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46.大賢者、スペースZ社と交渉する

資金も問題が無くなったので、スペーステレスコープX社に対し融資する方向で決定し、俺は改めてスペーステレスコープX社の事業計画を眺めていた。


打ち上げ費用を眺めていた時、以前米国のロスアンジェルスで知り合ったスペースZ社のCEOのエンジェル・ジョンソン氏を思い出した。


あそこならもっと安価に打ち上げができるんじゃないかな?

エンジェル氏の名刺を引っ張り出し、彼宛にメールを書く。


自分は投資ファウンドの会社を立ち上げたこと、スペーステレスコープX社に融資していることを説明し、500Kgの宇宙望遠鏡の打ち上げがスペースZ社のロケットで可能か否か、可能であればその費用はを問い合わせてみた。


それらを英語で書いて、エンジェル氏に送付する。

翌日には返事が来た。


それによると、500Kgの衛星を低軌道に打ち上げるなら、安価に可能。

その為にはもう少しで完成予定の新型ロケットが必要だが、資金面から停滞状態であること。

追加で必要な資金は日本円にして2億円との事。


ふむ、現在のi経済研究所の資金は12億円。スペーステレスコープZ社への融資は早くても来月からなので、今月中に15億円まで保有資産は増やせそうだし、融資は可能だな。


俺は返信を書く。


2億円であれば来月にでも融資は可能であること。融資を行った場合、500Kgの宇宙望遠鏡2機を打ち上げるのに、必要な費用と、打ち上げまでに要する期間を見積もってほしい旨連絡する。


エンジェル氏からはすぐに返事が来た。


融資に関しては是非お願いしたい。来月10月の初めに融資を実行できるなら、ロケットは来年1月にも打ち上げ可能との事。


ロケット完成早くね?

まあ、社内での稟議も必要だし、一度検討するか。

俺は再度返事を送った。


『了解した。融資は検討するが、まずは当社のWebサイトにアクセスして、規定のフォーマットで融資の要求を出して欲しい。その上で詳細は回答する』


エンジェル氏も了解して、その日のやり取りは終わった。


その直後、国立天文台研究者の加藤正樹氏から電話が来た。


「もしもし、井本君ですか? チリのサンティアゴでお金を貸してもらった加藤です。連絡が遅れ申し訳ない」


「あぁ、加藤さん。こんにちは」


「ようやく日本に帰ってこれたんだ。借りていたお金をお返ししたいんだが、いつがいいかな?」


「今日でもいいですよ。今どちらですか?」


「今は文京区本郷の東京大学にいるんだ」


「じゃあ、新橋まで出てこれます?そこで落ち合いましょう」


「おや、井本君はちょうど東京にいるんだね。ちょうどよかった」


まあ、東京から200Kmは離れた場所にいるんだけどね。


「じゃあ、1時間後に新橋駅のSLの前で」


「了解した」


俺は早速庭の転移魔法陣を使って東京の湾岸地区の公園まで移動する。さらにそこからゆりかもめで新橋まで移動。30分もかからなかったな。

少し待って、加藤氏と新橋駅前で落ち合い、近くのカフェへ移動。


お金を返してもらってから、色々話をした。


「チリでの作業はうまくいったんですか?」


「あぁ、問題なく新装置の設置と稼働は確認できた。ついでにいくつか興味のある天体も観測してきたんで帰国が遅れたんだ」


「そうなんですね。電波望遠鏡での観測だったと思いますが、光学望遠鏡でも対象天体を確認したりするんですか?」


「それなんだよ。光学望遠鏡でも同時に確認したいんだが、地上の望遠鏡では対象天体の確認は困難だし、宇宙望遠鏡は観測スケジュールがいっぱいいっぱいで、とても俺たちの研究まで回ってこないし。せめてハワイのすばる望遠鏡が借りられればまだいいんだが……」


「なるほど、口径1.2mの宇宙望遠鏡が2台セットで使えるとしたらどうですか?24時間で1台100万円ですが。」


「1.2mは小口径だが、宇宙望遠鏡なら十分な性能かもな。そんなのが利用可能なら1年単位で借りたいよ」


「実は、来年早々にも打ち上げ可能な宇宙望遠鏡に心当たりがあるんですが、今ならまだ予定は入っていないので、予約は入れられますよ」


「本当かね?商売柄その辺りの情報は入ってくるはずなんだが、聞いたことないなぁ」


そりゃそうだ。スペーステレスコープX社の望遠鏡は、お金が無くて計画がとん挫しているんだからな。


「大丈夫です。信頼できる情報ですよ」


「実はスバル望遠鏡も、ハッブル望遠鏡も、ジェームズウェップ望遠鏡も、観測依頼を出しているんだが、2年以上先まで予定が埋まっていて、全然こちらに回ってこないんだよな。1.2mとはいえ、宇宙望遠鏡が使えるなら1年単位で借りるよ。高性能望遠鏡を借りるための予算は既にあるんでね」


「分かりました。では別途宇宙望遠鏡の関係者から加藤さん宛てに連絡を入れてもらいますね」


「分かった。期待しているよ」


そのような会話をしてから、俺たちはカフェを出てそれぞれの帰途につく。

俺はゆりかもめで魔法陣の場所まで戻り、転移魔法で自宅に帰る。


◇◇◇


翌日、i経済研究所のメンバーで、スペーステレスコープX社への融資についての打ち合わせが行われた。


俺が口火を切った。


「会社の資産総額も融資の十分な額になりましたので、予定通り融資を実施する方向で行きたいと思います」


「一番のリスクは、顧客が付くかどうかだな。その点は井本社長はどう考えてる?」


「それなんですが、国立天文台の関係者とコネがあり、1年単位で望遠鏡を使ってもらえそうなんだ」


「えっ?井本社長交友関係広すぎじゃない?」


岩崎先輩がびっくりする。


「そういうこともあり、融資は行うことで皆の了解を得たいんだ」


「わかった。最終決定権は社長にあるんだから、従うよ」


「ありがとう、そして先ほど、融資の依頼のメールが米国のスペースZ社という会社から来たんだが、こちらにも融資を検討したいと思っている。実はこちらのCEOも僕の知り合いでね」


「あの、米国にも知り合いのCEOが居るって、井本社長って何者なんですか?」


「まあまあ。スペースZ社は融資さえ受けられれば、来年早々には新型ロケットで宇宙望遠鏡程度なら打ち上げ可能ということだ。費用も非常に安価らしい。概要を少し聞いたんだが、かなり画期的な新型ロケットエンジンで、安価なのに高い信頼性が確保できるみたいだ。是非融資する方向としたいので、届いた資料を皆で確認してもらいたい」


「「了解!」」


その日の午後、スペーステレスコープX社のCEOに対し、融資の決定と、国立天文台よりレンタルの希望があるかもしれない件と、スペースZ社についての情報を提示した。


◇◇◇

スペーステレスコープ社社長の視点:


i経済研究所との打ち合わせの数日後、融資決定の連絡が来た。


詳細のすり合わせはこれからだが、これで早ければ来年早々にも望遠鏡は完成させることができる。

後は、打ち上げロケットの確保だが、これがなかなかの難物だ。


融資が受けられない限り、望遠鏡は完成できない状況だったので、まだどこのロケットにも打ち上げの依頼はしていなかったのだ。

今から打ち上げの打診をしてみるが、なかなか難しそうだ。というのは、相乗りで打ち上げないと費用がかさむのだが、相乗り用の空きスペースや重量の余地がなかなか合わないのだ。


しかし、i経済研究所からは驚愕の情報を得られた。

米国のスペースZ社の新型ロケットが来年早々に完成し、非常に安価に宇宙望遠鏡2機同時に打ち上げ可能とのこと。


井本社長からは、できるだけ早めにスペースZ社に連絡を入れるようにと、相手の連絡先を教えられた。

早速メールを送ってみると、相手は大変乗り気で、最初の打ち上げでの宣伝効果も期待して、破格の費用での打ち上げを提案された。


こちらとしても渡りに船なので、すぐに了承して、打ち上げサイズや重量や条件など、詳細を詰めていくことになった。


更に衝撃的だったのは、井本社長が、大口の顧客を紹介してくれたことだった。

国立天文台の、ほとんどトップに近い研究者である、加藤氏だった。

早速加藤氏にも連絡をとってみたが、口径1.2mの宇宙望遠鏡で、打ち上げが成功したなら長期でレンタルを受けたい旨返事があり、打ち上げ後の事業運営に大きな援軍となったのである。


井本社長って何者なんだろう?

そんな疑問が頭をよぎったが、とにかく急激に忙しくなり、余計な詮索をしている暇など無い。

とりあえず目の前の仕事を片付けていこう。


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