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48.大賢者、両親の仇打ちをする

11月に入った。そろそろ朝晩は肌寒くなってきたな。

前世でも四季はあったが、この世界の日本ほどはっきりしていなかった。

日本は夏は暑すぎるし、冬は寒すぎるな。


ラ・トレル社だが、業績はうなぎ登りだった。

i経済研究所からの融資時点では、ラ・トレル社のメインの製品のNet Butlerシステムは、不具合の修正に手間取っていて、予定より大幅に遅れていた。


しかし、さやかのおかげであっという間に不具合の修正は終わってしまい、さらには強力な追加機能まで付加され、大幅に使い勝手が良くなっていた。


そして、多くの顧客を抱えて元の俺の父親の会社であるiシステムサービスから転職してきた敏腕営業の佐々木氏の力で、顧客もバンバン増えていった。


Net Butlerシステムは。ネットワークの構築を簡素化するシステムだったのに加え、さやかがAI機能まで付加したため、既存システムへの設置が非常に簡単となっており、ほとんど素人でもシステムの構築が可能となっていた。


その為、昨今のシステムエンジニアの人材不足に影響されることもなく、ネットワークが構築できると好評だった。


半面、同じようなシステムを展開していたiシステムサービス社は、かなりまずい状況に陥っているとの情報を佐々木さんより伝え聞いた。


不具合の対応の為多くのエンジニアや営業が奔走しており、まったく新規の顧客を開拓できなかったばかりか、既存の顧客に見限られ、ラ・トレル社にどんどん乗り換えられたらしい。


俺は調査会社と契約し、iシステムサービス社の調査を依頼した。


結果はすぐに出てきた。どうやら顧客への違約金や、キャンセルによる売り上げ減少で、債務超過に陥っているようだ。


元々俺の父親からの会社乗っ取り騒動の影響で債務超過状態だったのに、売り上げ減少で再建の目途が立たず、メインバンクからは新規の融資が断わられ、市中金融の高金利の借り入れに頼っているとのこと。

そしてついに資金繰りがショートし、年内にも第一回目の不渡りを出しそうらしい。


そろそろ潮時だな。

俺はラ・トレル社のCEOに連絡をとり、iシステムサービスの買収について提案してみた。


「村上社長、こんにちは。昨日メールでi経済研究所の現在の状況に関する資料をお送りしましたが、今なら安くあの会社の買収が可能ですよ」


「資料を見させてもらったよ。確かに現在抱えている顧客と技術者をゲットできることは大きいが、買収する資金がなぁ……」


「それなら大丈夫です。必要な資金はこちらで準備しますよ。条件としては現在のiシステムの社長派の役員と管理職の排除です。もちろん現社長も排除願います」


「分かった。資金さえあれば大丈夫だ、すぐに動くよ。年内には決着をつけるよ」


「ありがとうございます。詳細については別途詰めましょう」


「ところで佐々木君から聞いたんだが、井本君はiシステムの創業者の社長の息子さんだってことだね。やはり会社を取り戻したいのかね?」


「いえいえ、今はi経済研究所のCEOですからね。会社の利益優先ですよ。大口融資先のラ・トレル社がiシステムを買収してさらなる顧客獲得し売り上げを増加させるのは、我が社にとっても利益ですからね。そして、現在のiシステムの経営陣が無能なので経営危機に陥っているんですから、早めに市場から退場してもらいたいですね」


「あはは、分かった。ではそういうことで。買収に関しては任せておいてくれ」


まあ、ラ・トレル社が買収しなければ、iシステム社は遠からず倒産するのだから、買収は従業員にとっても(現社長派は除くが)悪いことではないだろう。


◇◇◇

そして、年内には企業買収の合意がなされ、年明け早々に買収は完了したのである。


約束通り、iシステム社現社長の小林健一は、会社を倒産寸前までにさせた責任と、会社の資金の私的流用の責任を取って辞めてもらい、私的流用したのと相当する金額の返却命令を弁護士を使い通知された。


退職金は無しで、不服であれば裁判となる旨を伝えたところ、素直に条件をのんだ。

そりゃ、使途不明の資金の一部は、マフィアに渡っていたんだから、裁判は避けたいだろうな。

現社長の取り巻きたちは平社員に降格、会社資金の使い込みが発覚した役員や管理職に対しては懲戒解雇と、使い込み分の返却命令が出された。


これで親父を陥れたやつらは一網打尽で制裁できた。特に父親を追い出した張本人は、私的流用資金の返却のため、資産をすべて失い、さらには借金まで背負ったと聞いた。

自業自得だな。


小林元社長の行方がその後分からなくなったので、調査会社に追跡調査を依頼していたが、後日報告があり、会社を追われた小林は、裏で糸を引いていた某国の企業から粛清された可能性があるとのこと。

確実な情報ではないがとの前置きだったが、まあその通りなのだろう。


アジアの某国のその企業は、日本のコンピュータネットワーク市場に影響を及ぼそうと、小林を使ってiシステムサービスを乗っ取ったのではないか? とのこと。


政府や自衛隊関係の通信ネットワークにも関与していたiシステムサービスが某国のターゲットになっていたのでと予想された。

その会社への乗っ取りの黒幕は某国政府もしくは軍の可能性が高いとのことだった。

そして多額の資金を使って、小林を操り会社を乗っ取ったはいいが、1年もたたずに会社自体をつぶしてしまい、計画が失敗に終わってしまったための報復と口封じのために、小林は消されたのだろうということだ。

実際、小林は行方不明らしい。


俺は、父親と母親のお墓参りに行き、敵は討った旨報告した。

主人公の両親に酷い目にあわせて会社を乗っ取った人物についに制裁を加えることが出来ましたね。

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