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38.テロリストの最後

この章では主人公は出てきませんし、テロリストの最後の様子が記述されているだけなので、残酷なシーンとかが苦手な方は読み飛ばしても大丈夫です。

某国テロリスト視点:


俺の名前はチョウ。某国の特殊作戦部隊の第一部隊の隊長であり、他のグループとは待遇が格段に良い。その代わり、訓練は過酷で、数か国語を操るエリート中のエリートだ。


今回の指令は『日本の原子力発電所を襲撃せよ』とのことだった。日本は国内警備がゆるゆるなので、俺たちの間では日本での活動はピクニックと呼ばれている。


さすがに今回は襲撃対象が原子力発電所なので、簡単にはいかないだろうが、何とかなるだろう。夜の闇に乗じて工作船で大量の武器弾薬持って日本海側の某海岸に上陸。先行して日本に来ていた部下が事前に準備してくれたトラックに武器弾薬を詰め込んで、ターゲットの発電所近のアジトに向かう。


先行で潜入していた部下達により、破産状態で安く買い取ったスクラップ解体会社の敷地にトラックを乗り入れ、監視カメラを複数設置して準備を進めた。


いよいよ実行当日の朝、俺たちは緊張しつつも準備を進めていたが、急に監視カメラの映像が次々に映らなくなった。これは敵襲か?と思った時、室内の監視カメラがいきなりバシッと音を出しで動作を停止した。


俺は拳銃をホルスターから抜き出そうとした瞬間いきなり意識を失った。


◇◇◇

焼けつくような暑さを感じで俺は目を覚ます。


起き上がって周りを見渡すが、360度一面の砂漠だ。周りには仲間6人が転がっていて、俺と同じように意識を取り戻しつつあるようだ。300m離れた廃ビルの屋上に待機させていた狙撃兵の部下もいる。


俺は部下に「何が起こったんだ?」と聞きまくる。誰もかれも言うことは同じで、「急に意識を失って気がついたらここに居た」とのことだった。


唯一狙撃兵の部下からは多少違う話が聞けた。


「ビルの屋上から監視していたら、男が一人壁を乗り越えて侵入してきた。仲間が次々に意識を失わされていたみたいだったが、どんな方法を使ったのかは分からない。そしてトラックの運転手を引きずりだそうとしていたところを狙撃した。敵に着弾し、血だらけになって転がったので、さらに狙撃した。それも着弾したのだが、トラックの下に潜り込んだので、そこから先はどうなったかわからない。しかしたぶん死んだと思う。それからしばらく監視していたんだが、急に意識を失ってしまった」


「特殊作戦部隊最強の俺たちが抵抗もできずに気を失わされるとはな。まさか甘ちゃんの日本の奴らにやられるとは思わなかったぜ。それよりここはどこだ?」


部下たちも周囲を見渡して『分からない』と口々に言う。


雲一つない空からは、凶悪な太陽がジリジリと俺たちを炙ってくる。とりあえず周囲を見渡し、遠くに岩山らしい物が見える方向に移動することにした。身に着けているものを探るが、銃もナイフも何もかもが無くなっていた。


10分も歩くと急激にのどが渇いてきた。部下たちも何も持っていないらしく手ぶらだ。いや、一人だけ懐に何か隠しているような奴がいるな。


「おい、お前、服の中に何を隠している?」


「何も無いです」


そいつは慌ててごまかそうとしたが、全員で押さえつけて探ると服の下からペットボトルに入った水が見つかった。


「おい、こいつは何だ!?」


「俺が起きたら横にこれが落ちていたので、拾っただけだ。俺が見つけたんだから俺もものだ、返せ」


「馬鹿野郎、これは隊長である俺が管理する」


そう言ってペットボトルのキャップを開け、水を飲む。助かった、染み渡るようだ。


それを見た部下共は血相を変えて俺に詰め寄る。


「卑怯だぞ、俺にも寄越せ!」


そこから先はペットボトル1本の水をめぐって大乱闘となった。全員が訓練を積んだエキスパートだ。そいつらが素手とは言え本気で乱闘を繰り広げたのだからたまらない。

十分後には全員がボロボロになって座り込む事態となってしまった。


我に返って周りを見渡すと、ペットボトルは口を下に砂の中に落ちており、慌てて拾い上げたが既に中身は残っていなかった。


それを見た俺も部下も激高して『テメーが悪いんだ』とばかりに再び乱闘が始まってしまった。更に10分後、ほぼ全員が倒れこんだ状態になり、ようやく我に返った。


「おい、お前ら、仲間割れをしている場合じゃないぞ。なんとかここから抜け出さないと」


「くそっ、ムカつくがその通りだ」


俺たちはボロボロになりながらもなんとか歩き続ける。歩いても歩いても周囲の風景は何も変わらず、砂漠が続くだけだった。


俺たちは厳しい訓練を積んでいるエリートだ。仲間割れさえしなかったら、体力を温存出来ていたら、訓練を積んでいた俺たちが協力し合えばまだ何とか助かっていた可能性はあったはずだ。そう、砂漠でも水を確保できた可能性もある。しかし……。


俺はぼんやりそんなことを考えながらノロノロ歩みを進めていたが、やがて倒れこんでしまい、動けなくなった。部下も誰も助け起こしてくれない。助けるどころか部下も次々に倒れこんでいた。


『ここはどこだ? なぜこんなところに? 俺はエリート部隊のトップなんだぞ。そうか、これは夢なんだな。そろそろ目覚めてもいいころだろ。』


ふと気が付くと夜になっていた。

焼けつく様だった日差しは無くなり、逆に肌寒く感じて、この寒さで目が覚めたようだ。

俺の他に3人の部下が周囲に転がっていた。

その3人を確認すると、狙撃兵の1名はもう息をしていなかった。

それ以外の2名はまだ息があった。


他の3人は


生きていた2人をひっぱたいて目を覚まさせる。


「おい、残りの奴らはどこへ行った」


「分かりません」


急激に温度が下がってきて、昼間とは逆に、俺たちは寒さに震え始めた。

月は無く、空は満天の星空だ。

喉がカラカラでそんな星空を眺めている余裕はない。

気持ちが悪かったが、残った3人で身を寄せ合って寒さを少しでも防いだ。


そして夜が明けた。

ようやく寒さが和らいだと思ったが、直ぐに灼熱の地獄に変わる。


居なくなった3人の物と思われる足跡が残っていたので、俺たちはその足跡をたどってみる。

意識もうろうとし始めた昼頃、いなくなった3人が倒れている姿が見えた。

一緒に歩いてきた2人はついにその場で力が尽き、座り込んでしまう。


俺はそいつらを助ける力もなく、一人で歩き続ける。

少し先に緑が生い茂っている場所が見える。オアシスだ。あそこまでたどり着ければ助かる。

俺は意識がもうろうとなっていたが、何とかオアシスまでたどり着いた。

オアシスだと思っていた場所は、単に岩がむき出しになって地面から突き出しているだけだった。

水どころか植物の1本も無い。


俺は絶望でついに力尽き、意識を失った。


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