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44.大賢者、夏休みが終わる

夏休みも終わり、新学期が始まった。


さやかはNet Butlerの開発関係や、魔法陣解析ソフトの開発で、ずっとパソコンの前で作業をしていて、全然夏休みになっていなかったが、大丈夫なんだろうか?


前世では若くして魔法副大臣に抜擢され、毎日が激務でプライベートの時間なんてなかったんだし、この世界では高校生なんだから、もっと人生を楽しんでも良いと思うんだが。


さやかにそう言っても、


「前世ではコンピュータなんてなかったし、今はソフトを作るのが楽しいのよ」


と返事される始末。


それでも、経済研究部の先輩方と皆で水族館に行ったり、海水浴に行ったりした。

大谷先輩が運転免許証を夏休み直前に取得したので(普通の学校では運転免許証の取得には制限があるが、俺たちの高校では逆に推奨されてる)レンタカーを借りて皆で移動できたのが便利だった。

そんな感じで少しは高校生らしいこともしていた。


そんな時にもさやかはノートPCを持参して、水族館や海水浴場でもソフト開発をしようとしていたが、皆は全力でそれをやめさせた。

それでも8月いっぱいでラ・トレル社向けのソフトの開発はひと段落して、さやかも少しは楽になったようだった。


しかし多少余裕のできた時間を使い、Net Butlerの新機能に関する特許を書き上げてi経済研究所の名前で出願していたりしていた。


そんな感じの夏休みも終わり、2学期が始まった。恵さんは予定通り俺たちの高校へ転校してきた。

新学期の始まりの日に、恵さんは俺たちを見て嬉しそうに走り寄ってきた。


「井本君、おはよう。今日から同じ高校だね。よろしくね」


「ああ、よろしく。早速経済研究部の部室に行こう」


夏休み中は、バーベキューや海水浴は別として、会社関係や部活関係の打ち合わせも殆どビデオ会議で済ませていたので、部室で顔を合わせるのは久しぶりだ。

今日から恵さんも参加することになった。


いつものように会社での取引に関し投資方針に関する打ち合わせを終えてから恵さんを連れて学校を案内する。

とは言っても、それほど案内する場所も無いので直ぐに終わってしまった。


新学期初日とはいえ、この学校では早速初日から授業があった。

恵さんとさやか一緒に必須科目の授業を受ける。

さやかはタブレットを持ち込んで、授業中にソフト開発の内職をしていた。


そういえばさやかと恵さんは最初はあまり会話が無かったな。

それでも部活(というか会社の)メンバーで一緒に行動したりしているうちに打ち解けてきたようだ。

そもそもさやかも恵さんもあまり積極的に話をするタイプではなかったので、打ち解け角に時間がかかったみたいだが、仲良くなって良かった。


もちろん恵さんにもさやかは従妹だと伝えてある。しかし、同じ家で俺と二人で暮らしていると聞いた時は、なんかショックを受けたような顔をしていたな。なんでだろう?


新学期が始まって3日後に全国の高校一斉テストがあった。俺たちの高校は希望者のみが受けられるテストだ。このテストの点数如何によっては一部授業の免除などの特典があるので、勉強に自信のある生徒の多くは受けるようだ。


俺は恵さんに聞いてみた。


「恵さんはここしばらく高校の授業は受けてなかったみたいだけど、実力テストは受けるの?」


「ええ、受けようと思うの。夏休み中は引きこもりで遅れていた分も頑張って勉強したから」


「そうなんだ。家庭教師も塾もなかったと思うけど、勉強は捗どった?」


「それがね、前に井本くんちでバーベキューしたじゃない。その時に悩みを聞いてもらって、その後の事も決まって、悩みが無くなったせいか、頭がすっきりして勉強が急に捗るようになったの」


ん-、それはきっとバーベキューの時に俺が恵さんに掛けたヒール魔法の効果かもしれないな。

落ち着かせるために、精神に作用するような形でヒールを掛けたから特に知力に関して効果が出ていたのかもしれない。

やっぱりむやみにこの世界の人にヒールはかけない方がいいかもしれないな。


そして実力テスト当日。俺もさやかも恵さんと一緒に受けた。俺とさやかにとっては高校での学習範囲はすべて頭に入っているので、どうということのない内容なのだが、事前にさやかとは相談して、1、2問わざと間違えることにしていた。


というのは、全て満点を取ってしまうと当然全国1位となり、目立ってしまうからだ。前世での経験から目立つことはなるべく避けることを決めている俺たちとしては、このような些細なことでも注意していくことにしている。


実力テスト自体は問題なく完了し、2週間もすると結果が通知された。

それによると、俺とさやかはわざと間違えたにも関わらず、全国20位以内に入っていた。まあこんなもんだろう。


驚くべきは恵さんだ。全国5位だ、元々頭は良かったので進学校に行っていたことは理解しているが、高校の1学期はほとんど学校に行けず、塾や家庭教師もつかなかったのに、全国5位とは。やはりヒール魔法の効果が大きかったのか? 恵さん自身も結果に驚いていた。


「おいおい、恵さん。実力テスト結果すごいね」


「私もびっくりしたの。夏休み中はすごく勉強が捗ったって感じはあったんだけど……」


「俺とさやかは東京大学を目指すが、恵さんも一緒にトライしないか?」


「うん、東大、狙ってみる」


まあ、ヒールの効果はそのうち消えると思うが、様子を見ながらまた掛けてあげよう。


鈴木恵さんが、主人公を慕って転校してきました。

主人公は恋愛には全然興味が無いんですけどね。

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