37.大賢者、テロリストと戦う
テロ実行当日。俺とさやかはトラックが出発する1時間ほど前に、近くの空き地に転移魔法で移動する。
すぐにでも突入したかったが、まずは探知魔法で敵の数を確認する。前回と同じく6人の人間が探知できた。その後ピッピをアジトへ移動させ、監視カメラを確認する。屋外には全部で5台の監視カメラが設置されていた。
俺はピッピをカメラの一台に近づかせ、電撃魔法をピッピを経由してカメラに浴びせる。雷の直撃に近い電圧を喰らい、カメラは煙を上げて機能を停止した。
屋外設置の5台のすべての監視カメラを破壊する。
さやかには後方支援で空き地に待機してもらい、俺は一人でアジトに乗り込む。体力強化魔法を最大限に掛けて、アジトの壁まで走って近づく。壁のへこみをうまく利用し、するすると壁を乗り越えて中に降り立つ。
トラックに駆け寄ると、運転席に一人いたので、電撃魔法を喰らわせ気絶させる。
更にトラックの後方に移動すると、中に3人のテロリストが荷物のチェックをしていたので、彼らにも電撃魔法を喰らわせ気絶させる。
探知魔法で確認すると残りの2名はプレハブ建屋の中にいることが分かったので、建屋のドアからそっと中を覗き込む。すると、監視カメラが内部に見えたので、電撃魔法を喰らわせて故障させる。その後ドアを静かに開けて中に侵入する。
一人のテロリストが荷物を運び出そうとしていたので、電撃で気絶させる。さらにもう一名が奥の部屋にいることが分かったので、部屋のドアを蹴破り中に侵入すると同時に、電撃を喰らわす。
よし、これで撃退完了。探知魔法で周囲に敵が居ないことを確認し、身体強化魔法を解除する。
俺は外に出てトラックの運転席のテロリストを引きずりだそうとした。
その瞬間、俺は殺気を感じ慌てて身体強化魔法を掛けようとしたが、その前に左背中に強い衝撃を受けて吹き飛ばされ、トラックの運転席のドアに叩きつけられる。
地面に転がり意識が遠のいたが、なんとか気絶を避ける。どうやら背中から銃で狙撃されたようだ。銃弾は左背中から胸まで貫通したらしく、左肺がぐちゃぐちゃになっている感覚がある。幸い心臓は外れたようだった。
ヒール魔法で応急処置を施そうとした瞬間、2発目が腹に着弾し貫通した。
「ぐはっ」
俺は血の塊を吐き出し、意識がさらに遠のく。なんとか意識を保ってトラックの下に転がり込む。
どこから狙撃されたのかは全く分からない。発射音が一瞬遅れて遠くから聞こえてきた気がしたから、かなり遠方からの狙撃だと思われた。
油断した。テロリストがまさか狙撃兵まで準備していたとは思わなかった。
アジト内部と周辺だけを探知して安心して油断していた。
身体強化の解除は早すぎた。
さやかが念話で話しかけてきた。
「井本君、大丈夫?」
俺は答える余裕もなく、薄れる意識の中何とかストレージからハイポーションを取り出すと飲み干す。それだけでは足りなさそうだったので、2本目を傷口に直接かける。同時にヒール魔法でダメージを少しでも回復する。
ハイポーションの効果が出て、少し楽になったところでようやくさやかに返事ができた。
「なんとか大丈夫だ。300mぐらいの遠方から狙撃された。吹き飛ばされた方向から推定すると、北北西の方向の比較的高い位置から狙われたと思う」
「分かった。探知してみる」
十数秒後返事がある。
「分かったわ。300m離れたビルの屋上に狙撃兵が居るわ。ピッピを向かわせられる?」
「やってみる」
ピッピを300m先のビルに向けて移動させる。近づくと狙撃兵がライフルをこちら向けて構えているのが見えた。
ピッピを近づけた後、ピッピを通して狙撃兵に電撃魔法を喰らわせる。
ピッピへの負担は大きかったが、ピッピ経由で喰らわせることのできる最大限の電撃1発で、狙撃兵は気絶した。
「狙撃兵は気絶させた。周囲500mで敵対する人間が居ないか探知してみてくれ」
さすがにこれ以上狙撃を喰らうとかなりまずい。
しばらくして返事があった。
「周囲700mまで探知して、高い建物は優先的に探知したけどもう敵対する気配はないみたい」
「ありがとう。さやかも合流してくれ」
俺はそろそろとトラックの下から這い出てさやかと合流した。
危なかった。前回のサハラ砂漠での銃撃と比べてもヤバかった。ハイポーションの効果でケガは概ね癒えてきたが、失った血液までは補充出来ないため、貧血でめまいがする。
服もズボンも血だらけになってしまったので、ストレージから着替えを出して着替えておく。
さやかにも手伝ってもらい、建物の中の2名とトラックにいた4名を外に引きずりだす。そして全員をロープで縛りあげる。
そして魔布で包んでストレージに収納する。
トラックの中の武器関係もストレージに収容しようと思ったが、トラックごとストレージに収納できるんじゃないかと考えトライしてみた。
さすが空間魔法Lv5だけあり、トラックが丸ごとストレージに収容できた。
狙撃兵がまだ意識が戻っていないことをピッピを通して確認し、さやかに狙撃兵のいるビルの屋上へ向かってもらう。その間に、俺は建物内に入り、建物内にある物を片っ端からストレージに収納しておく。
建物内にはパソコンの他に、大量の武器が保管されており、すべてストレージに収納させてもらった。
さやかから、狙撃兵を縛り上げ、魔法陣を描いて自宅の裏庭に転送した旨連絡が来たので、俺もいったん帰ることにした。
念のため周囲500mに敵対する意識を持った存在が無いか再度探知をして、問題がないことが分かったのでテロリストをストレージに収容したまま自宅庭に転移した。
自宅庭でさやかと合流し、テロリストをストレージから出して詳細に確認する。
身分証明書など全く身に着けていなかったが、ナイフや拳銃を身に着けており、上半身には防弾チョッキを着ていた。
俺はそれら武器類をすべて剥ぎ取り、ストレージに突っ込んでおく。
テロリスト共から情報を引き出すことにした。拷問とかする必要はない。
額に手を当てて探知魔法で頭の中の情報を魔力で探る。
どうやら某独裁国家のテロリストで、現在実施されている日米首脳会談に合わせてテロ行為を行う予定だったらしい。
実際には俺たちが食い止めたのだが、予知魔法で見ることができた映像から、俺たちが防がなければテロは成功して、甚大な影響を日本に与えることができただろう。
更に全員から情報を引き出すと、こいつらはテロの選任部隊で、この7人は国外テロ専門のエリート軍人のようで、今までに何十人も国内外で殺害していることが分かった。
うん、有罪だね。
このまま警察に突き出してもまだテロ行為は実行していないんだから有罪に出来なさそうだし、ここは元王立最高裁判所判事だった俺が判決を下そう。
判決:追放刑
俺はまだ意識の戻っていないテロリスト共を縛っていたロープを解き、ミネラルウォーターのペットボトル1本だけ置いて、転移魔法陣を使ってサハラ砂漠の魔法陣へ転送した。はい、これでおしまい。
ストレージ内に奴らから奪ったライフル銃やら手りゅう弾やら、プラスチック爆弾とか残ってしまったが、これらはどうしよう。
まあストレージの容量はまだまだあるからしばらく放置で良いな。
狙撃兵にやられた傷は完全にふさがり、傷跡も無い状態まで回復できた。しかし、大量に失った血液はすぐには元に戻らないので、ここ数日は無理しないようにしよう。
俺たちの日常はあっという間に平穏な状態に戻った。
主人公はあっという間にテロリストをせん滅しましたね。
油断もあって、危ない場面もありましたが、国際的なテロ組織も大賢者も前には手も足も出ませんでした。
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