこのまま冬休みで、先輩や恵さんとは会うこともないのだが、まだ株式市場はあと数日は開いているので、朝の定例会議はビデオ会議でやるんだけどね。


あれ? そういえば金井さんってなんの用事で俺んちに来たんだろう?

主人公、青春していますね。うらやましいです。筆者が高校の時は・・・・。(´・ω・`)

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